第54話

文字数 2,927文字


源三郎江戸日記(弟二部)54

最初の峠にかかるとなる程ゆるい登りになっています、ところどころに屋根が作ってあり中に入っても明るいのです、上手くつくってあるなと言うと、ここら辺は12月になると雪になり、
ますと酉蔵が言ったのです、峠の谷側にはところどころ杭が打ってあります、下るときに滑って谷に落ちないように杭が打ってあり、一間の高さがありますので雪にも埋もれませんと、
言ったのです、

荷馬車は難なく峠の上り下りをして、進んで行ったのです、峠を3つ過ぎた頃から雪化粧となったので、そりを履かせて出立したのです、峠に差し掛かりましたが屋根のお陰で雪は少し、
しか道にはありません、道路脇には屋根から落ちた、雪の塊が積もっていますが殆どは、谷に落ちているようです、順調に進んで行き夕暮れになったので次の宿場で一泊する事にした、
のです、

宿場に入ると雪かきがしてあるので、そりを外して車輪にして旅籠の裏にある、馬方に馬を頼んだのです、荷馬車を小屋に入れ旅籠にわらじを脱いだのです、女将がいらっしゃいませ、
と言うので、何人客はいるのだと聞くと、15人ですというので、いつもの時期と比べるとどうだと聞くと、いつもは誰もとまりませんよ、大体街道が雪で通れなくなりますが、今年は、
通れるようになりましたので、

みんな喜んでいるんですよ、何でも江戸の廻船問屋の玄海屋さんがお金を出して、整備しくだされたそうなんです、この辺は天領地ですが代官様はそんな余裕はありませんよと言ったの、
です、ここら辺の人も相馬から魚が入ってくるので喜んでいます、叉米沢や相馬へ秋に収穫した物を売りに行く事もできます、本当によかったですよと笑ったのです、みんなに喜んで、
貰っているようでよかったなと言うと、

ハイ、それが何よりですねと七衛門が喜んだのです、湯に入りさっぱりして夕餉の膳を囲んだのです、酉蔵中々の普請だったなと言うと、ご家老様に喜んで貰って良かったですと酒を飲、
み干したのです、後峠二つで米沢です明日の昼過ぎには着きますよと言ったのです、馬はこの寒さは大丈夫なのかと聞くと、馬は寒さには強いのですよ、今頃はえさを一杯食って休んで、
いますよと酉蔵が言ったのです、

翌日出立して次の峠に向かったのです、峠の頂上まで来ると5、6人が雪かきをしてます、ご苦労じあと声をかけると、大分雪かきはしときましたと言うので、近隣の村の者かと聞くとこ、
の峠の下のもんです、宿場の名主さんに頼まれてるんですよ、この峠が受け持ち場所ですというので、頑張ってくれと言うと峠を降りて行ったのです、最後の峠にかかりもう少しだと登、
ると下は米沢です、

峠をおりると盆地は雪化粧です、昼には城下につき玄海屋に入ったのです、そんなに苦労はしなかったなと言って、それではなと七衛門と別れて城に行き徳三郎に待っているように言っ、
て御座所に行くと治憲が出て来て、よう戻ったご苦労じあったなと言うので、印西陣屋の町の整備も終りました、50人程留まっております、これがその者達の名前ですといって、手当て、
の件も含めて、

殿の裁可をお願いいたしますと書付を渡したのです、わかった明日までに読んでおこうと言うので、訂正があらば遠慮なく言うてくださいと言うと、わかった、千坂から戦の様子を聞い、
たぞ、大勝利じゃたそうだなと言うので、毘沙門天の旗を佐倉城に翻しましたぞと言うと、さぞかし稲葉はビックリしたじあろうと笑ったのです、それでは今夜いつものところでお絹を、
よんでおきますると言うと、

御座所を下がり千坂を始め重役に顔を出して、屋敷に帰ると、お春が出迎えてお戻りなされませと言うので、息災じあっかと言って、秋元に印西徳三郎じあ世話を頼むぞと言って部屋に、
入ったのです、凄い雪化粧じあな、思ったよりは寒くないなと言うと、炬燵に炭が入れてあります、と言うので、足を入れると茶を出したので、飲んで美味い茶じあ、と言ったのです、

秋元にお絹を料理屋まで連れてくるように言いつけて、お春にわしは出かけてくる、夕餉は済ませてくるぞと言うと、ハイ早いお戻りをと言ったのです、そなたの家族は息災かと聞くと、
この雪では一時新田開発は中止しています、すでに3町部は終わったそうです、来年の春には作付け出来ると言うていました、新しい屋敷も完成しています、立派な屋敷でしたよと言う、
ので、

そうか、それでは家族揃うて正月を迎えられそうじあなと言うと、兄様達は道場に通われています、中々剣の腕も上がりましたよ、たまに柘植様がお見えになり稽古をつけてくださり、
ますと言ったのです、殿とお絹殿もご一緒に来られますよ言うので、そうかお絹は殿とは知らんのであろうと言うと、多分気づいてお出でだと思います、前になぜ屋敷に連れていって、
くださらないのだろうと不思議がっていましたが、

最近言われなくなりました、気づかれたのではないですかと言うので、それで仲は良いのかと聞くと、ええ、とつても良いですよ、お絹殿にも小太刀を教えています、ここに来る藩士、
には言い含めてあります、殿も中々剣の腕は強いのですねと言うので、わしと同じ高鍋藩剣術師範の戸田先生の門下生で目録持ちなんじあよ、それにもまして儒学、朱子学にも通じて、
おられる名君じあなと言ったのです、

それでは出掛けてくる、供は要らんぞと言うと歩いて町に出て料理屋に行くと女将がお戻りなされませ、お絹殿は見えられていますと部屋に案内したのです、お絹がお久振りですと言、
うので、元気そうじあなと言うと、ハイ、総ては完成しております、春には梅酒も干し梅の製造も開始できますと言うので、それではいよいよ祝言じあな明日は大安吉日じあと言うと、
城であげるのですかと聞くので、

気づいておったかと言うと、ハイ、どうしょうかと迷いましたが、覚悟を決めましたというので、明日はわしの屋敷から、輿にのりお城に向かうぞ、そなたは村上源三郎の娘と言う事に、
なると言うと、ハイ、お願いいたしますると言うので、側室になっても今の仕事は続ければ良いと言うと、殿もそう言うてくださりましたと言うので、それは良かった明日よりお春の方、
じあと言うと、

わたしに勤まるでしょうかと言うので、そなたがお方様じあ、気にせず好きに振舞えば良いのじあよ、食事は飯から箸をつければ良いだけじあ、わしは汁から手をつけて良く婆様に叱ら、
れたがのうと言うと、ご家老様らしいですねと笑ったのです、治憲が部屋に入って来たので上座をあけると、ここで良いと言うので、それはなりませぬと言って上座に座らせると、なん、
だ知っておったのかと言うので、

いつお絹が気づいたのですかと聞くと、そなたの屋敷の道場に出向いたときに、お春が下座に座ったのじあ、わしもうつかりして座ってしもうたのじあが、知らん顔していたら、帰り、
道で、50石取りの藩士が1000石取りの側室の上座に座るなど、礼儀をわきまえなされとお絹に叱られたのじあよ、すまぬと謝ったのじあが、本当の事を言わねばもう会わぬというので、

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