第73話 AFAM運動:2023年12月

文字数 1,167文字

(ユニバーサル・ジェンダー党の支持率を上げるための運動が展開される)

2023年12月。東京。街角。
「もしもし、お母さん。あ、私、正子なんだけど、今、話しても大丈夫かしら。
今度の選挙の事なんだけど、とっても大事なことなんで、よく聞いてほしいの。
私、今、あきらちゃんとシングルマザーしてるでしょう。それで、女一人だと、なかなかいい仕事が見つからなくて、苦労しているわけ。
旦那はどこへ行ったかって。あの人は出ていったきり、もう戻ってこないわ。
それでね。女だといい仕事に付けないのは、ジェンダーギャップっていうの。
今度の選挙で、ジェンダーギャップをなくしますって公約を掲げている候補がいるわけ。
え。男女共同参画なんてもうやっているでしょうって。
ああ、あれは、名前だけで、中身が薄いのよ。
ユニバーサル・ジェンダー党という政党が新しく出てきたの。
これは、本物なの。今回が最後のチャンスだから、今回、ジェンダー改革ができなかったら、次は、もう政治はしませんっていうの。
私が、これこれをして欲しいってお願いすると、これは出来るけど、これは難しいですって、直ぐに返事がくるのよ。返事をもらうと、できないことに、納得することも多い訳なの。
つまり、本気で、実現出来るジェンダーギャップをなくす方法を考えている訳。
選挙カーで、一方的に、まくしたてている、今までの候補とは、全く違うのよ。
だから、あきらちゃんのことも考えて、ユニバーサル・ジェンダー党の候補に投票して欲しい訳。いい。わかった。
うん。納得してもらえた。じゃあ。投票、お願いしますね。
お父さんにも、お願いしたいから、お父さんに代わってもらえる。....」

運動の名前は、Ask Father, Ask Motherからとって、AFAM運動と呼ぶことになった。この運動は、直接対話や電話によって、子供が、父親や母親に、ユニバーサル・ジェンダー党への支持を訴える。お願いする時のポイントは、これが、子供たちの未来を開ける最後のチャンスで、後がないことを伝えることだった。党員や、ネット・メンバーには、協力してもらえるようになった父母の名前を、ネットで登録してもらった。これは、票読みを確実にする手段であったが、このデータを使って、リアルタイムに推定得票が更新表示された。もちろん、票読みを確実にするために登録する投票してくれそうな人の名前は、父母だけでなく、隣人などの一般市民も対象にしている。氏名の登録は、2重カウントを防止するためである。
この票読みシステムには、思いがけない効果があった。投票依頼の効果が目に見えるので、やりがいが出てくる。あと一歩で、議席に至らない場合には、投票依頼に対する熱の入れ方が違ってくる。こうして、AFAM運動のために、整備した票読みシステムが、次第に効果を出してきた。

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