【episode10–限りある命】

文字数 376文字



「最期まで優しい子だったわね。」


母が、そう呟く。


「そうね。まるで皆んなの忙しさが落ち着くのを待っていたみたい。」




お盆を過ぎた8月のある日、私たちは火葬場にいた。




弟を見送るためだ。




叔母からの電話を受けてからあっという間の出来事だった。



若いので、病気の進行が早かったらしい。




人の命は有限だ。




人生100年時代と言われて久しいが、弟のように折り返し地点を迎えずに旅立つ者もいる。




今ある現実は永遠ではないのだ。



だからこそ迷っている時間はない。




意中の人がいるならば想いを伝えよう。


そして、一日も早く共に幸せな時間を過ごそう。


してみたいことがあるなら臆せず挑戦しよう。


もし、思った結果が出なかったら何度でも再チャレンジすればいい。




地球にいる間は何度だってやり直せるのだ。



弟の早過ぎる死は、私にそんなことを教えてくれた。




人の命は有限だ。



だからこそ迷っている時間はない。





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