第一幕(10)

文字数 333文字

歩きつづけて、ふと気づくと夕暮れだった。
僕はくたくただったけれど、一日がもう終わったというのも信じられなかった。小さな谷でそりを止めた。今朝、後にしてきたのと、まったく同じような風景だ。
そりの走行距離計によると、今日一日で約24キロ進んだことになっている。
24キロ?!
これだけの荷物を積んで――
ふわふわの新雪の上を、のぼったりくだったりしてこのペースなら、固い雪で平坦な所なら、もっともっと進めるはずですよね?
(微笑む)おそらく。
(有頂天)ブラボー! エストラヴェン、僕はね、本当のことを言うと、今までもあなたを信じてましたけど、どっちかっていうと信じようと努力してました。今からは、完全に、心から、信じますよ! 七十日で絶対に国境を越えられる! やった!

(微苦笑)

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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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