15.徘徊の季節
文字数 1,327文字
暖かくなると、外を徘徊する不審者が増える。
例に漏れず、私の下界出没率も春になると上がるのであった。
昨日5月9日、天気の良い日曜日。こんなにも完璧な徘徊日和があるだろうか。不審なひきこもりだからこそ、今この季節に、外に出たいという気分がムラムラと湧いてくる。それにちょうどGWに引きこもり続けたせいで、己のもやしボディを持て余していたところだ。今一度日光にあたって肉体解放すべく、私は母親と共に近所を徘徊することにした。
なぜひとりで外出せず母親を連れて行くのか、という読者諸君の無粋な問いには「私白森は成人にしてこども部屋の住人である」という事実を以って回答とさせていただきたい。
さて、私たちがまず訪れたのは、高級ファッションブランド『パシオス』である。パシオスは鹿鳴館のダンスホールかと見紛うほどひろい売り場面積を持つ、非常にファビュラスなお店だ。決して、安くて広い田舎の土地を買い占めて作られたイトーヨーカドーに類似した場所ではない。蛾の如く、白い蛍光灯がらんらんとかがやく店内に吸い込まれた私は、かわいいブラウスを見繕った。2点で合計¥3,580。さすが、高級ファッションブランド。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
パシオスを去ったその足で、次は高級ファッションセンター『しまむら』に向かった。みなさんご存知の通り、しまむらはサイタマを代表するシャレオツ流行発信地だ。私はすこし悩んだが、夏に向けて麦わら帽子とアームカバー、チャイナ服風ブラウスを購入することにした。3点で合計¥3,487。さすが、高級ファッションセンター。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
無心で徘徊を楽しんでいたら、気がつけばお昼ご飯の時間になっていた。せっかくなので、近くにあった高級イタリアン『サイゼリヤ』に入る。インターネッツ上の噂によると、最近新メニューとして追加されたラム肉がおいしいらしい。しかし、私はハンバーグが好きなのでハンバーグを注文した。世間に迎合せず、あくまで自分の「嗜好」と向き合う。自分の「嗜好」に素直であれ。不審者としての誇りを忘れずに注文したハンバーグには、目玉焼きがのっていておいしかった。2人で飲食して合計¥2,001。さすが、高級イタリアン。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
最後にスーパーで夕食の材料の買い出しをして、徘徊終了。なんだかんだで5時間ほど外を彷徨っていたらしい。長時間太陽の下を歩くという慣れないことをして疲れたのか、私は眠くなってしまった。汗もかいてしまったし、早々にお風呂に入る。湯から上がると、まだ疲れが取れないのかなんとなくだるい。仕方がないのでリビングで横になる。すると、なんだか頭痛がしてきた。手も痺れてきた。
もしや。これはまさか。
5月。春とは言え直射日光も強い。日中は気温が20度を超えることも珍しくない。その上、梅雨前の湿気もある中でマスクをしなければならないご時世だ。不審な引きこもりのみんな、いくら外を徘徊したくなっても、無装備で出かけてはならない。ぼうしとスポーツドリンク、塩飴を携帯して、熱中症に気をつけながら安全な下界徘徊を楽しんでほしい。
コートの下は全裸といった装いは論外だ。
例に漏れず、私の下界出没率も春になると上がるのであった。
昨日5月9日、天気の良い日曜日。こんなにも完璧な徘徊日和があるだろうか。不審なひきこもりだからこそ、今この季節に、外に出たいという気分がムラムラと湧いてくる。それにちょうどGWに引きこもり続けたせいで、己のもやしボディを持て余していたところだ。今一度日光にあたって肉体解放すべく、私は母親と共に近所を徘徊することにした。
なぜひとりで外出せず母親を連れて行くのか、という読者諸君の無粋な問いには「私白森は成人にしてこども部屋の住人である」という事実を以って回答とさせていただきたい。
さて、私たちがまず訪れたのは、高級ファッションブランド『パシオス』である。パシオスは鹿鳴館のダンスホールかと見紛うほどひろい売り場面積を持つ、非常にファビュラスなお店だ。決して、安くて広い田舎の土地を買い占めて作られたイトーヨーカドーに類似した場所ではない。蛾の如く、白い蛍光灯がらんらんとかがやく店内に吸い込まれた私は、かわいいブラウスを見繕った。2点で合計¥3,580。さすが、高級ファッションブランド。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
パシオスを去ったその足で、次は高級ファッションセンター『しまむら』に向かった。みなさんご存知の通り、しまむらはサイタマを代表するシャレオツ流行発信地だ。私はすこし悩んだが、夏に向けて麦わら帽子とアームカバー、チャイナ服風ブラウスを購入することにした。3点で合計¥3,487。さすが、高級ファッションセンター。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
無心で徘徊を楽しんでいたら、気がつけばお昼ご飯の時間になっていた。せっかくなので、近くにあった高級イタリアン『サイゼリヤ』に入る。インターネッツ上の噂によると、最近新メニューとして追加されたラム肉がおいしいらしい。しかし、私はハンバーグが好きなのでハンバーグを注文した。世間に迎合せず、あくまで自分の「嗜好」と向き合う。自分の「嗜好」に素直であれ。不審者としての誇りを忘れずに注文したハンバーグには、目玉焼きがのっていておいしかった。2人で飲食して合計¥2,001。さすが、高級イタリアン。私はもちろん、母親に会計を任せて店を出た。
最後にスーパーで夕食の材料の買い出しをして、徘徊終了。なんだかんだで5時間ほど外を彷徨っていたらしい。長時間太陽の下を歩くという慣れないことをして疲れたのか、私は眠くなってしまった。汗もかいてしまったし、早々にお風呂に入る。湯から上がると、まだ疲れが取れないのかなんとなくだるい。仕方がないのでリビングで横になる。すると、なんだか頭痛がしてきた。手も痺れてきた。
もしや。これはまさか。
5月。春とは言え直射日光も強い。日中は気温が20度を超えることも珍しくない。その上、梅雨前の湿気もある中でマスクをしなければならないご時世だ。不審な引きこもりのみんな、いくら外を徘徊したくなっても、無装備で出かけてはならない。ぼうしとスポーツドリンク、塩飴を携帯して、熱中症に気をつけながら安全な下界徘徊を楽しんでほしい。
コートの下は全裸といった装いは論外だ。