少年の気遣い
文字数 639文字
その目線がソファーへ届いた時、ダームはベッドから跳ねる様に立ち上がる。彼がソファーの方に駆け寄ると、その前に在る机の上に軽食と置き手紙が残してあった。
それを見たダームは、直ぐに手紙を読み始めた。手紙には、机上の料理を食べて良い事やアークに連絡を入れてある事、そして手紙を書いた本人は早朝から教会に向った事が書き記されていた。
ダームは手紙を机上に置き、どこか悲しそうにソファーに座る。そして、彼は机上のサンドイッチに手を伸ばすと、無言で食事を進めていった。
十数分経った後、少年は用意されていた料理の全てを食べ終えた。彼は、満足そうに腹をさすると、ソファーから立ち上がって大きく伸びをした。
「ベネットさんに、お礼を言いに行かなきゃ」
少し寂しそうに呟くと、ダームは廊下に通じるドアへ向かって歩き始める。
ダームが礼拝堂へ向かうと、そこには祭壇に立つベネットの姿が在った。その姿は、ダームが今まで見てきたものよりも凛としており、ステンドグラス越しに陽光を浴びる様は神々しかった。
ベネットは次々に人々の要望へ応え、彼女を取り巻く人達が減ることは無かった。そして、その姿に圧倒されてしまったのか、ダームは何も言わずに礼拝堂の扉を閉める。
「邪魔しちゃ駄目だよね」
自分へ言い聞かせる様に呟くと、ダームは、警備兵の訓練所へ向かう。