003 春、変態との遭遇。3
文字数 1,506文字
窓際で一心不乱にスマホをいじっているのは、去年もクラスが一緒だった仲良し『のんちゃん』だ。ほっそりとした首筋とマッシュショートがベストマッチな彼女には独特の色気がある。
「のんちゃん、おはよう」
前面にまわりこんで声をかけると彼女がハッと私を見上げた。
「おはよう、まとこ。またおんなじクラスだね」
「くっーーーのんちゃんッッ・・・・」
いつもと変わらぬのんちゃんの笑顔を目にした途端、なぜかドッと疲労が。
そこらの椅子を適当に借りると、私はがっくりと座り込んだ。
「朝からどしたの。なんかあった??」
ただならぬ私の様子にのんちゃんが目を丸くする。
「ううっ・・・・席が、席がッッ」
「席ぃ?? 座席表見たけど、まことの席ってめっちゃいいトコじゃなかったっけ?」
「場所には文句ない。だけど隣がっっ~~~!」
「え? 隣?」
後方へ首を捻ったのんちゃんがギョッと目をむいた。
「うわ、オッパイじゃん!! 最っっ悪」
そう。隣がオッパイ。
それってつまり、とっても可哀想なことなのだ。
一部のコアなファンを除けば、学年一女子に嫌悪されている男子はオッパイの四月くんで間違いない。
「さっきいきなり「いいオッパイしてるね」って言われたの!! 初対面のひとことめにだよ!? 信じられる!???」
「う、嘘っっ・・・・・・まぢで??」
まぢもまぢ。大マジだ。
私の記憶が確かならば、あれは「おはよう」の挨拶をするよりも前だった。
「てか、もしかしたらアレがヤツなりの挨拶だったのかもしれない・・・・。私らとは扱う言語が違うのかも」
力なく頷きながら、のんちゃんがため息をつく。
「フツーの常識なんて通用しないんじゃないかな。・・・にしても噂通りすぎてびっくり」
「だよね。私もおんなじこと思った」
事実、四月くんにはロクな噂がない。
自他供に認める巨乳好きを公言して憚らない四月くんは三度のメシよりオッパイが好きで、自宅にはエロ本から切り抜いて自作したというオッパイコラージュコレクションと巨乳美少女のフィギュアが並び、夜は巨大なオッパイ型抱き枕に顔をうずめて眠るのだという。ちなみにスマホの待ち受けは、某グラビアアイドルの超絶美巨乳の拡大画像らしい。
「そうだ、この話知ってる!? あいつオッパイの水墨画はじめたんだって!」
「なんじゃそら。いったい誰のドコ情報?」
「さあね。巷の噂だよ」
それからのんちゃんは、突如、何かを思い出したかのようにハッと口元をおさえて私を見た。
「そういえば席替えでオッパイの隣になった子は、男子に頼んで席を交換してもらうって聞いたな」
「なっーーーんですてえええッ。そんな賢い手があったの!? よおし、中林くんにお願いして席を交換してもらおう!!」
ガターンと椅子をはねのけて立ち上がると、のんちゃんが慌てて私のスカートの裾を掴んだ。
「わわわ、まこと、ちょい待ちッッ。さすがに新学期早々は無理だよ。はじめはやっぱり名簿順でしょ。気の毒だけどまことの場合は貧乏くじひいたと思って次の席替えまで我慢するしかない」
「そんなっっ(悲)」
しおしおと腰を下ろした私はもう一度教室右手後方に目をやってオッパイの様子を窺った。男の子たちと仲良く談笑する四月くんは、パッと見だけなら全然フツーの男の子だった。むしろ清潔感があって爽やかで。
「アレで『四月湊』とか名前がもったいない」
「うん。詐欺だよね」
のんちゃんのつぶやきに私も深く同意する。
爽やかさへの冒涜。名は体を表さず。
さっぱりと整った四月くんのお顔が嫌いだという女子はまずいないだろう。中身さえマトモなら、きっとごく当たり前にモテるタイプの男の子だ。
それなのに、あのオッパイが。
オッパイが彼のすべてをダメにする。
「のんちゃん、おはよう」
前面にまわりこんで声をかけると彼女がハッと私を見上げた。
「おはよう、まとこ。またおんなじクラスだね」
「くっーーーのんちゃんッッ・・・・」
いつもと変わらぬのんちゃんの笑顔を目にした途端、なぜかドッと疲労が。
そこらの椅子を適当に借りると、私はがっくりと座り込んだ。
「朝からどしたの。なんかあった??」
ただならぬ私の様子にのんちゃんが目を丸くする。
「ううっ・・・・席が、席がッッ」
「席ぃ?? 座席表見たけど、まことの席ってめっちゃいいトコじゃなかったっけ?」
「場所には文句ない。だけど隣がっっ~~~!」
「え? 隣?」
後方へ首を捻ったのんちゃんがギョッと目をむいた。
「うわ、オッパイじゃん!! 最っっ悪」
そう。隣がオッパイ。
それってつまり、とっても可哀想なことなのだ。
一部のコアなファンを除けば、学年一女子に嫌悪されている男子はオッパイの四月くんで間違いない。
「さっきいきなり「いいオッパイしてるね」って言われたの!! 初対面のひとことめにだよ!? 信じられる!???」
「う、嘘っっ・・・・・・まぢで??」
まぢもまぢ。大マジだ。
私の記憶が確かならば、あれは「おはよう」の挨拶をするよりも前だった。
「てか、もしかしたらアレがヤツなりの挨拶だったのかもしれない・・・・。私らとは扱う言語が違うのかも」
力なく頷きながら、のんちゃんがため息をつく。
「フツーの常識なんて通用しないんじゃないかな。・・・にしても噂通りすぎてびっくり」
「だよね。私もおんなじこと思った」
事実、四月くんにはロクな噂がない。
自他供に認める巨乳好きを公言して憚らない四月くんは三度のメシよりオッパイが好きで、自宅にはエロ本から切り抜いて自作したというオッパイコラージュコレクションと巨乳美少女のフィギュアが並び、夜は巨大なオッパイ型抱き枕に顔をうずめて眠るのだという。ちなみにスマホの待ち受けは、某グラビアアイドルの超絶美巨乳の拡大画像らしい。
「そうだ、この話知ってる!? あいつオッパイの水墨画はじめたんだって!」
「なんじゃそら。いったい誰のドコ情報?」
「さあね。巷の噂だよ」
それからのんちゃんは、突如、何かを思い出したかのようにハッと口元をおさえて私を見た。
「そういえば席替えでオッパイの隣になった子は、男子に頼んで席を交換してもらうって聞いたな」
「なっーーーんですてえええッ。そんな賢い手があったの!? よおし、中林くんにお願いして席を交換してもらおう!!」
ガターンと椅子をはねのけて立ち上がると、のんちゃんが慌てて私のスカートの裾を掴んだ。
「わわわ、まこと、ちょい待ちッッ。さすがに新学期早々は無理だよ。はじめはやっぱり名簿順でしょ。気の毒だけどまことの場合は貧乏くじひいたと思って次の席替えまで我慢するしかない」
「そんなっっ(悲)」
しおしおと腰を下ろした私はもう一度教室右手後方に目をやってオッパイの様子を窺った。男の子たちと仲良く談笑する四月くんは、パッと見だけなら全然フツーの男の子だった。むしろ清潔感があって爽やかで。
「アレで『四月湊』とか名前がもったいない」
「うん。詐欺だよね」
のんちゃんのつぶやきに私も深く同意する。
爽やかさへの冒涜。名は体を表さず。
さっぱりと整った四月くんのお顔が嫌いだという女子はまずいないだろう。中身さえマトモなら、きっとごく当たり前にモテるタイプの男の子だ。
それなのに、あのオッパイが。
オッパイが彼のすべてをダメにする。
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