第16話  白竹姉弟の謎 2

エピソード文字数 3,133文字

ごめんね。僕と一緒にご飯食べませんか?
は、はい

 向こうが敬語に変化すると、こちらも敬語になってしまう。

 俺が丁寧に返事をすると、女子顔負けの笑顔を見せられてしまう。


 手には小さなバスケットを持ってるし、もしこいつが女子生徒の格好してたら、最早カップル同然だと思った。



 校舎から出ると、テニスコートが見える場所にあったベンチまで誘導される。


 そのまま何も買わずに来たのは「あなたの分もあるから」と言われてしまった為である。

 あなた。っておいおい。突っ込みどころ満載である。




 昨日の「潰すよ」とか言ってたお前は何処に行ったんだ?

どうぞ。食べてくださいね

 バスケットから見えたのはサンドイッチだな。

 おいおい。もしかして俺に作ってきてくれたの?

黒澤くんって、いつも学校でパンとか食べてるって美優から聞いてました

 言われるがまま一切れ頂戴すると、俺は思わず「うまっ」と漏らしていた。

 いや。マジで美味いぞこれ。  シャキシャキレタスがやばすぎる。


 あれ? 待て。



 よく見るとこれって喫茶店で店に出してるサンドイッチじゃねぇか。

 あぁそっか。これ作ってるのお前じゃねぇか。


 

 そりゃ美味いに決まってる。

めっちゃ美味いし。何だよこれ。どっかの店でも売れそうなほどじゃねぇ?
えへへ

えへへ?


めちゃめちゃ笑顔の魔樹だった。少し顔を傾けてニコっとする仕草は女よりも女らしい。


それと同時に昨日のお前は一体何者だったんだろうかとマジで首を傾げたくなる。

あのね。ちょっとだけ質問していいですか?

あぁやっとその話か。


魔樹が俺に対し疑問に思った事があるのだろう。

じゃないとここまでしつこく付きまとうのは変だからな。

昨日。美優にね。絶対に恋愛感情は芽生えない。そういう風に言ってたけど、どうしてそう言い切れるのかなって

あぁ聖奈と同じような質問か。

やっぱり変に思われてたのだろう。

もしかして染谷君みたいに好きな人がいるとか
いや。いないけど
お付き合いとか、女の子とか、あまり興味が無いのです?
そうだな。興味が無い。そう解釈してくれていいと思う
何気にそう返すと、魔樹は「はっ」と声を出したかと思えば、急に赤ら顔になり……

ま、まさか、男の子すき~な、ほ、ほみょ。ホモでし?


え?
突然ホモって言われりゃ、俺だって顔が引きつっちまう。

やぁん! 何でもありませぬ。


今のは空耳です。幻聴っぽい何かでし。ごめんなさひ!


 やっぱり……白竹さんと喋っているみたいだ。

 だけど、野太い男の声なので、最早ギャグとしか受け取れなかった。



 慌てて取り繕う姿まで彼女とだぶる。

 


 どうなってんだこれ。俺の視覚がバグっちまってるのか?





 ようやく平常心モードに戻った魔樹。

 思いっきり横道に逸れた話題を、巻き戻すのであった。


あの時……あまりにもハッキリ言ってたから、何かあるのかなって思ってね
何かあると言われれば「ある」だけどきっと……誰にも理解できないから

そう言いながら俺は次々とサンドイッチを食べていた。あまりにも食いっぷりが良かったのか、魔樹の分まで頂いていた。


だって。本気で美味いもん。

それって何でしょうか? あの……教えて欲しいです
いや、言っても多分理解出来ないと思うし、絶対に人を好きになれない理由があるんだ
理由?
ようやく真面目な顔を見せる魔樹だったが……

あのさ……悪いんだけど、この話もう辞めにしていい?


正直。誰にも言いたくないんだよ

あんまりこの質問を追及されたくないので、バッサリ切り捨てた。


そしてさらっと話題を変える。

まぁでもお前がさ、白竹さんをあんな風に守ろうとする気持ち。分かる気がする。

何が何でも守らなきゃいけない存在って、確かにあると思う

白竹さんみたいな放っておけない存在。



まるで……弟の凛みたいだな。

だから何となく……お前の気持ちも分かる気がするんだ。

それにナンパとかやってくるヤツは俺も好かんし、そんなヤツにロクな奴はいないと思ってるから。


だからお前の行動は間違ってないと思うし、俺も同じ立場なら美人なねーちゃんをボディガードするだろう。


それにあの時、俺だけ逃げなかったからな。難癖つけられてもしょうがない

黒澤くん……

いやいや。一応お前って白竹さんの弟だしさ、こちらだって仲良くしたいと思ってるから。

昨日はすまなかった。ごめん

魔樹も同じように頭を下げる。



良かった。一応こいつとも仲直りはできたかな。


魔樹もニコっと笑ってるし、こちらも妙な笑顔を見せつけると、最後に残ったサインドイッチも貰ってしまった。

じゃあ。ちょっと美優に言ってくるね


 休憩時間はまだ少し残っているが、魔樹はささっと立ち上がると、振り返って一礼してから、スタタタっと小走りで校舎に入っていくのであった。


 ってか何だあの走り方は、完全に女の小走りだし。




 あっ。盛大にコケた。


 ま、まぁこれで白竹さんとの関係は大丈夫だと思った。




 しかも魔樹とは新たな友達になれそうな予感もするし、結果よければ全て良しと言った所か。






 そして俺は一人でベンチに座ってぼーっと空を見上げていた。


 あぁ、やっぱ変なのだろうか?

 異性に興味がないというのは。


 興味がない訳ではないが……俺にはそういう感情は芽生えてはならない。


 そういう意味では、人を好きになって結婚したいと思う人が少し羨ましく思ってしまうよな。




 俺には無理だ。


 いや……その内俺にもそんな人間が現れるのだろうか?




 俺の全てを受け入れてくれて、男としても女としても見てくれるような人間とめぐり合えるのだろうか?

あぁ~つまんね。

そんなこと一々考えるな。


 あんまり考えないでおこう。

 こういう話はあんまり深く考えたくないし、憧れを持つだけ無駄なのだ。






 魔樹が立ち去ってから十分ほど。昼休憩のチャイムが鳴ると、トボトボと校舎へと向かう。


 教室に入ると、丁度俺の視界に入って来たのは白竹さんだった。


 俺を見るなりスタタタと駆け寄ってくる。

魔樹から聞きました。あの……な、仲良くしようね
はいっ。もちろんですよ。よろしく白竹さん
うんっ!

おっとやばい。聖奈と互角の万遍の笑みを見せる白竹さんに思わず顔を背ける。


彼女のスマイルもかなり危険だな。こんな笑顔を見せられたら、男なら誰でも顔が赤くなるだろう。


 下手すりゃ一撃でハートを持っていかれるぞ。

そういえば大丈夫ですか? 朝は気分悪そうでしたけど
はぁいっ! もう……大丈夫です! 元気いっぱいでう


 元気いっぱいなのでうね。良かった。


 やっぱり昨日の事が気になっていたのではないか、俺はそう思った。
 今のご機嫌な白竹さんを見ている限り、もう大丈夫だろう。






 その予想は的中した。


 朝のダウナーでクールだった彼女は、一体何処に行ったのかと思うほどニコニコしだした白竹さんに、クラスの連中も一安心。


 笑顔のままクネクネしだした彼女を見ていると、妙に落ち着いていた。これが本来の白竹さんなのだろう。






 そして放課後、教室に入って来た魔樹に普通に喋り掛ける



おっ。ねーちゃんのお迎え?
…………


 俺は普通に言ったつもりだったが、魔樹は俺達に怪訝そうな顔を見せると、無言で俺達の横を通り過ぎた。


 あれ? さっきまでのデレたお前は何処に行ったんだ?

美優。帰ろう
うん! じゃあみなさん。またねっ

おいおい。なんかおかしくねーか?


いつもの二人に戻った。だと?

なんかさ、弟さん変わりすぎだよね? 午前中はクネクネしてたのに

あいつ二重人格じゃないのかな。


それか、ねーちゃんと魂が入れ替わってたりして

ははっ。黒澤君も上手いこと言うね。確かにそんな感じだな
そんな話をしながら、俺は染谷くんと仲よく下校するのであった。
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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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