魔法少女ナナナの日常①

文字数 1,307文字

某中学。

廊下を歩くスキンヘッドの少年を、曲がり角の先でじっとりと見つめる少女がいた。

テクテク(腹が、減ったな)
キタッ! BOSEくん!

それじゃ作戦通りにいくわよぉ、ウヒヒィ!

ナナナよ。それは年頃の女子が発していい笑い声じゃないぞ……
テクテク(給食、やはりおかわりすべきだったか)
(今っ!!)

うわぁ~、ごめん、どいてどいてぇぇ~!

うおっ!?(ぶつかる!)
『止まれぃ、時よ!!』
……
よしよし、成功ね。

そしたら、BOSEくんを横たわらせてっと……

それ、もう3回目だぞ。まだやんのかよ

今回は思い切って、超・過激な体勢に挑戦よ!

ええと、ここをこうしてっと……

……こ、こんな感じかしら?
……
ねえ、ヨンシ、わたしの股間、ちゃんとBOSEくんの顔面ど真ん中に当たってる?
あ、ああ、当たってる、当たってる……
ウヒヒィ! こんだけやれば、流石のBOSEくんも全力オッキでしょうね!

(……それにしても、BOSEくんのご子息……あったかいナリ……)

(……出会って以来、何度も思ったことだが、やはりこいつを魔法少女にしたのは間違いだった)
何よ、その顔は!

文句でもあんの? 今日は晩御飯作ってあげないわよ?

え! そ、それだけは、勘弁してくれよ……

俺ぁ、ナナナの手料理だけが生きがいなんだ……

だったら、ドン引いた顔してんじゃないわよ。ムカつくから

……ねぇ、流石に直はマズいかしら?

じ、じか?

……え、まさか、股間を、か?

だって、下着の上からだったら、BOSEくん、欲情しないかもしれない……

実際、前回は服の上から胸を当てたのに無反応だったし……

それは、お前の胸が……
おい

それ以上言ってみろ。爆散魔法で粉々にすんぞ

ごめんなさい
……まあ、いいわ。そろそろ時間切れね
あぶなっ……あれ?
……なんだ、これ?

……女性の尻、か?

い、いやぁ~ん♡

ちょっと、BOSEくん、どいてぇ~♡ 恥ずかしい~♡♡

(すげえな、この女)
……いや、悪いが、君がどいてくれないと動けない

何故なら、君の方が僕の身体の上に乗っているからだ

!! ご、ごめ~んっ

いそいそ……

怪我はないか?
え、あ、うん、全然……
そうか、良かった

僕も前方不注意だったかもしれんが……廊下を走るのは危ないよ。椎名さん

ご、ごめんなさい……

(BOSEくん、全然欲情してない……やっぱり直にすれば良かったわ……)

いいさ。しかし、君とは最近よくぶつかる気がするな。こないだは僕の方が原因だったが……不思議な縁だ
(いえいえ、毎回、この女が原因ですぜ)
きゅんっ

(やっぱり、BOSEくん、超イカス……)

じゃ、僕はこれで……
あ、あのっ!
ん?
(私の股間はどうでした!?)

あ、えと……

(違う、そうじゃなくてっ!)

あの、ね?

今度、良かったら……

(デートよデート! 誘うなら今っ!!)

ええと……
『止まれぃ、時よ!!』
おいおい!

時の魔法を一日に二度も使っちまったら……

バタッ
ふきゅぅぅ……

(う、動けない……)

言わんこっちゃねぇ……
……

? あれ?

お、おい、どうした椎名さん!?

……お?
急病人だ! どいてくれ!
(お、お姫様、だっこ……)

う、ウヒヒィ……

!?

(マズいな、表情がただごとではないぞ……)

……これはこれで、結果オーライ、なの、か?
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登場人物紹介

椎名七瀬。

14歳の魔法少女。

使い魔のヨンシからは『ナナナ』と呼ばれている。

片想いしているBOSE君とイイカンジになるべく、魔法を悪用している。

基本的に手段を選ばないが、正攻法(真面目なお誘いなど)は苦手。

将来の夢は今どき珍しく『お嫁さんになること』であり、家事全般の腕は既に相当のレベルである。

特に料理はプロ並みであり、使い魔のヨンシには毎日絶品手料理を振舞うことで、魔法の悪用を黙認させている。

趣味は読書(少年誌のラブコメオンリー)


ちなみに、魔法少女の本分は地球上に時折現れて暴れまわる『カゲジン』と呼ばれる化け物を退治することだが、彼女が住む町には一向に現れないため、実戦経験は一度もない。


ヨンシ。

七瀬の使い魔。

この世界とは別次元にあるという魔法の国から派遣されてきた。

『カゲジン』を退治すべく、11~15歳までの女の子を半ば強引に魔法少女へと変貌させる役目を担っている。

何故わざわざ魔法の国が、別次元である地球を守ろうとするのか、その目的は不明である(ヨンシは末端であるため、知る由もない)。

七瀬の料理の虜になっており、彼女が私利私欲のために魔法を利用することは黙認している。

通常、普通の人間には姿を認識されない。


志摩満(しまみつる)。

あだ名は『BOSE』

寺の息子であり、14歳とは思えない落ち着いた雰囲気を宿している。

普通にモテる。

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