第2-1話 頂点捕食者

文字数 751文字








 サヴァン症候群とは――
 一部の脳機能と引き換えに、天才的な能力を得る症状である。
 たとえば完璧な記憶力、など……

「つまり、それを持つサナエサンは、生きた現代知識の図書館ですね」
 
 日本語でうんうん、と頷くカーミット。
 日本の異世界アニメが好きで、覚えたらしい。

 その後、カーミットに言われたのはこうだった。

 ・この世界は、アニメでいう異世界で、名前は「エアルドネル」
 ・主要国は二つで、北のエスルヴァ帝国と南オニアニック王国。戦時中らしい。
 ・この世界には魔法がある



「魔法か。使い方は?」
「覚醒するまで使えません。聖痕の大きさで、強さも決まります」

 カーミットが手のひらの聖痕を見せてくる。
 身分制度も、聖痕の大きさで決まるらしい。 



「つまりAランクが勇者で、Zが奴隷……いや、処刑か?」
「帝国では奴隷、王国では処刑です」

 見るとララは震えていた。
 彼女は獣人で聖痕がなく、奴隷にされたらしい。

「僕も聖痕がないんだが……」
「イヤイヤ! 亜人以外、みんな持っていますよ! 転生者も全員――」

 早苗が両掌を見せると、カーミットは固まる。

「オイバボイ(なんてこった)……本当にない」
「王国で、処刑される訳にはいかない。ここで降りるか――」
「マァ、大丈夫ですよ。今回はAランクのマックスがいるので、陛下も機嫌をよくするハズ」

 おどおどした隣のララが、横から小さく――

「わたしは、早苗さまについていきたい。ダメ……?」
「構わないよ。同じZランクだし」

 そんな感じで、馬車はそのまま、王国の首都に向かっていった。
 仮眠を取ろうと目をつむるが……

「サナエサン。王都についたら、気絶しないでくださいね」

 なにか、不吉なことを言われた気がした。
 だがその頃には、まぶたが重くなり。
 早苗は、静かに眠った。



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