第61話 クリストフ・ピクトリアンの死とその後

文字数 801文字

 クリストフ・ピクトリアンは、二度と目を覚まさなかったそうだ。

 遺体は、悪用されないようにピクトリアン王国が引き取った。
 その後の処理はピクトリアン王国に任せてしまったので、私達にはわからない。
 クリストフ・ピクトリアンが亡くなった事によって、オービニエ外務大臣とアダモフ公国のこれからの行動には変化がみられるだろう。
 アダモフ公国は王宮を内側から壊すという計画が失敗に終わってしまったので、知らぬ顔を決め込むかもしれない。
 それももう、私の管轄では無い。事後に報告は来るだろうけど、それだけだ。

 私はというと、ソーマ・ピクトリアン国王の意向に添えたことに随分ホッとしていた。
 なにせ母の故郷だし、ソーマ・ピクトリアン国王は私の事を身内だと言ってくれた。
 もう、お会いする機会もあまり無いだろうけど。

 私は少しずつベッドから起き上がれるようになった。
 まだ全身が痺れたようになっていて、体の動きも緩慢だけれども。
 フレデリックが、どうやって私に薬を飲ませてくれていたのかはすぐに分かった。
 苦い薬湯を、自分も口に含まないといけないのに、なんだか嬉しそう。

 口づけをされ、フレデリックの舌に這わすように苦い薬湯を流し込まれる。
 それを数回繰り返している。単なる医療行為だと思えば、侍女たちが見ていても恥ずかしくないハズなのだけれども。
 自分で飲めるようになった時は、なぜかガッカリされた。


 私のこの件に関する仕事は、クリストフ・ピクトリアンの死をもって終了したのだけど。フレデリックの方は大詰めの様で、私の世話を侍女たちに任せていることが多くなった。
 私は体を動かし、きちんと歩けるように練習を始めている。体調を整える事にも専念した。

 婚礼の儀まで、あと3か月弱。
 ずいぶん前から、国を挙げての準備が進められ、各国の王族や要人も招待している。
 私の体調ごときで、日程をずらすわけにはいかないのだから……。
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