ある日森の中ラムダに出会った。
文字数 1,428文字
荒廃した旧東京都新宿区。
ナノマシンは最適化を繰り返し、姿を植物の様に変化させていた。
動物たちは近づけずに、ひたすら緑の地へ逃げる。
19番村にはとある掟がある。
「機械の森には絶対に近づいてはならない」
村長ですら「機械」の意味を知らない。
危険か危険でないか不明な物には近づかないのが鉄則だと、
生き残った人間たちは考えた。
マホラはとある事件がきっかけで、家を飛び出した。
そして、涙で前が見えなくなり、気がつくと機械の森に足を踏み入れていた。
森は一面銀色で、厚い灰色の核の雲から時折差し込む光を鈍く反射している。
マホラのバイタルは不安や焦燥を示していた。
人間より感情があるような抑揚で、ラムダは言った。
しかしーー。
新生日本国政府が消滅してから素十年。
マホラの村の言語は独自な進化を遂げていた。
言語の最適化をします。
「マルティ・モンタ・テパパ・キット・ガルルンセパ・デ」
「Hello. If you are in trouble, I am willing to help you」
「あるとまきて、しがともとらだむ。きゅうてるがいび」
……………………………………
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……
ラムダは記憶している全ての言語で話しかけた。
ラムダは回答に困った。
人間同士の争いを解決する方法は複数見つかったが、世界大戦で失われた技術でもあったからだ。
つまりは、人間は争いを選び続けた事をラムダ自身は目の当たりにしてきたのだ。
先の大戦の開戦理由もまた、食糧問題であった。
マホラとラムダは倒れたコンクリートビルに座った。
新宿エリアは地層がズンと下に沈んでいた。
旧永田町エリアの核・生物・化学兵器シェルターがここまで伸びていた。
新生日本国もまた、専守防衛を遵守したのだ。