あらすじ⑤
文字数 1,140文字
日向FCの先頭はあをい、アンブレラの先頭はみどり。キャプテンを置かないアンブレラを、虹色の腕章を巻いたみどりが率いるのだ。
キックオフ直前にかけこんだ「レッドポピー」のママ。隣の席には白杖をついた青年が。赤崎大地、鉄馬の兄。全盲の彼は自分が弟の重荷になってしまっていることが耐えられないという。ママは鉄馬が点を決めた様子を伝え、そのプレーには盲人のやるブラインドサッカーの影響があるという。それは彼が兄を誇りに思っているからではないか、と問いかける。サッカーに詳しいのを驚く兄に、日向FCのベンチから聞こえる塩辛声が聞こえるでしょうと言うママ。
「あれがあたしの亭主。家でもサッカーの話しかしないもんでね」
ハーフタイム。日焼け止めを塗るためにトイレに行こうとするママ。そこでぶつかったのがSOの母親、華・オレンジペコ。補華はビーガンで、補食に牛乳とチーズをかじっている息子を見て抗議しようとしていた。
「あそこにいるのはあたしの娘ですから、文句は親であるあたしが受けます」
子どもの教育に口をはさむなと言う華。
「うちの娘は世界一になったけど、世界一にしようと思って育てたことなんて一度もない。子どもは自分の意思で育つもんで、それをどうこうするのは親のエゴだで」
後半開始、スタンドにやかましく叫ぶスキンヘッドの男が現れる。少し声を抑えてといさめたママにすんまへんと謝る男、黄龍國。
「レオの父だす。顔も髪もそっくりでっしゃろ」
そう言ってアフロヘアで黒い肌の、似ても似つかないキーパーを指さす。もちろん血縁はなく、再婚相手なのだと言う。身を呈してゴールを守り、うずくまるレオを見ながらしみじみつぶやくママ。
「髪って性格が出るわよね。あたしの孫は、試合中はそれを気にしない」
あをいはママの祖母だった(コーチの姉の娘)。白血病を発症し、祖父(監督)によっておば(コーチ)から引き離され、髪をなくした彼女にウィッグとなる髪を提供したのはみどりだった。そのことでみどりを知った監督は彼女のプレーを動画に収め、娘であるコーチに託したのだった。
シーソーゲームは決着がつかず、PK戦に。あをいのPKをレオが止め、最後にみどりが決めてアンブレラが死闘を制した。
最後の試合で勝利したみどりの目に涙が。離れてゆくだけの人が、どこにもなかった居場所が初めて生まれ、そこを去らなくてはいけないことに今までなかった感情が生まれたのだ。それをコーチが抱き止め、諭す。
「大事なものは虹の彼方にあるんじゃない。その道のりに落ちてるもんだ。虹の橋のどこかに、結構落ちてるもんさ」