07:クエスト2 パーティを組んでみよう!

文字数 2,658文字

 私たち五人は『オルビス・ナイト』のフレンドにもなり、早速ローカルプレイで遊び始めた。

「へぇ、うち初めて知ったわ。ローカルなら、おとと志音(しおん)がおんなじスイッチ使ってても画面分割してできるんだ」
「えっ、知っててさっき『スイッチ持ってきて』って言ったんじゃないの⁉︎」

 思わず、持っていたコントローラーを放しそうになる私。

「もしかしたらできるかも、とは思った」
「できてよかったよ、もう」
「そういえばさ」

 志音が話を(さえぎ)ってきた。

「GROSKの方もそうだけど、パーティって(だれ)がリーダーになる?」

『オルビス・ナイト』はローカルでもインターネットでも、フレンド同士であれば最大六人まで、パーティを組むことができる。パーティを作成したプレイヤーが自動的にリーダーとなり、他のプレイヤーはリーダーの許可をもらってパーティに入るのだ。

 要は、誰がパーティを作るのかということである。

「私と志音は、オルビス始めて一ヶ月も経ってないんだよね」
「私は二ヶ月前に買ってもらったけど、ちょっと自信ないなぁ」
(おれ)も自信ねぇ」

 北小組は全員やんわりと断ってしまった。

「やり慣れてる弦斗(げんと)でいいんじゃ?」
「そうなの?」
「こいつ、オルビスが日本で発売された初日に、行列に並んで買ってきたガチ勢だから」
「「「ええっ⁉︎」」」

 北小の三人で全く同じリアクションをする。

「……一年くらいはやってるよ」

 少し照れて目を()せ、謙遜(けんそん)する弦斗。

「うちもわりと早くからプレイしてるけど、弦斗はうまいから。じゃあよろしく」
「……分かった」

 数秒経つと、私たちの画面に『パーティが見つかりました』と表示され、『Beat(ビート)』という名前が出てきた。弦斗は意外にもスタンダードでプレイしているらしい。

「……(ぼく)、オルビスでは『Beat』でやってるから」
「分かった、入るね」

 プレイ歴一年で、おそらく課金もしているであろう弦斗のスキンは、それはそれはかっこいいそのものだった。
 どこがかっこいいなぁと具体的に考える(ひま)はなく、弦斗によってパーティ戦が始まった。

「……まずは一対一で」

 スタンダードは、私と志音と弦斗。エイムは律歌(りっか)でワイドは琴音(ことね)
 相手も私たちと同じ五人のパーティだ。しかし、向こうのパーティは強い人ぞろいである。

「うわ、SSとAが三人とBが一人か」

 かたや私たちは、SSの弦斗とAの律歌とBの琴音とCの私&志音である。

『Ready……Go!』

 ステージは五種類からランダムで選ばれる。今回は、ソロプレイのクエストの一番始めに出てくるステージだった。

「始まる位置ってみんなバラバラなんだね」

 チーム戦なので、スタート位置はパーティごとに同じところかと思いきや、全く味方が見えない位置で試合が始まってしまった。
 しかし、視界に入れば味方の名前が表示されるので助かった。

「……Aランク()ったよ」

 さっそく弦斗が一人(たお)してくれたらしい。さすがSSランク……!

「よっしゃ、Bランク倒しといたよ」

 Aランクの律歌も貢献(こうけん)している。だが……、

「うわっ、ちょっとやばい!」

 私の目の前に、見た目からしてSSランクであろう人が現れてしまったのだ。

「おと、どこ!」
「セントラルビルの……あっ」

 連続で攻撃(こうげき)され、HPが一気に(けず)られ、文字通り瞬殺(しゅんさつ)されてしまった。
 (くや)しいことに、私が一番先に倒されてしまったのである。

「うわ、今度はこっちに来た」

 次に(ねら)われたのは、私と同じランクの志音だった。

「ぜってぇこいつSSだろ、強い……あっ」

 どうやら志音もやられてしまったようだ。私と同じような反応をするのは、やはり双子(ふたご)だからだろうか。

「十字キーで他のメンバーを見られるんだ」

 倒されて暇になった私は、『観戦モード』で弦斗の視点に切りかえてみる。目で追うことができないほど(なめ)らかな動きで、少しずつ相手のHPを削っているようだ。
 律歌の視点に切り()えると、(かべ)(かく)れながら攻撃しているものの、今にもHPゲージがなくなりそうだった。

「もうダメかー、ごめーん」

 ついに律歌も、同じAランクらしき相手に負けてしまった。しかし、その二秒後に死角から放たれた一撃(いちげき)で、律歌を()()いた相手も消え去ったのだ。

「律歌、討ち取ったよ!」
「琴音、ナイス!」

 Bランクの琴音がファインプレーをかましていく。倒したり倒されたりの、一進一退の戦いを続けている。

「どうしよう、(はさ)み撃ちされそう」

 律歌のかたきを取った琴音だったが、今度は自分がピンチになってしまう。

「……どこ?」
「シティーホールの裏の道路」
「今行く」

 お(たが)い残りは二人なので、琴音が挟み撃ちされるということは、他の場所に相手がいないということだ。

頑張(がんば)って!」
「なんとかいけるかも……いや、ちょっと厳しいかな」

 私は応援(おうえん)しかできないものの、観戦モードで他の人からの視点で見ているだけで、とてもドキドキワクワクしている。

「……よし、あと一人」

 ()けつけた弦斗の連続攻撃で相手が一人散っていくと同時に、琴音がついに力()きた。

「……来るのが(おそ)かったか」
「弦斗くん、頑張って」

 互いに厳つい格好をした、SSランク同士でのサドンデスに突入(とつにゅう)した。
 琴音の()ん張りのおかげで、相手のHPは三分の一ほど削れている。弦斗が削られたのは四分の一くらいだ。
 琴音が倒された時点で、私たちの画面は自動的に弦斗に視点が切り替わっている。その画面を見ながら、はたまた素早い指さばきの弦斗の手元を見ながら、ハイレベルな戦いを見守っている。

「……うわっ」

 今まで何も動じなかった弦斗。ついに手元が(くる)ったようだ。その隙に三発も攻撃を()らってしまう。

「「やばい!」」「やべっ」「あぁっ!」

 私たち四人はとっさに声が出てしまった。そして――

『You Lose…』

 弦斗が倒された。

「「「「あぁーっ」」」」

 五人同時に落胆(らくたん)の声をあげる。

「弦斗でもムリかー」
「……いや、ミスしたせいだ」
「俺にはどこをどうミスったのか、分からない」

 やれやれと志音が首をひねる。ちなみに私も分からない。

「……バリアを張ろうとして、こっち、Lボタンを()しちゃって」

 流石はSSランク、少しでのミスでも命取りになるようだ。

「でも()しかったし、おとと志音がBランクになったらいい勝負になるでしょ!」
「そうだね、それまでに私はAランク目指さないと」
「それじゃうちはSランクに……いやぁ、それがなぁ」
「「長いよねーぇ」」

 うわぁ、高いランクまでいくとやっぱり大変なんだ。
 初めてのパーティ戦は負けたものの、なかなか白熱したものとなったのだった。
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登場人物紹介

名前:音葉(おとは)

コードネーム:メロディー

年齢:11歳(小学6年生)

性格:どんな人とでも対等に話せる、愛情深い

担当:アルトサックス、GROSKのリーダー

ジョブ:スタンダード


一人称は『私』。志音は双子の弟。北小学校。

アルトサックスがメロディーであり、体力テストでAとBの瀬戸際という理由でリーダーになった。

癖の強いメンバーをなんとかまとめている。

名前:志音(しおん)

コードネーム:オブリガート

年齢:11歳(小学6年生)

性格:面倒くさがり屋、大ざっぱ、やるときはやる

担当:テナーサックス

ジョブ:スタンダード→スプリント


一人称は『俺』。音葉の双子の弟。北小学校。

適応能力が高く、反射神経がよい。

面倒くさいものは姉に押しつける。

名前:琴音(ことね)

コードネーム:ハーモニー

年齢:12歳(小学6年生)

性格:おっとり、気が利く

担当:ピアノ

ジョブ:スタンダード→ヒーラー


一人称は『私』。北小学校。

勉強ができて特に暗記が得意。学校1ピアノがうまいのでよく伴奏者になる。

常に周りを見ており、冷静。

名前:弦斗(げんと)

コードネーム:ビート

年齢:11歳(小学6年生)

性格:真面目、ぼんやり、聡明

担当:コントラバス、エレキベース

ジョブ:スタンダード→エイム


一人称は『僕』。西小学校。

学校1の頭脳を持つが、しゃべり始めるまでにラグがある。

ゲームの腕前はピカイチで、上位プレイヤーなら誰もが知っているほど。

名前:律歌(りっか)

コードネーム:リズム

年齢:12歳(小学6年生)

性格:とにかく明るくアネキっぽい、積極的

担当:ドラム

ジョブ:スタンダード→ワイド


一人称は『うち』。西小学校。

好きな芸人に影響され、エセ関西弁をしゃべる。

見境なく誰にでも話しかけるタイプで、GROSKの活気の源。

弦斗のいわば保護者。

名前:ラックス

コードネーム:コート

年齢:?

性格:正義感が強い、忘れっぽい

担当:情報収集、GROSK補佐

ジョブ:案内役(スパイ)


『オルビス・ナイト』をプレイすると一番最初に出会う猫のキャラクター。見た目は白猫でオッドアイ。

普段は案内猫としてプレイヤーをサポートしているが、裏ではスパイをしているという。

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