第百八十五話

文字数 5,848文字


 魔法陣の中心には、トカゲ型の魔物が出現した。

 いわゆるリザードマンだろうか?
 湿地帯に居る者たちと交渉した事があるが、彼らの亜種という感じがする。
 それとも、こちらが本来の姿なのだろうか?

 湿地帯に居たリザードマンたちは、武器や防具を持っていた、鱗ももっと小さかったと思う。

 スキル鑑定で見るが、やはりリザードマンと出る。考えてもしょうがないだろう。

 俺が考えなくてはならないのは、安全に確実に敵を撃破する方法だ。

 中心のリザードマンは上位種の様だ。
 ここに来て単独での出現になっているようだ。

 リザードマンの上位種が中心に居るがその周りは通常種の様だ。
 数も200体程度だろうか?

 余裕とは言わないが、オークの進化体が居た下の階層のほうが脅威を感じる。

 そうは言っても、腐ってもリザードマンである。単体ではオークよりも強いのは間違いない。
 シロをちらっと見るが、今回は戦う順番である事は覚えているようだ。

「オリヴィエ」
「はい」
「シロを頼む。シロ、オリヴィエと一緒に上位種を頼む」
「はい」「かしこまりました」

 そんなに嬉しそうにしなくてもいいと思うのだけどな。

「カイとウミとライは俺の側に居てくれ。戦況を見て戦闘に加わってもらう」
『はい』『わかった』『はぁーい』

「エリン。アズリも待機」
「うん。パパの側?」
「かしこまりました」
「そうだな。俺を守ってくれ」
「うん!任せて」

「エーファ。ティアとティタとレッチェとレッシュを連れて後方に出てくれ」
「はい」
「後方に出たら好きに戦ってくれ」
「かしこまりました」

「エルマンとエステルは上空で待機」

「リーリアとステファナとレイニーは、オリヴィエとシロの援護」
「はい」「はい」「はい!」

 魔法陣が消えかかっている。

「行くぞ!」

 シロがまっさきに突っ込んでいく。
 少し遅れて、オリヴィエが続く。

 リーリアとステファナがスキルで援護をおこなっている。
 レイニーは、シロに向かうリザードマンの牽制を行いつつ、エーファたちの道を作っている。

 思った以上に弱そうだ。
 カイとウミも魔法陣が表示されていたときには、戦闘態勢の大きさになっていたが、今はペット?体型になっている。エリンとアズリもすっかり興味を無くしてしまっている。
 それでも、戦闘が続いているので、武装の解除はしていない。いつでも突撃できるようにはなっている。

 戦闘開始から、10分くらいが経過しただろうか?
 エーファから後方に出られたと報告が来た。

 リザードマンの通常種の数もかなり減ってきている。
 多分20体も残っていないだろう。

 エーファが後方から攻撃を開始した。上位種はシロと対峙していたが、後方に気を取られた。シロには十分な時間だろう。
 脇を切り裂いた。体勢を崩した所に、オリヴィエがスキル岩弾をぶつける。

 取って返したシロが首に刀を刺して終わった。
 残っているリザードマンをエーファ達が倒してすべてが終わった。

 前方と後方の扉が開いた事でも、戦闘が終わった事がわかる。

 ステファナとレイニーとティアとティタが拾い集めてくれた、スキルカードと魔核を見たが、予想通りレベル4だ。

「よし!」
「カズトさん?」
「あぁ気にするな。レベル4のスキルカードと魔核だからな。しばらくスキルカードの補充をするぞ!」
「わかりました」

 次も戦う事が確定したからには休憩を間に挟むことにした。浴場を出して順番に入っていく。
 俺とシロが先に入って、出てきてから武器の手入れを行う。

 2時間程度の休憩を挟んで、再度リザードマンたちと対峙する。

 次の戦いも同じリザードマンの上位種が一体と通常種が出てくると考えている。
 相手や配置が解っているので、はじめからエーファ達には後方に抜けてもらっている。

 魔法陣が現れる。
 上位種と通常種で間違いはない。配置も同じだ。

 次は、俺とエリンが攻撃を行う事にした。
 他は、スキルで攻撃する。拾ったばかりのレベル4のスキルカードだけだ。

 収支を検証したい。
 黒字になるようなら、しばらくこの形での戦闘を行って、スキルカードを集める事にする。
 レベル4は少なくなってきているし、手数を増やす意味でもレベル4は少し補充したいと思っていた。特に、眷属達に持たせるスキルカードが足りなくなってきていた。まだスキルの固定をしていないので、スキルは消費してしまっている。
 俺は気にしないのだが、エーファが気にしていた。気にするなと言っても無理なので、補充できる時にまとめて補充すると話して納得させていた。

 4階層で戦ってスキルカードの補充をすると説明した。

 すでに、リザードマンとの戦いは5回目になっている。
 扉を閉めればすぐに魔法陣が出るのが解っているので、消耗がひどくないときには連続して戦う事にした。

 かなりの数のスキルカードが手に入った。
 やはりレベル4以外のスキルカードが手に入らない。魔核も同じだ、スキルスロットがある物がレベル4以外は一つも出てきていない。わかりやすいと言えば、わかりやすい。

 レベル4のスキルカードも”使ったカード”が出やすい傾向にある。
 リーリアやステファナには、同じスキルカードを使って傾向を確認した。やはり、使ったスキルカードが出やすいのは間違いなさそうだ。

「よし、次を倒したら、少し長めの休憩を取るか?」
「かしこまりました」

 オリヴィエが反応した。

「ご主人様。お食事はどういたしましょうか?」
「そうだな。頼む」
「かしこまりました」
「先に、身体を洗ってからでいいからな」
「はい」

 食事を作る者から身体を綺麗にする。
 眷属用の浴場も出しているので、エーファとレイニーが順番に眷属を風呂に入れている。眷属達も慣れたもので、今ではすっかり風呂が好きになっている。最初は抵抗感を見せていたレッチェとレッシュも湯船で水浴びを楽しむように、お湯に身体を任せる。
 他のティアとティタとエルマンとエステルも同じように、お湯に身体を任せる事が好きになっている。
 レイニーも手伝っているが、慣れてきているのでエーファ1人でも大丈夫な状況になってきている。

 今日の食事は、リーリアとステファナが担当するようだ。
 オリヴィエは、武装のメンテナンスを手伝ってくれている。ダンジョンに入った頃は、1人でメンテナンスをしていたのだが、簡単なメンテナンスはオリヴィエに任せる事ができる。刀はまだ俺しかできないが、矢を作ったり、盾の補修をしたり、オリヴィエができる事が増えてきている。その分、俺の負担が減っている。シロも、メンテナンスは無理だが剣や防具の清掃は行えるので、スキルで綺麗にした後で磨いたりしている。

「なぁシロ」
「なんでしょうか?」
「聖騎士は、自分の武器防具を磨いたりしないのか?」

 シロは、俺と一緒にダンジョンに入ったりするまで、武器防具の整備の方法がわからなかった。
 それはフラビアとリカルダも同じだ。

「はい。整備は、整備専門の者がいました」
「・・・。そうなのか?」
「はい?」

 シロが不思議そうな顔をする。

「自分の命をあずける物だから、自分で整備やメンテナンスをしていると思っていただけだからな」
「そうですよね。僕も、カズトさんと一緒に戦うようになって考えるようになりました」
「そうか・・・。まぁいいか、もう関係ない事だからな」
「はい!」

 メンテナンスは俺がやっているが、磨いたり、清掃したりは各自にやってもらっている。
 休憩時間が長くなってしまうのだが、命を預ける物をないがしろにはできない。

 食事の支度ができたとの事だったので、皆で食事を取ってから、順番に休む事にした。
 少し長めの仮眠だ。

 その後に、10回ほど連続で戦った。
 突入するメンバーを変えながらだ。
・俺とシロ
・俺とオリヴィエ
・シロとレイニー
・オリヴィエとレイニー
・俺とエリン
・シロとアズリ
・エリンとオリヴィエ
・アズリとレイニー
・エリンとアズリ

 最後に俺単独で行けるかを確認した。

 突撃しなかったメンバーは、後方に回ってスキルでの支援を行う。突撃したメンバーが苦戦したら、後方のメンバーが眷属を連れて突撃する事になっている。
 俺とシロが突撃したときには、全体をオリヴィエが見て指示を出す。
 俺が突撃しているときには、オリヴィエが補助をしながらになるがシロが指示を出す。
 それ以外は、俺が指示を出す事にしている。

 10回連続で戦えるだけの戦力差がある事がわかった。
 俺1人でもなんとかリザードマンの上位種までたどり着ける。支援してくれているスキルカードの利用は多かったので、現実的ではないとは思う。

 俺1人で突撃した1回を除いた。9回の収支を見てみる。

 拾えるレベル4のスキルカードの枚数は、大体100枚程度。固定化しているスキルの使用もあるが、1回の戦闘で使ったスキルカードは大凡60枚程度。
 日本円に換算して、一回の戦闘で10万円得て、6万円ほど使っている計算になる。魔核を入れれば大幅な黒字なのだが、命の代金として考えると安い。
 俺達は収支を気にする必要が無いのだが、他の冒険者たちはスキルカードの利用は極力抑える方向で戦う必要が出てきてしまうのだろう。一枚でもスキルカードを残したいと思って居るのだろう。

 10回連続で戦った後で、長めの休憩を取る。
 次は突撃メンバーを増やして、倒した後で5階層に上がる事にする。

 スキルカードも十分とは言わないが、ある程度は集まった。
 5階層でも、攻撃系のスキルカードの入手は可能だろう。レベル5のスキルカードになるはずだから、氷弾/雷弾/爆炎/爆岩/爆水などがあるはずだ。

 十分な睡眠をとってから、最後の戦いに挑む。

 楽勝とは言わないけど、問題なく撃破できる。
 前後の扉が開いたことを確認して、上の階につながる扉を抜ける。

 やはり上層階にはスロープで行くようだ。
 外周を半周ほど行った所に扉がある。

 今回もいつものように対応する。
 さて、何が出てくるか?

 リザードマンのように通常種が沢山出てきてくれたら嬉しい。

 ダメな様だ。

 魔法陣が、今までで一番というくらいに大きい。
 中央に居るのは、コボルトキング/ゴブリンキング/オークキング・・・。それに、リザードマンの上位種の進化体が居る。キングではないようだが、進化体はかなり脅威を感じる。

 コボルトキングの周りには、上位種が2-300体程度居る。
 ゴブリンキングも同じだ。オークキングは、オークの上位種が50体程度だろうか?他に、通常種が200体ほど居る。リザードマンは、上位種が20体ほどで通常種が100体ほど居る。

 合計すると約900体。
 骨が折れそうだ。負けるとは思わないが、かなりの時間がとられそうだな。

 各個撃破ができればいいが、今の形では難しいだろう。分断する方法が限られている。

「カイ。エリン。ウミ。アズリ。リザードマンを頼む」
『はい』『うん』
「パパ。わかった!」「奥様!おまかせください!」

 カイとウミが大きくなる。
 アズリは、リッチの権能を使うために、身体を変化させる。エリンは、まだ人型のまま戦うようだ。アズリは、シロへのアピールを忘れない。

「オリヴィエ。レイニー。リーリア。オークを頼む!」
「はい」
「かしこまりました」
「はい」
「3人だけだけど、大丈夫か?」
「問題ありません」
「可能です」
「大丈夫です」

 3人からはしっかりとした返事が返ってくる。
 問題は無いようだ。

「ステファナ。エーファ」
「はい。コボルトですか?」
「いや、ティアとティタとレッチェとレッシュと一緒にゴブリンを頼む。俺とシロとライとエルマンとエステルでコボルトを殲滅する」
「かしこまりました」

 エーファたちが一番きついかもしれない。
「エーファ。スキルカードは遠慮するな!」
「はい!」

「シロ。聞いていたな?」
「はい。僕とカズトさんとライ兄さまとエルマンとエステルでコボルトを殲滅する」
「あぁそうだ。さっさと片付けて、他の援護を行うぞ」
「はい!」
「ライは、シロの護衛を頼む」
『わかった!』

 シロが少しだけ不服そうな顔をするが、見なかったことにして先に進める。

「エルマンとエステルは上空から援護。苦戦している所が他にあったら、スキルカードで援護!」

 魔法陣がもうすぐに消える。
 スキルで土壁を作る。できる限り魔物を分断するためだ。

「来るぞ!」

 今まで違う。
 魔物から動く事はなかったのだが、いきなり動き始める。スキルで土壁を作ったのが悪かったのだろうか?

 カイとウミたちは、エリンが進化体を相手している間に他の3人が上位種を減らしている。通常種は後回しにするようだ。進化体が片付いてしまえばそれほど脅威を感じなくなる。

 対オークは、オリヴィエが突撃をして、数体を倒したらリーリアとレイニーにスイッチする。同じように数体を倒したら、オリヴィエにスイッチする。ヒット・アンド・アウェイを繰り返してオークを削っている。

 エーファとステファナは、エーファがティアとティアを引き連れて突撃していく。中央にエーファで左右をティアとティタが守っている形だ。キングは、レッチェとレッシュが上空から狙っている。統率が崩れた所を、突撃してきたエーファとティアとティタが圧力をかけていく。ステファナが全体をみながらスキルで支援をおこなっている。

「シロ。右に弓」
「はい!」

 俺とシロは遠隔攻撃を仕掛けてくるコボルトを倒している。途中コボルトがまぎれこんできたので、合わせて倒す。

 エルマンとエステルは上空から支援をしている。
 俺とシロだけで、コボルトの相手をする事にした。ライが、シロを守ってくれているので多少の無茶ができる。

 20分くらい経過して、オリヴィエがオークキングの首を切断して5階層の戦いが終わった。
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