第17話 『カリンシカ』 (日付不詳)
文字数 368文字
発心(ほっしん)、というのだろうか。その他火(たひ)に出(た)つべきときが私を訪れたのは、涼気をよぶ亜熱帯の月がわずかに欠けを見せる、季節のはじまりだった。
てばやく荷をまとめ、村をたばねる老にだけ出立を告げて歩きだす。眼下の斜面でもう夕刻だというのに、ひとり鍛錬にはげむあいつの姿があった。
彼が負かしたい相手はしばらくいなくなる。永遠に、とあるいは言うべきか。今度の旅がかなえば、私はきっと異(ちが)うのだろうから。
……怒るだろう。
まして黙って去るならなおさらだ。これまで私はいつでも、武者修業に足がおもむく前にはあいつに断わりを入れていた。
あいつが、私にたいしてそうするように。
コメント
りす 2006年11月15日1:35
ヒミツ日記(相互リンクの人のみ表示)
(これは懐かしの「400字詰め原稿用紙」(縦罫)に、手書き)。