第六章 純朴なやり取り

エピソード文字数 1,009文字

 暎蓮を喜ばせるためとはいえ、彪は慣れない女児の遊びに疲れ切ったが、彼らは結局、休憩時間いっぱいを使い切って、『遊戯室』で遊んでしまった。

「……楽しかったですね、彪様」
 日時計を見て、休憩時間が終わりに近いことを知り、名残惜しそうに、おもちゃの数々を片付けだした暎蓮は、言った。
「もうお時間だなんて、残念です」
 彪は、疲れを顔に出さないようにしつつも、笑って見せた。
「……お姫様が、楽しかったなら、よかったよ」
「ありがとうございます。……あら。でも。結局、『作戦会議』はできませんでしたね」
 いかに精神的に子供の暎蓮でも、さすがにまずいと思ったのか、彼女は少しあわてて、言った。
「もう、しょうがないよ。あとは、夜、本番の時、『出たとこ勝負』で、決着をつけよう」
「そうですね……。申し訳ありません、彪様」
「気にしないでいいよ。……俺も、楽しかったから」
 彪は、多少苦しいと思いつつ、それでもなんとか、言った。そして、話を改めた。
「だけど、今日の夜のこと、本当に扇様に言わなくてもいいの?」
「扇賢様は、きっとご公務でお疲れでしょうから……」
 暎蓮が本当に彪と二人だけで今回の仕事をしようとしていることに、彪は改めて気を引き締めた。
(本当は、こんな遊びをしている場合じゃなかった気がするけれど。……まあ、仕方がないか)
 ……あらかた、おもちゃの類を片付けたところで、二人は一度、居間に戻った。
「じゃあ、俺はそろそろ『宇天宮』に戻るよ。……仕事もしないとね」
「はい。……では、ご門までお見送りします」
「わざわざそんなこと、いいよ。……また、夕方にはすぐに会えるんだから」
 暎蓮は、彼に向かって、優しく微笑んだ。
「……それでも、私は、お見送りしたいのです」
 彪は、その彼女の発言と微笑みに、また照れで顔を赤らめた。……だが、それ以上断り切れず、結局二人は門まで一緒に行った。
「それでは、お仕事、頑張ってください、彪様」
「ありがとう。……お姫様も、修行、頑張って」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃ、仕事が終わったら、また」
「はい。お待ちしております」
 彼らは、微笑み合い、別れた。……暎蓮は、彪の姿が見えなくなるまで、門の中から、彼の姿を見送っていた。それに対して、彪は、何度も振り返り、彼女に手を振った。
 その二人の純な姿は、誰が見ても、とても微笑ましかった。
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登場人物紹介

白点 彪(はくてん ひゅう)

十三歳。『玉雲国』の『宮廷巫覡』で、強力な『術』を使える『術者』でもある。

この国の『斎姫』で初恋の相手、十一も年の違う憧れの『お姫様』である暎蓮を護るのに必死。

温和な性格。

甦 暎蓮(そ えいれん)

二十四歳。しかし、『斎姫』としての不老の力で、まだ少女にしか見えない。『玉雲国』の王である扇賢の妃。『傾国の斎姫』と言われるほどの美女。世間知らず。

彪が大のお気に入りで、いつも一緒にいたがる。しかし、夫の扇賢に一途な愛を注いでいる。

使う武器は、『破邪の懐剣』と『破邪の弩』。

桐 扇賢(とう せんけん)

十七歳。暎蓮の夫にして、『玉雲国』の王。『天帝の御使い』、『五彩の虎』の性を持つ。単純な性格ではあるが、武術や芸術を愛する繊細な面も。

生涯の女性は暎蓮一人と決めている。

彪とはいい兄弟づきあいをしている。愛刀は、『丹水(たんすい)』。

関 王音(せき おういん)

二十代後半。扇賢のもと・武術の師で、宮廷武術指南役。美しく、扇情的だが、『天地界』中にその名と顔が知れ渡っているほどの腕の『武術家』。

暎蓮にとっては、優しい姉のような存在。彪や扇賢にとっては、やや恐れられている?

愛刀は『散華(さんげ)』。

ウルブズ・トリッシュ・ナイト

二十代後半(王音より少し年下?)。扇賢のしもべで、『玉雲国』ただ一人の『騎士』を自称する、人間界の西方が出自の金髪美男。暎蓮に懸想しており、彪や扇賢とは好敵手関係?戦うときは銀の甲冑と大剣を持つ。マイペースな性格。

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