第26話 - 対峙
文字数 2,707文字
本来、サイクスの戦闘において目にサイクスを集中して"レンズ"を駆使することは基本である。特に今回のように異質な何かを感じた際は経験を積んだ使い手ならば無意識にレンズを発動する。
瀧も例外ではなく振り返った瞬間にレンズを行い、樋口が発動した"大食漢 "の位置を正確に把握していた。しかし、日中にこの技術を知った和人にはその習慣がなく、それを正確に把握することが出来ていなかった。
「(まずい!! 和人はあのサイクスの位置を掴めていない!)」
気付いた瀧は"大食漢 "が2人に到達する直前に和人を押して回避させ、自らは"大食漢 "の影響を一身に受けてサイクスを喰われた。
「(くっ……!!! 1回でかなりのサイクスを持ってかれた……!!!)」
和人は受け身を取りながら瀧の方を見る。
「(瀧さん、僕を庇って……!! くそっ! レンズか!)」
和人は目にサイクスを集中させてレンズを発動、樋口のサイクスを視認する。"大食漢 "は更に瀧のサイクスを喰らおうと襲いかかろうとしていた。
「瀧さん……!!!」
––––"弓道者 "!!!!
和人は両手にサイクスを集中し、弓構 え (矢を番えて弓を引く前に行う準備動作) そのまま取掛 け (弦・矢を保持すること) に移り、手の内 (弓を保持する左手) を整える。その際、サイクスは弓矢の形を模す。
左人差し指で狙いを定め、更に親指を人差し指に近付くように傾ければより速い矢を放てる。
––––"衝撃 "!!!
"弓道者 "は5種類の矢を放つことが出来る。"衝撃 "は命中した箇所から中心に衝撃波を起こし、対象を吹き飛ばすことが出来る。
矢は正確に樋口へと放たれた。
「(よし!!)」
樋口に命中するかと思われた矢は既 のところで"大食漢 "に喰われた。
「(何っ!! 樋口は瀧さんの方を向いているのにあのサイクスだけこっちに反応した!? 樋口とは別に意思を持っているのか!?)」
「お前のも美味ぇな」
樋口が和人の方を振り向く。
「(これならどうだ!)」
––––"雷光 "!!
光を纏った矢を放ち、樋口の足元に刺さる。
「お前どこを撃ってやが……」
樋口が言い終わらないうちに矢から眩 い光が放たれる。"雷光 "の矢に殺傷能力は無いが、目眩しの光を放つ。
「何だこれ! 眩しい!」
樋口が光に面食らって手で顔を覆い、視線を外す。
「よく時間を稼いでくれたぜ、和人。ナイスプレーだ」
右手にサイクスを放つ紅い籠手を付けた瀧が背後に立ち、ドーム状の空間に樋口は閉じ込められていた。
––––"稽古場 "
瀧の"稽古場 "は害意を持ってサイクスを纏っている者 (複数可) を半径5メートルのドーム状の空間に閉じ込める。瀧が解除しない限り内側からも逃げられず、外側からも加わることは出来ない。
「いくぜ、樋口」
瀧は不敵に笑うと"稽古場 "の中央で構え始め全てのサイクスを右手の紅い籠手に込める。瞬間、込められたサイクスが増幅される。
身の危険を感じた樋口は"大食漢 "が襲いかかるのと同時に自らもサイクスを纏わせて殴りに向かった。
「馬鹿が……ッ!!」
その言葉を聞いた樋口は一瞬、瀧を見失う。
「なっ!! どこ行きやがった!?」
––––否
瀧は"稽古場 "の中央から一歩も動いていない。何故ならばこれが発動条件だからだ。動いたとするならば構えの状態から右拳を前に突き出し、正拳突きを行ったのみ。
では何故樋口は瀧の姿を見失ったのか。
瀧の正拳突きの一連の動作が流麗で美しく且つ素早く行われたに他ならない。
––––"闘気強大拳 "!!!!!
気付いた時、樋口は瀧と戦闘していた場所から20m程離れた地点で吐血し、鳩尾 を抑えながら膝をついていた。
「ガッ……ガハッ……! 一体……一体何が……起こったんだ……? 腹を殴られたのか?」
樋口は何とか立ち上がる。"大食漢 "は喰らったサイクスを樋口に移して防御に回す事が可能である。
瀧の拳が樋口に直撃する直前、自動的に防御に回した。それを持ってしても本体に大きなダメージを与える程に強力な一撃だった。
"大食漢 "は多くのサイクスを樋口に回した為、激しい空腹が樋口を襲う。
「(くそ!!! 腹が減った!!)」
"大食漢 "は騒動の為に集まってきた野次馬の中にいる超能力者たちからサイクスを喰らい回復を図る。
「(ちっ、最初にサイクスを喰われたせいで"血と汗の結晶 " (紅い籠手) で増幅させた拳でも一発で仕留めきれなかったか。いつもの2割程度のパワーしか出てねぇ……!!!)」
樋口が群衆に紛れる。
「くそ! 逃してたまるか!」
瀧と和人は逃走する樋口を追う。
「和人、奴は相当なダメージを負ってる。ここでカタを付けるぞ!」
「はい!」
「("弓道者 "を使うことは出来ない! 関係ない人たちを巻き込んでしまうかもしれない!)」
サイクスを吸収しながら走る樋口から"大食漢 "が分裂し、2人に襲いかかる
「!!!」
2人は左右に分かれて回避する。
「え!? なになに? 映画の撮影!?」
周りのギャラリーが増え、2人の進行を妨げる。
「道を開けて下さい!! 警察です!!」
瀧が群衆を掻き分け、小さくなっていく樋口の背中を追う。
その時、瀧は視界の端に"大食漢 "の分裂体が信号を渡る一般の超能力者に襲いかかろうとする瞬間を捉え、事故現場が脳裏に浮かぶ。
「(もしもサイクスを全部抜かれてその場で倒れたりしたらまずい!!)」
瀧は方向転換し、一般人を救う。
次の瞬間、分裂体を1本の矢が貫く。
和人も瀧と全く同じ思考の下、"弓道者 "でサイクスの餌として食らいつかせる為に放ったのだ。
「(貫いた!?)」
瀧は樋口を見失い、地面を殴った。
「クソ!! 分裂体はサイクスを喰らう能力は無いのか!!」
"大食漢 "の分裂体にはサイクスを喰らう力や危害を加える力は備わっておらず陽動に利用できるのみである。
瀧はその場で伊藤、徳田に連絡し警戒体制を敷かせた。
しかし、その日逃走した樋口兼を捕らえることは出来なかった。
瀧も例外ではなく振り返った瞬間にレンズを行い、樋口が発動した"
「(まずい!! 和人はあのサイクスの位置を掴めていない!)」
気付いた瀧は"
「(くっ……!!! 1回でかなりのサイクスを持ってかれた……!!!)」
和人は受け身を取りながら瀧の方を見る。
「(瀧さん、僕を庇って……!! くそっ! レンズか!)」
和人は目にサイクスを集中させてレンズを発動、樋口のサイクスを視認する。"
「瀧さん……!!!」
––––"
和人は両手にサイクスを集中し、
左人差し指で狙いを定め、更に親指を人差し指に近付くように傾ければより速い矢を放てる。
––––"
"
矢は正確に樋口へと放たれた。
「(よし!!)」
樋口に命中するかと思われた矢は
「(何っ!! 樋口は瀧さんの方を向いているのにあのサイクスだけこっちに反応した!? 樋口とは別に意思を持っているのか!?)」
「お前のも美味ぇな」
樋口が和人の方を振り向く。
「(これならどうだ!)」
––––"
光を纏った矢を放ち、樋口の足元に刺さる。
「お前どこを撃ってやが……」
樋口が言い終わらないうちに矢から
「何だこれ! 眩しい!」
樋口が光に面食らって手で顔を覆い、視線を外す。
「よく時間を稼いでくれたぜ、和人。ナイスプレーだ」
右手にサイクスを放つ紅い籠手を付けた瀧が背後に立ち、ドーム状の空間に樋口は閉じ込められていた。
––––"
瀧の"
「いくぜ、樋口」
瀧は不敵に笑うと"
身の危険を感じた樋口は"
「馬鹿が……ッ!!」
その言葉を聞いた樋口は一瞬、瀧を見失う。
「なっ!! どこ行きやがった!?」
––––否
瀧は"
では何故樋口は瀧の姿を見失ったのか。
瀧の正拳突きの一連の動作が流麗で美しく且つ素早く行われたに他ならない。
––––"
気付いた時、樋口は瀧と戦闘していた場所から20m程離れた地点で吐血し、
「ガッ……ガハッ……! 一体……一体何が……起こったんだ……? 腹を殴られたのか?」
樋口は何とか立ち上がる。"
瀧の拳が樋口に直撃する直前、自動的に防御に回した。それを持ってしても本体に大きなダメージを与える程に強力な一撃だった。
"
「(くそ!!! 腹が減った!!)」
"
「(ちっ、最初にサイクスを喰われたせいで"
樋口が群衆に紛れる。
「くそ! 逃してたまるか!」
瀧と和人は逃走する樋口を追う。
「和人、奴は相当なダメージを負ってる。ここでカタを付けるぞ!」
「はい!」
「("
サイクスを吸収しながら走る樋口から"
「!!!」
2人は左右に分かれて回避する。
「え!? なになに? 映画の撮影!?」
周りのギャラリーが増え、2人の進行を妨げる。
「道を開けて下さい!! 警察です!!」
瀧が群衆を掻き分け、小さくなっていく樋口の背中を追う。
その時、瀧は視界の端に"
「(もしもサイクスを全部抜かれてその場で倒れたりしたらまずい!!)」
瀧は方向転換し、一般人を救う。
次の瞬間、分裂体を1本の矢が貫く。
和人も瀧と全く同じ思考の下、"
「(貫いた!?)」
瀧は樋口を見失い、地面を殴った。
「クソ!! 分裂体はサイクスを喰らう能力は無いのか!!」
"
瀧はその場で伊藤、徳田に連絡し警戒体制を敷かせた。
しかし、その日逃走した樋口兼を捕らえることは出来なかった。