〜真の勇者を求めて〜

文字数 1,141文字

……勇者様。
今日もあなたに会えないのですか?

私はお待ちしております、例えこの身が枯れ果てようと……。
ってセリフを数万回はぼやいたかも……。
そりゃ、表情もこわばるっての! 全く、世界を救うのに7年待たせる勇者がいるかってんだ!
この「エルフの涙」だって、もう腐ってるよ。
いっくら魔力が宿ってるって言っても、所詮は魔力回復の道具でしかないんだから。

このアイテムをゲットすれば、世界中の道具屋にこの知識が広まって、勇者一行の旅は楽になるっていうのにっ!
やあ、君がエルフのエルミナかい?

噂に聞いていたけれど、エルフっていうのは天使の様に綺麗なんだね。

「エルフの涙」よりも、僕は君を見られた事が最高に嬉しいよ。
きっと、世界を救う原動力になると思う、あなたは……美しい……。

すっ、すまない。ぼっ、冒険には関係ない事だったね。
いいえ、勇者様。その逞しい筋肉と剣こそ魔王を倒すものですわ。
その前に、私のハートが……倒されちゃったかも……しれません。

いやですわ、私ったら……こ…ん…な…こ…と
いやいや、悪いのは僕だ。君のような美女を。
そう、その美貌を求めて国が傾いてもおかしくない存在を……。

僕はどれだけ待たせてしまったんだろう……。
……辛かった、だろうね?
勇者様のお姿を……毎日想像しておりましたから、辛くはありません。

そっ、そのっ……
えっ、あっ、えっ!?
そのっ、えっ?
……落ちついてエルミナさん。僕が言おう。
そう、勇気を持ってね。

冒険が終わったら……魔王を倒したら……

冒険が終わったら……魔王を倒したら……?
君と二人きりの冒険がしたいんだ。
そ、ハネムーンという名の大いなる冒険を、ね?
…………………………
…………………
…………
……
はい、この妄想も700回目くらいぃ〜!
遅いよ勇者さん、はよ来てやー!
実際、勇者はエルフの里を訪れていた。

一行が気がついた事は2点。

一点は、エルミナさんって結構病んでる感じの人で、あまり近寄りたくないて事。
確かに数年は待たせたのだろうけど、自分からアプローチするような知恵はないのかって話。

もう一点は、頑張って魔力回復(小)のアイテム「魔法の水」を溜め込んで最終ステージまで迎えば、
魔力回復(大)の「天使の飲み薬」をゲットして、魔王城行けるなという事。

そう、「エルフの涙」は魔力回復(中)のアイテムに過ぎない。


そして……。
よっしゃ、次は「涙ぐむ乙女のエルミナとリッチな戦士のラブストーリー」の妄想行こうか!
「エルフの涙」はこうして継ぎ足しされていた。

涙系の妄想の種類も数十はある。
やあ、僕のスイートハニー。白馬の馬車で迎えに参上したよ!
お待ちして……おりまっ……したぁ  グスン
案外エルミナは幸せなのかもしれない。


                      〜おしまい〜
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

エルミナ

サザナの里のうら若きエルフ。
伝説のアイテムを勇者に渡すべく、ずっと待っている。

3歳の時から待っているので、もう7年は待った計算になる。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色