二、老人ホームに駆逐される思い出達と

文字数 613文字

〈館内放送〉
朝です。今日も元気に働きませう。
ぶぅんぶぅん
うわぁ痴呆老人が車で突っ込んできたぁ。
〈部長〉
ぐはぁ。
あかん、部長が引かれてもうた。
ウワァイタソー。
俺ブレーキしか踏んどらんぞ。
切腹メーター【】
私が死すとも板垣は死せず。
部長死んではらへんやん。
くそぉ失敗か。
切腹メーター【◾◾◾◾◾】
ぐはっ。
こいつサイドブレーキと切腹を間違えてやがる。
〈安いベンツ〉
停車シマス。
さあ、作業再会やで。
この辺が汚れてるな。
(帰ったらYouTubeで部長のことをISISの新メンバーとして紹介しておこう。)
ガッチョンガッチョン
ガッチョンガッチョン
(なんで誰も掃除をしないんだ。)
それ工作機械じゃなくて安いベンツやで。
アイコン同ジダカラ間違エタ。
がっちょんがっちょん。
(俺は工作機械ではない)
それ部長やで。
間違エタ。
作業効率から考えると、いくら機械が古く小停止が多少あっても工作機械の方が生産高がいいな。
工場長が真面目なこと言ってはる。
ガッチョンガッチョン
(僕は工作機械R-079)
この調子で頑張ってくれたまえ。
(この馬鹿共をもっと働かせないと俺が会社を乗っ取った時に困るな。歯でも磨きながら考えるか。)
ヤットアイツドッカ行ッタ。
なあ見てや、工場の地中からもぐらが出てきたで。
〈もぐら〉
もぐもぐ……
カワイー。
キャベツ食べや。
もぐもぐ……
オイシー。
お前も食うんかい。でもうまいなこのキャベツ。
(工場の隣の公園に生えてた草ってことは黙っとこ)
おわり
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登場人物紹介

工場長
見事な切腹を披露して死ぬ事が生きがい。

部長
何事も遠回しに言うので、誰にも言いたい事が伝わってない。
そんな世界に腹を立てている。

板垣さん
ベテラン作業員。電卓工場と間違えて就職してしまった。

ボルシチ
インドネシアから出稼ぎに来ている作業員。アメリカに来たつもりだが、ここが日本であることに気付いていない。

ジュンャ
デザイナー職。心の中では会社のことを墓地ゾーンと呼ぶことで精神の均衡を保っている。

工作機械R-079
旧式の工作機械。たまに謎の部品が外れる。

安いベンツ
工場長の愛車。たまに謎の部品が外れる。

もぐら
それ以上でも、それ以下でもない。

社長
偉い人。大学時代を東京で過ごしたため、今でも帯刀している。

白アリ駆除業者
家と業務スーパーと仕事場を高速で移動する日常を送っている。

MIYOSI
資材調達担当。宮本武蔵より強い剣豪になると言って家を出ていった父を探して街に出てきた。

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