1-1.受験生
文字数 873文字
2023年3月22日(水) -初日-
春が近づき、やや暖かくなってきた3月終わりの季節、第一志望国立大学一本に絞って受験勉強に勤しみ、見事晴れて4月から浪人生となることが決まった篠谷 美羽 は、東京にある叔母の別荘に向かうため、東京駅を目指して名古屋駅に到着した。
東京行きの夜行バス乗り口に向かって小型スーツケースを引きながら重い足取りで歩く。
頭の中はこれからの浪人生活のことでいっぱいだった。
上の空で歩いていると、ドンっとスーツケースを誰かにぶつけてしまい、スーツケースが派手に開いて着替えが飛び出た。
「す・・・すみません」
最悪、、、美羽は顔を真っ赤にして必死に飛び出た下着をスーツケースに仕舞い込む。
「これ、君の?」
スーツケースをぶつけた相手と思われる高身長のやや痩せ型の男が化粧箱を手渡した。美羽がスーツケースの中に入れていたピンク色の化粧箱だ。
「あ・・・ありがとうございます」
美羽は化粧箱をスーツケースに入れると、足早にその場から立ち去り、夜行バスに乗り込んだ。
✳︎
夜行バスにはまだ誰も乗っていなかった。
乗車チケットに記載された自身の席に行き、スーツケースと叔母が好きな銘柄のワイン瓶を入れたビニール袋を頭上の荷物入れに入れようとして、ワイン瓶が美羽の手から滑り落ちた。
・・・割れる!
パシっと床に落下する直前のワイン瓶を男の手が掴んだ。
男はワイン瓶を美羽に渡した。
「す・・・すみません」
「気をつけてね」
と、男は声をかけると、そのまま美羽の隣の窓側の席に座った。さっきの高身長男だ。
同じ夜行バスで、さらに、隣席なのか・・・、美羽は気まずそうに、窓の外を見つめる高身長男の隣席に座った。
しばらくして、通路を隔てた反対側にサングラスをかけた大男が座った。
他にも2、3人が東京行き夜行バスに乗り込み、夜行バスが発車した。
大男二人に囲まれた美羽は、なんとなくいたたまれなくなり、席を立ち上がるとトイレに向かった。 トイレの中に入り、しばらく鏡を見て、美羽は大きく息を吐いた。
春が近づき、やや暖かくなってきた3月終わりの季節、第一志望国立大学一本に絞って受験勉強に勤しみ、見事晴れて4月から浪人生となることが決まった
東京行きの夜行バス乗り口に向かって小型スーツケースを引きながら重い足取りで歩く。
頭の中はこれからの浪人生活のことでいっぱいだった。
上の空で歩いていると、ドンっとスーツケースを誰かにぶつけてしまい、スーツケースが派手に開いて着替えが飛び出た。
「す・・・すみません」
最悪、、、美羽は顔を真っ赤にして必死に飛び出た下着をスーツケースに仕舞い込む。
「これ、君の?」
スーツケースをぶつけた相手と思われる高身長のやや痩せ型の男が化粧箱を手渡した。美羽がスーツケースの中に入れていたピンク色の化粧箱だ。
「あ・・・ありがとうございます」
美羽は化粧箱をスーツケースに入れると、足早にその場から立ち去り、夜行バスに乗り込んだ。
✳︎
夜行バスにはまだ誰も乗っていなかった。
乗車チケットに記載された自身の席に行き、スーツケースと叔母が好きな銘柄のワイン瓶を入れたビニール袋を頭上の荷物入れに入れようとして、ワイン瓶が美羽の手から滑り落ちた。
・・・割れる!
パシっと床に落下する直前のワイン瓶を男の手が掴んだ。
男はワイン瓶を美羽に渡した。
「す・・・すみません」
「気をつけてね」
と、男は声をかけると、そのまま美羽の隣の窓側の席に座った。さっきの高身長男だ。
同じ夜行バスで、さらに、隣席なのか・・・、美羽は気まずそうに、窓の外を見つめる高身長男の隣席に座った。
しばらくして、通路を隔てた反対側にサングラスをかけた大男が座った。
他にも2、3人が東京行き夜行バスに乗り込み、夜行バスが発車した。
大男二人に囲まれた美羽は、なんとなくいたたまれなくなり、席を立ち上がるとトイレに向かった。 トイレの中に入り、しばらく鏡を見て、美羽は大きく息を吐いた。