ある日森の中ラムダに出会った。

文字数 1,428文字

荒廃した旧東京都新宿区。

ナノマシンは最適化を繰り返し、姿を植物の様に変化させていた。

動物たちは近づけずに、ひたすら緑の地へ逃げる。

19番村にはとある掟がある。

「機械の森には絶対に近づいてはならない」

村長ですら「機械」の意味を知らない。
危険か危険でないか不明な物には近づかないのが鉄則だと、

生き残った人間たちは考えた。


マホラはとある事件がきっかけで、家を飛び出した。

そして、涙で前が見えなくなり、気がつくと機械の森に足を踏み入れていた。
……ヒック……。
ウゥ…………グスン……。
森は一面銀色で、厚い灰色の核の雲から時折差し込む光を鈍く反射している。
(…………なんで……あんな事するんだろう?)
マホラのバイタルは不安や焦燥を示していた。
人間の不安を感知。
ロボット三原則と新生日本国憲法、および軍需省の規範に則り、治癒を試みます。
人間より感情があるような抑揚で、ラムダは言った。

しかしーー。
……きゃ!?
安心してください。
私はラムダ。人間の基本的人権を守るために作られた生体ロボットです。
新生日本国政府が消滅してから素十年。

マホラの村の言語は独自な進化を遂げていた。
言語の最適化をします。

「マルティ・モンタ・テパパ・キット・ガルルンセパ・デ」
「Hello. If you are in trouble, I am willing to help you」
「あるとまきて、しがともとらだむ。きゅうてるがいび」

……………………………………
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……
ラムダは記憶している全ての言語で話しかけた。
……あっ……お話しようとしているの?
ちょっと何を言ってるのか分からないけど。
言語を認識。群馬エリア39-4動作含有語を検出。

動作言語の一部は、この体では再現不可能。

一部言葉がまだるっこしくなる事をご了承。
……難しい事を言うきのこちゃんだね?
少女のパターンに最適化。

……………………
………………
…………
……

完了。
あなたはここで……何をしているの?
簡単に説明。
ラムダは人間を守るためにパトロール中。

ずっとずっとパトロール中。
あなたを見つける。名前を下さい。
……名前?
私は……マホラ……。 
マホラ、悲しまない、悲しまない。
マホラ、元気出す、元気出す。

困ってる事あれば、ラムダに言う。
ラムダは答えて、マホラは笑う。
……ラムダ……。
そうね、ラムダなら分かるかもしれないね。

だって、難しい事を話していたもの。
マホラ、少し元気になるのをラムダが分かる。

マホラ、もっと話をすると良い。ラムダも嬉しい。
……あのね、ラムダ……。

マホラのお母さんとお父さんが喧嘩をするの。

食べ物が無いって……大きな声を出すんだよ?

どうして仲良くなれないの?
ラムダは回答に困った。

人間同士の争いを解決する方法は複数見つかったが、世界大戦で失われた技術でもあったからだ。

つまりは、人間は争いを選び続けた事をラムダ自身は目の当たりにしてきたのだ。

先の大戦の開戦理由もまた、食糧問題であった。
ラムダは考える。
マホラ、待つから座る。

アレが座れるナノマシン構造体。
ナノマシン構造体は簡単にいうと、アレ!
……座って待てばいいんだね?
……分かった……っしょっと。
マホラとラムダは倒れたコンクリートビルに座った。

新宿エリアは地層がズンと下に沈んでいた。

旧永田町エリアの核・生物・化学兵器シェルターがここまで伸びていた。

新生日本国もまた、専守防衛を遵守したのだ。
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登場人物紹介

マホラ

19番村の少女。
好奇心が旺盛で、機械の森へ行きたくて仕方がない。
2098年の新生大和王朝の迫害から逃れてきた一族の末裔。

好奇心が旺盛で、誰にでも優しいがどこか暗い印象を持っている。
それは両親に関係しているようだ……。

ラムダ

2068年 第三次世界大戦末期に日本国軍需省が作った決戦兵器。
生体をベースにしているため、山川で小型の動物などを捕食して生きながらえた。

あくまで日本国軍需省の長官の命令で動く兵器であるため、現在は待機状態である。
原則的にはロボット三原則を守り、敵と見做す存在以外には人道的である。


正式名称「YOTUBA35式生体可変決戦兵器λM3F5M19」

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