第53話 菊沼女史:2023年7月

文字数 1,085文字

(菊沼女史に、ユニバーサル・ジェンダー党の協力依頼をする)

2023年7月。東京。菊沼家。

「それで、いくら顧問料を頂けるのですか」
「顧問料ですって」
「私も霞を食べて生きているわけではないのでね。ただでは生きていけないんですよ」
「いったん、戻って検討させて頂きます。それでは失礼します」

ここは、東京の菊沼女史の家である。菊沼女史と洋子が言い合っていた。菊沼女史は、名前の通ったジェンダー問題の専門家である。
洋子は、ユニバーサル・ジェンダー党の売り出しに、頭を抱えていた。ともかく、知名度があまりに低い。選挙が始まれば、マスコミは、物珍しさから取り上げてくれるかも知れない。しかし、その時点では、時間が足りない。従来の政党のように、定型パターンの公約を押し付ける選挙であれば、選挙が始まってからでも、活動する時間は十分ある。しかし、それはしたくない。考えている政党活動は、有権者のリクエストを丁寧に拾いあげて、AIを使って、お薦めリストを作って、公約に編集する方法である。この方法では、選挙が始める前に、公約を集約するための時間が必要だった。
現在のセールスポイントは、ユニバーサル・ジェンダー党という、誰もが知っているユニバーサル・ジェンダー計画と同じ名称と、コマーシャルに出た洋子の顔だけだった。この2つだけで、知名度を上げることは難しい。
そこで、洋子は、有名人がユニバーサル・ジェンダー党を支援していることがわかれば、知名度が上がるのではないかと考えた。そして、有名人のリストを作って、順番に面会のアポを取りにいった。何人かに、断わられて、初めて、面会できた人が、菊沼女史だった。しかし、菊沼女史の返事は、お金次第というものだった。結局この方法は期待できないと諦めた。

洋子は、G社にスポンサーになってもらい、「アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社とG社は、ユニバーサル・ジェンダー計画の推進に、協力しています」という意見広告を出した。これは、WEB版も作ったが、メインはテレビ版で、WEBを見ないお年寄りの知名度を上げることを目的としていた。この時点では、ユニバーサル・ジェンダー党はまだ出来ていない。したがって、この意見広告の目的は、ユニバーサル・ジェンダー党の立ち上げに向けて、洋子の顔を売り込むことだった。この方法は、効果はあったものの、大きくはなかった。
また、アマゾネス・ウーマンズ・パートナー社は、ユニバーサル・ジェンダー計画のシンポジウムを開いた。この方法にも、効果はあったが、あまりに、時間がかかって、間に合わないと思われた。洋子は、焦りを感じていた。

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