高波一乱

文字数 2,800文字

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卓士君……よかったら一緒に帰らない?
俺に声をかけてきたのは、ファンクラブまで出来ているアイドル級の美少女だ。

そんな彼女がなぜ、どこにでもいる普通の高校生っぽい俺に声をかけているのか。

takanami

答えは簡単。

ここまで何十もの「正しい選択肢」を積み重ねてきた成果だ。

takanami

少し前までの俺は、ギャルゲーを片っ端からプレイしている重度のオタクだった。
自慢ではないが、俺ほどのオタクになれば「どの選択肢がどのルートにつながっているのか」を見抜くことなど朝飯前だ。

最難関ギャルゲーと言われた『殺伐メモリアル』でさえ、メインヒロインの1周目攻略を達成している。
そして先日、俺は「リアルでも選択肢が出てくれればなあ」という妄想によって魔人化してしまった。

takanami

能力名は『ミリオネア・チョイス』

自分の好きな時に選択肢を出せるだけの能力だが、選択肢を極めた俺には無敵といっていい能力である。

takanami

卓士くん?
おっといけない。
現実はゲームと違って、時間が流れていくんだった。

takanami

……ミリオネア・チョイス
いつものように、俺の眼前に選択肢が現れる。

takanami

①俺も一緒に帰りたいって思ってたよ
②そのままホテルに寄っていこう
③「一緒に帰ってください御主人様」だろ?
④一緒に帰るところを見られて、噂をされると恥ずかしいし……

takanami

選択肢を見た俺はため息をついた。
あからさまなマイナスである④以外、どれも正規攻略ルートに乗っている。

あとはセックスまでが早いか遅いかというだけの話だろう。

takanami

学園一の高嶺の花というのも、俺の選択肢力にかかればこんなものか……。

攻略済みのヒロインに興味はない。
ぬるい選択肢など面白くもない。

俺の目的はミリオネア・チョイスを使い、己の選択肢力を限界まで引き上げることだ。

takanami

4で。
えっ?
ああ、違った。

『ごめん、一緒に帰るところを見られて、噂とかされると恥ずかしいし……』
そ、そんな……ひどい……! 
女は涙目で走って行った。
これだけで諦めるとも考えにくいが……もう2、3ほど悪い選択肢を選べば、自然と離れていくことだろう。

takanami

退屈だな……

俺の力を試すような、難解な選択肢が出てこないものだろうか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

takanami

翌日の朝、家を出ようとした俺の前に選択肢が現れた。

takanami

①このまま学校へ向かう
②仮病を使って休むことにする
③どこか寄り道をする
④断罪の庭にて冥界の密約を結ばんと欲す

takanami

まさか、赤選択肢……エマージェンシーチョイスだと!?
ミリオネアチョイスは基本的に、俺の意志によって発動する。

しかし俺の人生を左右するような出来事が起ころうとした場合、強制的に選択肢が出て来ることがある。

takanami

三週間前、車に引かれそうになった俺の前に、警告を意味する黄色の選択肢が現れた。

俺はしっかりと正解の選択を選び、難を逃れたのだが……

それを上回る危険が待っているというのか。

takanami

選択肢を見る限り、明らかに学校へいかない方が安全だ……。

しかしいまの俺は、危険こそを求めている。

一体何が待っているのか、確認せずにはいられないな。
……それにしても、断罪の庭ってなんのことだ??)
~学校~

takanami

……。
……見かけない顔だな。

着ている制服もウチのとは違う……
①おはようと明るく声をかける
②無視して自分の教室に向かう
③相手の攻撃を警戒する
④神獄の戒律を解さんと欲す

takanami

!!!
この女だ! 俺のミリオネアチョイスが反応したのは!)
……?
注目するべきは③の選択肢だ。
通常の人間を相手にしたときは、このような選択肢が出ることはない。

俺のミリオネアチョイスの、真に優れた能力……
それは選択肢を出すだけではなく、その内容から今後の流れを推測することが出来るということだ。

takanami

……2だな。
いまは仕掛けるタイミングではない。

……が、無視できる流れでもないはずだ。
こちらが有利な状況を作ってから、安全に仕留めにいかなくては。
俺は女を無視して通り過ぎた。

それから数日をかけて、その女のことを調べ上げた。

takanami

名前は夕陽トモ

最近、この学園に転校してきたらしい。
品行方正で成績は優秀、目立ったトラブルなどもない。

takanami

しかし、エマージェンシーチョイスが発動するからには、ただの人間ではないことは確かだった。

そして、あの日の朝から、夕陽トモを対象とするミリオネアチョイスの選択肢に異変が生じていることもわかった。

いわゆる中二病的な表現が、強引に選択肢に割り込んで来ているのだ。

これが夕陽トモの影響によるものであることは確かだろう。


期は熟したと考えた俺は、夕陽トモを学校の屋上に呼び出した。

takanami

ええと……話って、なんでしょうか?
少し緊張した様子で、夕陽トモは言った。

状況だけを見れば恋愛フラグに見えなくもない。

takanami

……あんた、魔人だろ
っ!?
その反応だけで十分だ。

そして能力はおそらく……
やめて!!
①なにも言わずに立ち去る
②はっきりと言ってしまう
③禁断の文言を詠唱する
④堕天使の息吹に焼かれる

takanami

きたか、エマージェンシーチョイス……。

そして俺の予想通り、中二病的な単語に毒されつつある……!
ちゅ、ちゅーにって……違うの、私は……!
俺の選択は2だ!!

夕陽トモ、お前は厨二病的な妄想を力とする魔人だな!!

……あれからずっと隠していたのに……あなたも魔人ということなのね。

認めるわ。私は魔人よ。
かつて、日本中でその力を恐れられた『アリアの魔女』……

どうしても消したい過去だったのに……

ここで新しい生活を送れると思っていたのに……
私の過去に触れようとするものは許さないわ!!

黒歴史とともに沈むがいい!!

来たれ、煉獄の炎!!

運命の円環をつむぎて、我が宿敵を滅せよ!!

きたか!

だが、俺の選択肢力の前には、どのような能力であろうとも……!!
①闇にうごめく邪神に祈りを捧げる
②現世に解き放たれし闇の猟犬とともに
③世界樹の麓、最果ての刻にて
④真紅に染まる黙示録の悪夢

takanami

な、なんだあっ!?

意味がわからねえっ!!!

どれが、どういう意味を持っているんだ!?

意味がわからなければ、この俺にだって選べるはずが……!!!
おーっほっほっほっほ!!!!

我が魔眼の神炎に焼かれ、冥府へと旅立つがいいわ!

めっちゃ活き活きしてる!!!

くっ……こうなったら最後の手段を使うしか……!!
ミリオネアチョイス、50:50!!

4つの選択肢を2つまで絞れ!!!


①闇にうごめく邪神に祈りを捧げる
②現世に解き放たれし闇の猟犬とともに





takanami

これで二択……

次は『テレフォン』だ!!


とぅるるるるーーーー・・・・
もしもし、お兄ちゃん?
かくかくしかじかなんだが、どっちが正解だと思う!?

お前、こういう話好きだったろ!?
1かなー

よくわかんないけど
さいごにとっておきのオーディエンス……は、使う余裕がなさそうだ!!!

しかたない、妹を信じて1に!!!

よくわからんが祈りを捧げる!!!
そこまでです!

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登場人物紹介

【名前:千 卓士(せん たくし)】
 恋愛シミュレーションゲームが大好きな高校生。
 どのような選択肢であっても最良の項目を選べるという自信を持っている。
「リアルでも選択肢が出てくれれば失敗しないのに」という妄想により魔人化した。

【能力名: ミリオネア・チョイス】
 目の前に選択肢が現れる。
 いつでも発動できるほか、緊急時には自動的に発生することもある。

【戦いの動機】
 選択肢力を高めるために、より危険な状況に身を置きたい


作者:高波一乱

【名前】

夕陽トモ/ともちゃん


【能力内容】

厨二詠唱(チューニ・アリア)


中学二年生の時、魔人に目覚めた少女。当時、厨二病であった彼女は、厨二病的詠唱によって、それっぽい攻撃を現実世界に具現化できるようになった。具現化される攻撃は「詠唱内容」に左右され、詠唱の「厨二病度」に比例して攻撃が強くなる。

しかし、高校生となった彼女にとって、厨二病は黒歴史であり、厨二病的詠唱とともに激しい羞恥感に襲われる。「その羞恥を上回る羞恥で相殺すればチャラになる」という血迷った理論により、攻撃後は卑猥な言葉を連呼するのだが、側から見ればただの恥の上塗りである。


【戦う動機】

オシャレで今時な普通の女子高生になりたい。戦いたくない。

魔人に戦いを挑まれる度に普通から遠ざかり、泣きながら帰っている。


イラスト:駒澤 零さん

https://twitter.com/ren_ren0824


作者:戌井猫太郎

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