3、厳男子流まんがのつくりかた

文字数 3,327文字

改めまして、時間もすぎましたが始めさせていただきます。
厳男子先生。最終日もよろしくお願いいたします。
はい!本日もよろしくお願いします!
ここまで作画の話がメインでしたが、作劇についてのお話をもう少し掘り下げてお聞きしてもよろしいですか?
厳男子先生は漫画を描くときのプロットなどは、どうされているんでしょうか?
プロットは一切書いてません。

いきなりネームですね。

プロットなしでネームですか?! それでまとまるんですか?
ずっとその描き方でやっていて、最終的になんとかまとまりますね。

あと数年前に漫画家の知り合いからスティーブン・キングの小説の書き方の本を勧められて読んで、キングが「プロットなんていらねー!」って言ってたのでこのやり方でいいんだなと確信が持てました(笑)

それは、あれですか。『状況を作って、そこにキャラを置くと物語ができていく』という、やつですか?
はいまさにそれです!

『書くことについて』というタイトルの本なんですが少し中身を引用してみます。


状況をしっかり設定すればプロットは無用の長物となる。

ストーリーとプロットは全く別物。

プロットが生まれるのとストーリーが自然に生まれるのは相矛盾すること。

ストーリーは地中に埋もれた化石のように探し当てるべきものだ。

プロットは化石を掘り出す削岩機のような馬鹿でかい道具だ。

削岩機は粗暴で無個性で反創造的である。

プロットは優れた作家の最後の手段であり、凡庸な作家の最初のよりどころだ。

プロット頼みの作品には作為的でわざとらしい感じがかならず付きまとっている。


こんなことが書いてありました。


うおおおお。こんなこと言われたら、プロット作ってる自分が駄目みたいな気がしてきます。でも、編集さんはいきなりネームを持ってくる前に、連載準備とかだと、『まず、プロット見せてください』とか、言われません?
………

…………

プロットをやらなかったから自分は全然連載決まらなかったのか…。

まあキングの意見なんて参考程度に聞いておくのがちょうどいいですかね(笑)

(すごい手のひらがえしを見た)

結局、「ムラサキ」の場合だと、ネームから書き始めて、着地させる際にどういう感じで頭の中でバランスとっている感じなんでしょうか? 説明しづらい話だとは思うのですが。

ネームはずっとリズムを重視しています。読んでる人がページをどんどんめくりたくなるように書いていく感じです。このページは台詞が多かったから次は台詞のない絵を大きく入れようとか、そういうことばかり考えてます。着地はなんとなくしています。「ここで終わればキリがいいな!よし終わり!」みたいな感じです。音楽でもフェードアウトよりカットアウトの終わりが好きなので、「えいやッ!」って感じでまとめます。

カンフー映画で敵を倒してすぐに「終劇」みたいやつがすごく好きなんで。


それで描けているのが本当にすごいと思います。そういう描き方の人がいるというのは、知識では知ってましたが、実際にお聞きすると、どうやってそうなるのか理解が追いつかないです。「えいやっ」って……。
まあ、カンフー映画の敵を倒して去っていくシーンでそのまま「終劇」っていうのは、私も好きなので、そこはわかるんですけれども。
ただ、ちょっと思うのは、「ここで終わればキリがいいな」という感じで終わらせることができるのはWeb媒体だからというところも強くありそうな気がします。
Web媒体だからというのは本当にその通りだと思います!自分の一番のネックはいつもページが足りないことだったので。この時代じゃなかったら自分はこの方法論で漫画の連載できなかったと思います!
最近のWeb漫画だと、偶数ページで終わらなくてもいい、とか、好きなタイミングで勝手にカラーページ差し込めるとか、それこそページ数を話ごとに変えられるとか、紙媒体では考えられないようなことができますよね。
そういう時代に上手くマッチできた、タイミングのよさというのは確かにあるのかもしれませんね。
そうですね。自分の話してることはweb媒体の連載では通用しても、紙媒体の連載では通用しない理論かもしれないです。

………

………だから紙の雑誌では連載できなかったのか……

そんな落ち込まないでください。私が悪いことしたみたいじゃないですか。

+……いえいえ事実ですからいいんですよ……

……ああそういえば去年「終わらないひと」という番組でドワンゴの川上量生さんが宮崎駿さんにキレられるというのが話題になりましたが、川上さんが書いた『ぼくがジブリで考えたこと』という本に描いてある内容が少し勇気をもらえる内容だったので引用します。


物語という点で、パターンの陳腐化を防ぐ方法があります。それは 作者自身もストーリーの展開が分からないまま書く というものです。

~中略~

宮崎監督の特徴は、ある程度の絵コンテがたまると、もう作品の制作を始めてしまうことです。同時進行なのです。  ですから、制作が始まったとき、まだ絵コンテは完成していないのです。脚本ももともとありませんから、ストーリーが最後にどうなるか、スタッフも誰も分からないまま作品をつくることになるのです。

~中略~

最初はゆったりとした時間の流れで映画はスタートします。次第にストーリーが進行して話もあちこちに広がっていき、いろいろな謎も深まっていきます。しかし、それらのお話も謎も、ほとんど 収拾 がつかないまま映画の残り時間が減っていくのです。どうなるんだろうと思っていると、最後の三〇分ぐらいから突然に時間の流れが速くなります。そして広がったお話がクライマックスに向けて 怒濤 のような勢いで、つぎつぎと解決されていくのです。  この構成がストーリーの向かう先がまったく読めないという緊張感を生み出しているのだと鈴木さんは言います。  たとえば『ハウルの動く城』では、どんどんお話があっちこっちに飛んでいきおもしろくはなっているのだけど、これ最後どうするつもりだろうと心配になった鈴木さんは、制作の途中でなんども宮崎監督に尋ねたそうです。 

「これ、ちゃんと終わりますかね?」  宮崎監督は自信ありげに

「大丈夫だ」と答えていたそうです。  ところが、絵コンテもだんだんと完成し、あと残り三〇分を残すばかりとなったときに、宮崎監督が鈴木さんのところにやってきたそうです。 

「鈴木さん、どうしよう。お話が終わらない」


巨匠でもこういう行き当たりばったりの体当たりをしてるんだと思うと希望が持てました。この本は本当に面白いのでオススメです。漫画にも応用できる考え方がすごく多いと思います。


なるほど、いわゆる『ひらめき型』というか『天才型』の作家さんのお話みたいな気がしますね。そう考えると、厳男子先生も『天才型』の作家ということですね!
天才ですから(花道ふうに)
(ちょろいなこの人!)


さて、色々お話を聞いてまいりましたが、そろそろいいお時間ですので、最後にこの座談会の感想と宣伝などありましたら、お願いいたします。

まだ単行本も出てない新人が偉そうなことを書いてすみませんでした!

そして海のものとも山のものともどこの馬の骨ともわからない自分をお招きいただいた森脇先生に感謝を!

なにかしらみなさまの役にたてたりヒントになったりできたなら幸いです。

最後にLINEマンガにて『ムラサキ』連載中です!よろしくお願いします!


いえいえ、今回は厳男子先生の素晴らしい作品の製作過程が拝見できただけで、ものすごく良い回だったと思います。
『ムラサキ』続きも楽しみにしております。頑張ってください。
今回はありがとうございました。
ありがとうございました!これからも『かみんの部屋』を楽しみにしております!
最後に次回告知です。

第七回「かみんの部屋 漫画家座談会」は5月中旬ごろ開催予定です。


気になる次回のゲストは
未定です!


決まり次第、またツイッターなどで告知いたしますので、お待ちください。

それでは、今回はこの辺で。

ご覧になっていただいた皆様、質問を下さった皆様、長丁場にお付き合いいただき、ほんとうにありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。


森脇かみんでした。

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登場人物紹介

森脇かみん


漫画家。『東京ネームタンク』ネーム相談講師。


web、アプリ漫画「サイコミ」にて医療漫画「サブカルメディカル」でデビュー、連載。

連載終了後は企業案件漫画など。その他、漫画連載を企画中。

某医大医学部を中退し、漫画家になるため上京した過去を持つ。

医療知識があるので、その方面の質問に応えることもある程度可能。

日本シャーロック・ホームズ・クラブに所属する程度にミステリ好き。

厳男子(きびだんご)


漫画家。

LINEマンガオリジナルにて高校生が創作ダンスをやる漫画

『ムラサキ』連載中。


大学時代は油絵を勉強していた。しかし油絵の制作よりもダンスと格ゲーにハマっていた。

現在は茨城の田舎でたまに農業をやりながら漫画を鋭意制作中。

趣味は読書、瞑想、自転車、写真、格ゲー動画鑑賞。

ハマった漫画を繰り返し何度も何度も読んでしまうタイプ。

『シグルイ』、『ガラスの仮面』、『ジョジョの奇妙な冒険』をループした数は全国10指に入ると勝手に思っている。

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