第18話
文字数 1,446文字
今日も今日とて、スポーツカー。
しかし、走っている場所は普段と違う。何処かというと――。
「いやあ、やっぱり首都高は良いなあ。飛ばすに限るよ」
「ご主人様……何で首都高で百キロ出せなんて言い出すんですか……!」
「理由? 知りたいか? お前が食べるのが遅くて、予定時間よりも十五分遅く出発することになったからだぞ。それが嫌だったんなら早く食べておけと言ったはずだが?」
言ったような、言っていないような……!
いずれにせよ、この法定速度? 何それ美味しいの? 状態になっていることについての説明には、何一つ当てはまらないのだが。
「お台場はいつ見ても変わらないものだなあ。あの球体……いつか落ちてこないかとヒヤヒヤするものだ。どう思う?」
「ぐねぐねしていて車がいっぱい走っていて速度は百キロ以下出すと死刑なんて言うからこっちは色々てんてこ舞いなんですけれどーっ!」
すぱーんっ!
正直に言ったはずなのに何故か頭が混乱状態に陥っている雪乃の頭に、衝撃走る。
正確に言うと、その衝撃は表現ではなく感覚であるのだが。
「いやあ、ハリセンの音はいつ聞いても良いものだなあ。何というか、日本のテレビってこういう良いところも昔は取り揃えていたような気がするが……まあ、それは良い」
「ぜんっぜん良くないんですけれど! 何でいきなりハリセンで叩かれないといけないんですかっ! ちゃんとした理由を言ってください、理由をっ!」
「理由を言えば、ハリセンで叩いて良いのかね?」
「そういうことじゃなくてっ!!」
「はっはっは。いやあ、新入りというのは楽しいものだなあ。特にあまり関わりがなかった奴だとなお面白い。色々と『段取り』というものがある訳だからね……」
何を言っているのか、さっぱり分からなかった。
というか、早く終わって欲しかった。
終わって欲しかったけれど――残念ながら、その願いが聞き届けられるのは、もう少し後になりそうだった。
◇◇◇
東京湾の一角。
「いやー、警察とのカーチェイスはなかなか見物だったぞ。この日本でよくもまあ、あんなアクロバティックなことが出来るものだと、感心するよ」
「感心しないでください! ……私、指名手配とかされていないですよね? よね?」
すっかり怯えて武者震いを通り越して震えが止まらなくなっている雪乃。
それを見た東谷はぽんぽんと肩を叩いて、
「何だ、そんなことか。安心したまえ。君は指名手配などされないよ。……政府のブラックリストには載ったかもしれないがね?」
「良く分からないけれど、最悪な響きしか想像出来ない……!」
とにかく。
今はやるべきことをやらないといけないのだ。
「……それにしてもここって何処なんですか?」
「そんなことも知らずに運転してきたのか。……ここは東京湾の倉庫だ。倉庫と言っても色々な名前があるし種類もあるが、敢えてここではその名前を呼ばないでおこう。何かと面倒ではあるからな」
「それってどういう意味です? 何か嫌な予感がして仕方がないのですけれど……」
「悪の組織が堂々と倉庫を使える訳がなかろう。そして、ここは『闇』の取引をする現場としては最適な場所だ。奥まった場所にあって、人が滅多にやって来ることもない。そして……」
「そして……?」
「こういう風に、人払いも出来る」
そう言って、東谷はスーツのポケットから取り出した小さな紙片を地面に投げ捨てた。
しかし、走っている場所は普段と違う。何処かというと――。
「いやあ、やっぱり首都高は良いなあ。飛ばすに限るよ」
「ご主人様……何で首都高で百キロ出せなんて言い出すんですか……!」
「理由? 知りたいか? お前が食べるのが遅くて、予定時間よりも十五分遅く出発することになったからだぞ。それが嫌だったんなら早く食べておけと言ったはずだが?」
言ったような、言っていないような……!
いずれにせよ、この法定速度? 何それ美味しいの? 状態になっていることについての説明には、何一つ当てはまらないのだが。
「お台場はいつ見ても変わらないものだなあ。あの球体……いつか落ちてこないかとヒヤヒヤするものだ。どう思う?」
「ぐねぐねしていて車がいっぱい走っていて速度は百キロ以下出すと死刑なんて言うからこっちは色々てんてこ舞いなんですけれどーっ!」
すぱーんっ!
正直に言ったはずなのに何故か頭が混乱状態に陥っている雪乃の頭に、衝撃走る。
正確に言うと、その衝撃は表現ではなく感覚であるのだが。
「いやあ、ハリセンの音はいつ聞いても良いものだなあ。何というか、日本のテレビってこういう良いところも昔は取り揃えていたような気がするが……まあ、それは良い」
「ぜんっぜん良くないんですけれど! 何でいきなりハリセンで叩かれないといけないんですかっ! ちゃんとした理由を言ってください、理由をっ!」
「理由を言えば、ハリセンで叩いて良いのかね?」
「そういうことじゃなくてっ!!」
「はっはっは。いやあ、新入りというのは楽しいものだなあ。特にあまり関わりがなかった奴だとなお面白い。色々と『段取り』というものがある訳だからね……」
何を言っているのか、さっぱり分からなかった。
というか、早く終わって欲しかった。
終わって欲しかったけれど――残念ながら、その願いが聞き届けられるのは、もう少し後になりそうだった。
◇◇◇
東京湾の一角。
「いやー、警察とのカーチェイスはなかなか見物だったぞ。この日本でよくもまあ、あんなアクロバティックなことが出来るものだと、感心するよ」
「感心しないでください! ……私、指名手配とかされていないですよね? よね?」
すっかり怯えて武者震いを通り越して震えが止まらなくなっている雪乃。
それを見た東谷はぽんぽんと肩を叩いて、
「何だ、そんなことか。安心したまえ。君は指名手配などされないよ。……政府のブラックリストには載ったかもしれないがね?」
「良く分からないけれど、最悪な響きしか想像出来ない……!」
とにかく。
今はやるべきことをやらないといけないのだ。
「……それにしてもここって何処なんですか?」
「そんなことも知らずに運転してきたのか。……ここは東京湾の倉庫だ。倉庫と言っても色々な名前があるし種類もあるが、敢えてここではその名前を呼ばないでおこう。何かと面倒ではあるからな」
「それってどういう意味です? 何か嫌な予感がして仕方がないのですけれど……」
「悪の組織が堂々と倉庫を使える訳がなかろう。そして、ここは『闇』の取引をする現場としては最適な場所だ。奥まった場所にあって、人が滅多にやって来ることもない。そして……」
「そして……?」
「こういう風に、人払いも出来る」
そう言って、東谷はスーツのポケットから取り出した小さな紙片を地面に投げ捨てた。