1.もちろんここでは秘匿です

文字数 677文字

聞くところによると、裏メニューがあるとか?

そんな大袈裟なものではないですよ。

お客さまとお話をしながら、きょうはこんな気分のカクテルはどうかなって、お出しすることがあるんです。

酒を楽しく飲むには話し相手がいないことにはね。

近ごろ流行りのガールズバーならぬボーイズバーですかな。

あ、いや失礼。こんな高級ホテルでそれはないか。

いえいえ。まぁ、そうはいいましても、お客さまによってはおひとりで静かに飲まれたい方もいらっしゃいますから、そんなときは隅でひっそりとグラスを磨いています。

詮索はあるでしょ。

きれいで色気のある女がひとり、そっとしておいてっていう雰囲気でいたら、ねぇ。

俺だったらたまらなくなって声をかけたくなるけど、バーテンはそういうわけにはいかないよね。

若い女性がおひとりで気兼ねなく時を過ごすには、ここは最適です。

だから、ここだけの話しにしておいてくださいね。

想像をすることはありますよ、尋ねはしませんがね。

ふぅん。観察眼には長けているってところかね。

とんでもない。

確認していないのですから、たんなる空想です。

人を見る目があるわけじゃないですよ。

俺はどんなふうに見られているのかな。

世界を飛び回る商社マンには見えてないよね。

取り扱う商品によって違いますよ。
なるほどね。俺はさしずめ雑多な総合商社ってところかな。
幅広い知識をお持ちで?

たいそうなもんじゃないよ。

だけど目利きは必要だ。

俺は多くの物を持ち歩きたくはないし、偽物をつかまされたくもない。

おのおの業界でみなプライドを持ってやってるものさ

わかります。多方面にお知り合いがいらっしゃるのでしょうね。
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