第4話 裕一郎の場合

文字数 835文字

その夜は、浩二が僕のアパートに泊まる事になった。
部屋に入るなり浩二は「よし、開けてみるか」
「大丈夫かな・・」
「お前さ、開けへんつもりか」
「そうじやないけど、何が飛び出すかわからないだろー」
「よし、おれが開ける」
浩二は意を決し箱に手を伸ばし開けた。
中から出て来たのは小さな石と紙に書かれたメモだ。
僕はその石を手に取ってみる。
「なんだ、この石」浩二に渡すと、
「石というより鉱石だな」
それは青色の半透明な石だ。
そして説明書のようなメモが入っている。
『貴方の願い事を紙に書き、満月の夜にこの石と願いを書いた紙を窓辺に置き、手を合わせて願って下さい』
【(注)まずポイントは、その願いを叶えるために障害になっている問題、あるいは不安、不満などを書き出します。すなわちあなたの願いを叶えるための障害を取り除いてもらうのです。
(例)健康になりたい → 病気になっている(問題)
   友達が欲しい  → 友達がいない。(問題)等々】
「なんだこれ、僕が思うに、願いを叶える手伝いみたいなもんだな」
「おい裕一郎、お前の願い事はなんだ」
「うーん、特には考えていない」
「浩二だったらどうする」
「俺は、そうだなー、留年せんと無事に卒業できますようにかな」
「と言うことは、『単位を落としそうだ』・・・と書くわけだな」
「そういう事になるな」
「裕一郎はどうなんだよ」
「卒業して『東京に帰って無事に就職が決まるように』かな」
「じゃあ、その場合は『就活がうまく進んでない』と書くんだ。」
「まあ、そんな感じかなぁー」
僕らは、そんな不安や問題を並べて一晩を過ごす破目になってしまった。
さんざん不満や愚痴ばかり並べているうちに、次第に後ろ向きになる自分が出てきて情けない気分になる・・・
窓の外が白みかけてきている。
今日は二人揃って夕方からバイトだ。それまで少し休むことにする。
あいにく梅雨入りしたばかりで、満月の夜に出会えるのは当分先になりそうだ。
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