詩小説『追憶の防波堤』3分の悲劇。哀しい大人へ。

エピソード文字数 413文字

追憶の防波堤

追憶の防波堤に立ち尽くす。
身を投げるほど野暮じゃない。
波よ運べと、私に宛てた手紙風を呼ぶの。

帰れるはずもないあの日へと、
あてもなく歩き出す。
私は彷徨える旅人。

肌が溶けそうなほど抱き合って、
倒れるようにベッドへ沈んで、
転げ落ちるように愛し合った。

貨物舟は荷物を積み込み旅立つの。
行く宛などない未亡人を港へ残し。
舟出を告げる汽笛が鳴り響く。

舟出に相応しい波を待つわ。
空と海混ざる、滲んだ海に。
日暮れに合わせて漕ぎ出すつもり。

忘れ得ぬくらい私を最後に抱いて、
あの哀しい色のホテルに捨てて。
泣き崩れる私に海雪が叫ぶ。

大事に胸へ抱かれる少女は、
過ぎ去った父の肩から、顔を上げて、
あどけない瞳で私を見つめる。

肌が溶けそうなほど抱き合って、
倒れるようにベッドへ沈んで、
転げ落ちるように愛し合った。

幻なのかしら。辿り着けやしないし、
帰り道すら、忘れ去られた国。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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