第13話「ブルーローズ」

文字数 1,669文字

 古い洋館の前で、フィンは乗って来たエアライドを停めた。
 エアライドは、ボードに乗って、ハンドルで操作する、車輪のないキックボード――21世紀に流行った乗り物――のような形をした乗り物だった。エアブレードと同じように、空中を滑るように進む。この時代、よく使われているものだった。他に、車型のものもある。
 フィンは慎重に館の中に入った。
 中はしんと静まり返っていた。
 だが、フィンは、部屋のあちこちに魔物の気配を感じていた。
 突然、グールが襲い掛かって来た。
 フィンは素早く剣を振り、グールを浄化した。
 その直後、背後からもグールが襲ってきた。
 フィンは背を向けたまま、感覚でグールの攻撃を避けると、振り向きざまに剣を薙ぎ払って浄化した。
 グールの鈍い動きに対して、フィンは素早かった。
 あっという間に、一階にいたグールたちを全て浄化した。
 急いで二階に上がり、ウォッカのいる部屋に着いた。
 鍵のかかったドアをこじ開けようとしても開かず、フィンはドアに体当たりしたが、びくともしなかった。
 そうこうしていると、聖羅が現れた。
「僕の花嫁を奪いに来たね。」
「…お前がブルーローズの…。」
「そう。聖羅というのさ…」
 聖羅の言葉が終わる前に、フィンは剣を振っていた。
 剣から光が走り、聖羅に直撃した。
 …しかし、それは残像だった。
 本物の聖羅は、フィンの後ろにいた。
 聖羅の手がフィンの体に触れると、フィンは動けなくなった。
「フィン!」
 ウォッカが、ドアを蹴り飛ばして、中から出て来た。
「驚いたね…。君は怪力なのかい?そのドアを壊すなんて。」
 聖羅は驚いていた。
「フィン!そいつに触れられると、動けなくなるみたい!」
「もう遅いよ。」
 聖羅に触れられそうになって、ウォッカは危うく後方へ飛び退った。
「あんたはあたしが倒す!」
 ウォッカは、グローブをはめた拳で、聖羅の腹を狙ったが、聖羅は両手でそれを受け止めようとしてきた。
 手に触れると体が動かなくなる。ウォッカは、聖羅の腹を殴るふりをして、顔面を殴った。
「いた…!!」
 聖羅は顔を両手で押さえた。
 その隙に、ウォッカは聖羅の腹を強く殴った。
 聖羅の体はその衝撃で吹き飛び、壁に当たって倒れた。
「ふふん。あんた、戦い下手ね。」
 ウォッカは、うつ伏せに倒れた聖羅の背中に足を載せ、拳に電気を纏わせた。
 しかし、聖羅の手が、ウォッカの足に触れて、ウォッカはそのまま動けなくなった。
「しまった…!」
「今度こそ、犯してやる!」
 聖羅は立ち上がって、ウォッカを押し倒した。
 そして、ウォッカのドレスが引き千切られた。
 さっきまでの聖羅とは違って、荒々しい顔つきに変化していた。
 罵詈雑言も効きそうにもない。
「いやーーーーー!!フィン!!」
「滅茶苦茶にしてやる!!」
 聖羅は本性を剥き出しにして、ウォッカを殴ろうと、手を上げた。が、その手は次の瞬間消えてなくなった。
 フィンが剣を振って、聖羅の手を斬ったのだ。
「なにっ!?」
 聖羅は驚いて振り返ったが、フィンの剣の方が素早かった。
 振り返った瞬間、聖羅は浄化された。
 浄化され、聖羅の体は灰になって消えていった。
「間一髪だったな。」
「フィン~~~~~!!」
 思わずウォッカはフィンに抱きついた。
「怖かったよおお!!」
「よしよし。」
 フィンは、ウォッカの頭を撫でてやった。
 そして、自分の着てきたコートを脱いで、ウォッカに掛けてやった。
 二人はエアライドに乗り、急いで館を後にした。
「本当に、あんな奴がリーダーなのかしら?グールがいただけで、他に、バンパイアは見なかったけど…。」
「…確かに、あまりにもあっけなさすぎるな…。」
「ところでさ、あいつに動けなくされたのに、どうやって動けるようになったの?」
 ウォッカは、先程からの疑問を尋ねた。
「ちょっとな。昔神官だったときに習った方法を使ったんだ。」
「へえ、そうだったの。あたしもそれ教えてほしいわ。動けなくなったらどうしようもないもの。」
「あとでキールに聞いてみよう。ゴーレムの連中なら何か知ってるかもしれない。」
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