その13

文字数 529文字

 ユキとの再会後のつきあいも、かれこれ半年が過ぎた。
 僕は田舎の彼女や彼女の母親に押し切られるような曖昧な気分のまま、結納の日が今月末に差し迫っていることに、日々気が重たくなっていた。


 ユキとしばらくぶりに会った。
 高知空港で待合わせをし、その後徳島県の池田町に向かった。
 途中、大歩危小歩危や祖谷のカズラ橋に寄って観光し、昼過ぎに池田町に着いた。
 徳島県の池田町にある県立池田高校は、当時高校野球ファンにとって知らない者がないくらい有名だった。
 ユキも僕も高校野球が好きだったことから、池田高校に行ってみたかったのである。
 僕達は池田高校に行って野球部の練習を観た。
 ユキは池田高校の正門を通るとき、
「ワタシなんだか恐いなぁ」
 と興奮気味な顔をして言った。
 余程野球が好きらしい。だから、過去に野球選手とつきあったのは偶然ではない。
 この頃の蔦監督率いる池田高校は、甲子園で常に上位に勝ち残る強豪だった。
「すごい、まるでノンプロ並みのレベルやね」
 僕は一つのポジションに最低六、七人がいて、その誰もが華麗な守備をするのに、圧倒されていた。
「ほんま、すごいわぁ」
 とユキもあこがれの池田高校の選手達をまぶしげに眺めていた。
 僕達は一時間程練習を見続けていた。
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