第13話 プロポーズ
文字数 814文字
周囲を好奇の眼で取り囲まれてしまった梨華は、母が応接室の用意をしてくれると言ったのを思い出し、彼の手を取った。
「とにかくこっちに来て。ここじゃ目立ちすぎるわ」
彼の手を引き、ずんずんと船の通路を応接室へと歩いていく。
「あの、何かまずかったでしょうか」
心配気にたずねる彼に、
「別にあなたが悪いわけじゃないわ。みんな面白がっているだけ」
長い航海で娯楽に飢えていた船の連中には、ちょうどいいイベントである。
普段はほとんど使われていない応接室は、母の機転で急ぎ片づけられ、お茶の仕度がなされていた。
「そのへん適当に座って」
とりあえず客人を長椅子に座らせ、梨華はティーポットにお湯を入れると、少し待ってからカップに注いだ。茉莉花 茶の甘い香りがする。
カップを彼の前に置くと、梨華は向かいに腰を下ろした。隣の椅子には花束が置いてある。
「えーと、お花、ありがと」
「ささやかなお礼です」
優雅な仕草でカップを持ち、王子さまはにこやかに笑う。
「花束なんてもらったの、初めてよ」
彼は意外そうに、
「今まで男性たちは誰もあなたに贈らなかったのですか?」
「誰も。だいたい一年の大半は海の上だし」
彼は額に手を当てて、
「信じられません。誰もレディに花束を贈らなかったなんて」
「ねえ、そのレディって言うの、止めて。がらじゃないわ」
「それなら何とお呼びすれば……」
「普通に梨華でいいわ。それが一番しっくりくるから」
「では、わたしのこともリシャールとお呼びください」
ジャスミン茶をひと口飲んで、梨華は問いかける。
「で、リシャール、わざわざここまでお礼を言いに来たの? ずいぶんと律義ね」
「それもありますが、今日は別の用件もあって来たのです」
「別の?」
彼は長椅子から立ち上がると、梨華の前まで来ておごそかに膝まづいた。
「昨夜の美しく勇敢なあなたの姿にすっかり心を奪われてしまいました。レディ……ではなくて、梨華、どうかわたしの花嫁になってください」
「とにかくこっちに来て。ここじゃ目立ちすぎるわ」
彼の手を引き、ずんずんと船の通路を応接室へと歩いていく。
「あの、何かまずかったでしょうか」
心配気にたずねる彼に、
「別にあなたが悪いわけじゃないわ。みんな面白がっているだけ」
長い航海で娯楽に飢えていた船の連中には、ちょうどいいイベントである。
普段はほとんど使われていない応接室は、母の機転で急ぎ片づけられ、お茶の仕度がなされていた。
「そのへん適当に座って」
とりあえず客人を長椅子に座らせ、梨華はティーポットにお湯を入れると、少し待ってからカップに注いだ。
カップを彼の前に置くと、梨華は向かいに腰を下ろした。隣の椅子には花束が置いてある。
「えーと、お花、ありがと」
「ささやかなお礼です」
優雅な仕草でカップを持ち、王子さまはにこやかに笑う。
「花束なんてもらったの、初めてよ」
彼は意外そうに、
「今まで男性たちは誰もあなたに贈らなかったのですか?」
「誰も。だいたい一年の大半は海の上だし」
彼は額に手を当てて、
「信じられません。誰もレディに花束を贈らなかったなんて」
「ねえ、そのレディって言うの、止めて。がらじゃないわ」
「それなら何とお呼びすれば……」
「普通に梨華でいいわ。それが一番しっくりくるから」
「では、わたしのこともリシャールとお呼びください」
ジャスミン茶をひと口飲んで、梨華は問いかける。
「で、リシャール、わざわざここまでお礼を言いに来たの? ずいぶんと律義ね」
「それもありますが、今日は別の用件もあって来たのです」
「別の?」
彼は長椅子から立ち上がると、梨華の前まで来ておごそかに膝まづいた。
「昨夜の美しく勇敢なあなたの姿にすっかり心を奪われてしまいました。レディ……ではなくて、梨華、どうかわたしの花嫁になってください」