第4話(6)

エピソード文字数 1,678文字

「…………ふぅ。終わったな」

 ドアを閉めた俺は大息を吐き、即刻ですね。ふかーく腰を折り曲げました。

「レミア、フュル、シズナ、申し訳ありませんでしたっ! 数々の無礼をお許しくださいませっっ!」

 皆さんはお気づきになられていると思いますが、あれは全てシズナ考案の『色紙優星って実は強いんだぞ』アピール作戦なのです。
 チャンピオンを一蹴した者を一蹴すれば、簡単に実力を見せつけられる。そのため家でミッチリ練習をして(演技が下手なレミアとフュルは特にして)、ああやったのであります。

「構わんぜよ、師匠。ワシらは魔力で防御しちゅうし、自分で後ろに飛んだだけやきね」
「痛みなんて、全くなかったわ。気にしないで従兄くん」
「あたしも、少し転んだだけだもん。全然いーよ」

 気絶したフリをしていた2人が頬を緩め、レミアは頭の上で両手を合わせて○印を作ってくれる。皆様、ホントありがとうございますです。

「重ね重ね感謝で、助かったよみんな。アナタ方のおかげで、印象が大きく変わりましたっス」

 究極奥義を得た弱者から、究極奥義を得た強者にジョブチェンジ。自分には奥義以外の力はないが、昨日のシズナみたいに力を感じさせないように出来る者は大勢いる(シズナが言ってたように彼女達の世界は忍者がポピュラーで、忍びまくった先祖の影響で大半が力を隠せるらしい)。な・の・で、俺を狙うヤツはいなくなるでしょう。
 あそうそう。昨日シズナは、なぜ力を隠したり魔法で事前に連絡しなかったのかといいますとね。内緒+感知できないようにしておいて背後からフュルに忍び寄り、驚かせて怒られようとしていたそうです……。

「これで、一番の目的は達成。ここからは念には念をで更に俺の評判を上げつつ、目的第2――レミア達の目標である『優勝賞品・ベロベロリン王国製ボディーソープ1年分ゲット』を目指すことになるね」

 ウチの変態さんが言っていたようにココのは大人気で、入手に最低半年はかかるらしい。だから3人は他の英雄さん達に、『賞品を山分けするから』という条件で出場を辞退してもらったんですって。

「チーム戦の商品は、豪華なのよね。親友の為、そして自分自身の為にも、何が何でも手に入れたいわ」
「その通りぜよっ! しかしこんなに良い品先生を出せるなら、個人戦も豪勢にして欲しいにゃあ」
「おーおー、フュルさんは不満一杯だね。個人で優勝したら、何を贈呈されるの?」
「開催国の王様(おーさま)さんが描いた、優勝者(ゆーしょーしゃ)の似顔絵だよー。色鉛筆で描いてくれるんだーっ」

 そんなの要らねぇ! 嬉しくねぇ!
 密かに『ボディーソープってショボクないか?』と思ってたけど、もっとショボイ。やはりどの世界にも、上には上がおりますな。

「しかも師匠、王様先生は数が多いってキレるんぜよ。それだからワシらは遠慮したら、絵心がないとバカにしておるのか! って怒鳴られたがで」
「は~、そんな出来事があったのかぁ。3人とも大変だったね」

 どっちに転んでも、面倒になる。優勝ってなんなんでしょうね。

「さしもの私でも、あの怒られ方は気持ちよくなかったわ。胸の奥が、ジュンってしなかったもの」
「……シズナ、物欲しそうな目をしないでね? 俺は怒らないからね?」

 やめて、そんな目でこっちを見ないで。シズナ菌に感染しちゃう。

「にゅむー、ゆーせー君イジワルだよー。シズナちゃんを、思う存分興奮(ぞんぶんこーふん)させてあげてほしーなーっ」
「レミアの真似をするんじゃねぇぇっ! 声マネ上手すぎて、余所見してたら間違えるだろ――ああもう!」

 またまたまたまた引っかかった。この女、人を怒らせる達人だ。

「はふん……っ。きもちくて、頭がボーっとしてきちゃった……」
「そうですか。なら、そのまま脳みそ壊れちまえよ」

 俺は冷めた目線を送り、以後は耳を塞いで次戦を待つことにした。
 シズナは、眼差しだけではなく声までもが毒。対策を施しておかないと、侵されるのですはい。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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