魔法少女に俺はなる

文字数 2,037文字

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/22/112321)


 言左衛門はサムライで、チョンマゲにヒゲをはやしている、刀を持った危ない人だ。

 なぜ警察に銃刀法違反で捕まらないのか。

 それがかわいらしい幼女の魔法少女になっている。

 現実とのギャップが激しすぎて、胸の奥になんらかしらの萌えが芽生えてしまいそうだ。



「どうして魔法少女に転生したんだ」

「タンスから出ようとしたら、リアナどのにハサミで胸を刺されてな。油断したでござる」



 うん? リアナに? 正当防衛かな?

 突然天井がドタドタとうるさくなってきた。

 木製の床でできているので、木の粉がパラパラと落ちてくる。

 なんだ? 走っている?

 言左衛門が魔法で照明をつける。

 ここは地下室だったようだ。

 白いホコリが舞い上がっている。

 地下室のドアが開く音がし、美雪が階段を下りてきて、



「ちょちょちょちょっと!! 助けて!!」

「どうしたんだよ? あっ、紹介するよ。魔法少女に変身した言左衛門だ」



 彼に向かって手を差し出すと、「うっす! 言左衛門っす!」と、運動部のあいさつみたいなポーズをしていた。

 魔法少女らしくすればいいのに。

 見た目はかわいいが、言動と行動がまったく一致しない。



「はっ!? 宮本君!? 山でイノシシ狩ってた!?」

「そう。そいつ」

「骨格からして違うじゃないのよ、って、そんな場合じゃないの! リアナがっ! ひいっ?」



 美雪が階段から下りてきたリアナに、びくっとなった。

 何をおびえて……おうっ!?

 リアナの手にはするどいハサミ。

 悪魔のような顔をしている。

 シワクチャだらけの悪魔顔になっている。

 白目をむいて、ヨダレがダラダラと、アゴから落ちていた。

 美人がどっかいっている。



「おい、どうした!? なぜあんなになるんだ!?」

「全部持っている、リアナが悪いのよ!」

「お前彼女になんか言ったのかっ!?」



 女の嫉妬はいきなり爆発するものだ。



「ちぇすとっ!!」



 言左衛門が魔法のステッキで、リアナの後頭部に一撃。

 リアナはハサミを飛ばして、床に気絶する。



「今でござる! 早くリアナ殿を、イスに縛りつけて、縄でグルグル巻きにするでござる!」



 言左衛門が俺と美雪に指示。

 何がなんやらわからないまま、俺たちはリアナをイスに縛りつけ、白い布を頭からかぶせた。

 リアナが意識を取り戻したのか、ガタガタと暴れ始めた。



「どうするんだよ!」

「拙者が彼女にとり憑いた悪霊を除霊するでござる。この屋敷にきたのは、エクソシストとして、悪魔をはらうため。その役目を果たすでござる」

「それうそだよね!? タンスに隠れてたじてんで、絶対うそだよねっ!?」



 あまりにもとってつけたような言葉だった。

 美雪が、「見て」と、顔を青ざめている。

 リアナはイスごと浮いていた。

 地下室の玉形電球が激しく揺れる。

 悪霊がとり憑いているというのも、案外うそじゃないかもしれない。



「どうやら、魔法が発動したようでござるな」



 言左衛門は両目を閉じ、何やら呪文のようなものを唱えだした。

 えっ? これ、魔法なの? 悪霊の力ではなく?

 リアナが座っている、イスが反転し、イスの脚が天井をダンッ、ダンッとたたき始めた。

「早くしなければ」と、言左衛門は両手の5本指を合わせ、



「クルクルマリリン、クルクルマリリン、トッピンシャン」

「おいっ! 古い時代を感じる魔法少女の呪文だな! 昭和か!」



 そこはツッコんでおいた。

 リアナが苦しそうにうめき、イスが床に落ちる。

 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

 リアナは立ち上がり、かぶさっていた白い布を手で取り外す。



「ヤッホー! お兄ちゃん、お姉ちゃん、こんにちわんこ! 魔法少女、萌美だよ!」



 金髪碧眼の幼女が出てきた。

 ……うっうん? リアナは?

 微妙な空気が流れ出す。

 人が入れ替わる、手品みたいなことになっている。

 言左衛門が、幼女に近づいていき、



「萌美ちゃん。タイムリープして、あなたを助けにきたよ。核兵器によって汚染された世界から。ちょうど、3時7分にね」

「宮本ちゃん。おぼえてる。あのモヒカンたちを皆殺しにしていた日々を」



 萌美は指で目をそっとなぞる。

 おいおい。どんな世界なんだっ!?

 魔法少女は未来で何と戦ってるんだ!?

 けっきょくリアナは戻ってこず、萌美と言左衛門は屋敷を出て、この世界で暮らすことにしたようだ。

 何か敵らしきモヒカンが出てきても、彼女たちが殲滅してくれるだろう。

 美雪は髪を手でかき上げ、



「――私も魔法少女に志願しようかしら?」

「安心しろ。俺もなる」



 正義に燃えてきた俺たちは、魔法少女として生きることを決意した。





死霊館解説【了】


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