第四幕(11)

文字数 302文字

音楽。

僕の手には、君の日記だけが残された。それに基づいて僕は語りつづけている、

叛逆者という君の汚名がすすがれ、君こそもっとも故郷を愛し、人類という名の同胞を愛した者の一人だったと、万人が認める日の来るまで。


だが、僕は何を語っているのだろう。

僕は何を知っているというのだろう。

この空の下、この大地の上で、ともに過ごした、君という人間について。

雪が降る。

青空に、ふと風が立って、光のなかを花のように雪が舞う。

この雪を、君の故郷[ふるさと]の言葉では、なんと呼ぶのだろう。

君のいない世界の、このどうしようもない広さを、なんと呼べばいいのだろう。

友よ。

雪が降る。
僕らの足跡を、消していく。

音楽、静かに止む。




―完―
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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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