6・ルイス・フロイス

文字数 698文字

6・ルイス・フロイス
「ガスパル・ヴィレって、ルイス・フロイスと一緒にポルトガルから日本に来た宣教師だよ。」
ヒロシさんの声がうわずって、驚きの声で息がつまってしまいそうな勢いだ。

「ルイス・フロイスって、どこかで聞いたことがある名前だけど?」と僕が訊いた。
ヒロシさんがルイス・フロイスのことを検索したスマホを見ながら言った。
「織田信長と会ったことのあるポルトガル人の宣教師だよ。ルイス・フロイスは、1565年に日本に上陸したのち、1565年1月31日に京都に入っているんだ。永禄8年は、1566年だから、フロイスが日本に来た次の年にこの本を亘理の鈴木作左衛門が手に入れているということになる。そんなことってあるんだろうか?
この文書と聖書が本物だとしたら、日本の聖書の歴史を変えるような発見になるよ。」

僕は、からくり箱が幕末から明治にかけて作られた物であることが気になって訊いた。
「からくり箱が150年位前で、中身が織田信長の時代というのは話が合わないんじゃない?」
「そうとも言い切れないわよ。からくり箱は別名『秘密の箱』ともいうのよ。秘密の箱なんて、平安時代や室町時代にもあったはずよ。いつの時代にも人間は秘密を持って隠したくなるものでしょう。
それに、貴重な文書をあとの時代にからくり箱の中に入れたということも考えられるでしょう。
要は、中身の聖書と手紙が本物かどうかの確認ができればいい訳でしょう。今は、年代測定技術が進歩しているので、聖書と古文書の真贋はかんたんにわかるでしょう。それに、東北学院には調べる人がいるでしょう。」
「それはそうだね」とヒロシさんが言った。

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登場人物紹介

僕・大学4年生・菊地イチロー






佐藤ヒロシ・東京神学大学大学院生

菊地小百合・僕の姉

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