少年の気遣い

文字数 639文字

 ダームが目を覚ました時、その瞳に見慣れない光景が飛び込んできた。この為、少年は困惑しながらも辺りを見回し、寝る前に起きた出来事を思い出そうとする。
 その目線がソファーへ届いた時、ダームはベッドから跳ねる様に立ち上がる。彼がソファーの方に駆け寄ると、その前に在る机の上に軽食と置き手紙が残してあった。

 それを見たダームは、直ぐに手紙を読み始めた。手紙には、机上の料理を食べて良い事やアークに連絡を入れてある事、そして手紙を書いた本人は早朝から教会に向った事が書き記されていた。
 ダームは手紙を机上に置き、どこか悲しそうにソファーに座る。そして、彼は机上のサンドイッチに手を伸ばすと、無言で食事を進めていった。
 
 十数分経った後、少年は用意されていた料理の全てを食べ終えた。彼は、満足そうに腹をさすると、ソファーから立ち上がって大きく伸びをした。

「ベネットさんに、お礼を言いに行かなきゃ」
 少し寂しそうに呟くと、ダームは廊下に通じるドアへ向かって歩き始める。
 
 ダームが礼拝堂へ向かうと、そこには祭壇に立つベネットの姿が在った。その姿は、ダームが今まで見てきたものよりも凛としており、ステンドグラス越しに陽光を浴びる様は神々しかった。

 ベネットは次々に人々の要望へ応え、彼女を取り巻く人達が減ることは無かった。そして、その姿に圧倒されてしまったのか、ダームは何も言わずに礼拝堂の扉を閉める。

「邪魔しちゃ駄目だよね」
 自分へ言い聞かせる様に呟くと、ダームは、警備兵の訓練所へ向かう。
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登場人物紹介

ダーム・ヴァクストゥーム

 

ファンタジー世界のせいで、理不尽に村を焼かれてなんだかんだで旅立つことになった少年。
山育ちだけにやたらと元気。
子供だからやたらと元気。
食べられる植物にやたらと詳しい野生児。

ザウバー・ゲラードハイト

 
自称インテリ系魔術師の成年。
体力は無い分、魔力は高い。

呪詛耐性も低い。
口は悪いが、悪い奴では無い。
割とブラコン。

ベネット

 

冷静沈着で、あまり感情を表に出さない女性。

光属性の攻撃魔法や回復術を使いこなしている。

OTOという組織に属しており、教会の力が強い街では、一目置かれる存在。

カシル


 HEIGHT:162cm
 WEIGHT:55kg
 HEIR COLOR:Brown
 EYE COLOR:Red


オーマの街で男性を浚い、更にはザウバーまでも僕にした淫魔。
魔力によって他者を操る事を得意とし、外観も魔力によって整えている。
自身で前線に立って戦う事は無く、戦闘能力に乏しい

アーク・シタルカー


ヘイデル警備兵の総司令。

その地位からか、教会関係者にも顔が広い。

魔法や剣術による戦闘能力に長け、回復術も使用する。

基本的に物腰は柔らかく、年下にも敬語を使う。

常にヘイデルの安全を気に掛けており、その為なら自分を犠牲にする事さえ厭わない。

ルキア・ハイター
 
 HEIGHT::169cm
 WEIGHT::56kg
 HEIR COLOR::Brown
 EYE COLOR::Dark Brown
 
ヘイデル教会直属の病院で働く女医。
話し方は無骨だが、若くして院長を務める程の実力者。
アークとは幼なじみの為か、彼へ接する態度からは遠慮が感じられない。

ヴァリス

 

 HEIGHT:185cm
 WEIGHT:67kg
 HEIR COLOR:Black
 EYE COLOR:Purple

 
フェアラでダームを軽々と倒した謎の多い男。
含みの有る話し方をするが、それがどこまで本当かは不明。
自在に姿や硬度を変える使い魔を使役し、人間を追い詰めることを楽しんでいる。

ライチェ

 

 HEIGHT:137cm
 WEIGHT:32kg
 HEIR COLOR:Pink
 EYE COLOR:Scarlet

 
見た目は幼い少女だが、魔族である為に様々な力を持つ。
浮遊したまま素早く移動し、相手に攻撃の隙を与えない。
また、無機物や死者を操る力を有している。
但し、深くものを考えたりするのは苦手の様で、感情が高ぶっている時などは判断力が著しく低下する。

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