コツブ7ヘン

文字数 566文字

路傍の猫の欠伸を覗いたら吸いこまれた。以来見知らぬ世界で冒険の連続! 旅路のさなかふと大欠伸。気づけばあの日の路傍で猫が私の口をじっと覗いている。

* * * * *

私の影が猫の姿で走り出す。夜空を見れば流星群。誰かがご祝儀を撒いているよう。私も拾いに行かなくちゃ! 猫に変じて走り出す。星には猫しかさわれない。

* * * * *

飼猫が風鈴の音や風と追いかけっこしてる。元気に駆けてジャンプして、まるでピーターパンと冒険をする子どものよう。いいなあ。結婚なんかやめようかな。

* * * * *

猫が講釈大熱演。猫の先祖の大冒険。生者必滅会者定離、波乱万丈義理人情。語り終えて大拍手。おっと猫がお昼寝から覚める。私も急いで目覚めなくっちゃ。

* * * * *

夜の運河を見下ろし友猫が言う。君、人生はね、なるようにしかならないものさ。猫に人生の何がわかる? 腹が立ったので煙草を勧めると平然とふかす憎い奴。

* * * * *

失恋したと友猫に言うと、裏通りのバーに連れていかれた。彼女いわく、恋の傷には知らない酒場の知らない酒がよく効くのさ。呑んだら涙が出たよ嘘つきめ。

* * * * *

友猫が自動車を改造して宇宙船を作った。どこへ行く気? 地球という星へ人間を見に。そっけなく答えて出発しちゃった。なんとわたしは人間じゃないらしい。


fino



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