大衆文学

エピソード文字数 1,885文字

『ムーンチャイルド』 著:アレイスター・クロウリー


オカルトものはファンタジーに属するかもしれんジャンルやけどとりあえずここで紹介。

そう!あの世紀の大魔術師と呼ばれるアレイスター・クロウリーは小説を書いとったんや!!

舞台は20世紀前半。若く猛々しき魔術師シリル・グレイは、究極の魔術実験として恋人リーザに「ムーンチャイルド」なる神秘的な人間を産ませようとしていた。それを知ったライバル組織「ブラック・ロッジ」は、これまた魔術でグレイとその仲間たちを妨害しようとする……。

君たちは魔術と聞いてどんなものを想像するかね?空を飛ぶ、火の玉を出す、死体を動かす……いやいや、そこは神秘主義者のクロウリー。そんな即物的な魔法なんて出さない。近代魔術というものは、もっと霊と魂に働きかけるものなのさ。

そんな魔術の一例が、「ムーンチャイルド創造のために、妊娠中のリーザを月の要素を詰め込んだ部屋に籠らせて月のようにデブらせる」「アラビアゴムで踏んだものを即座に呪い殺す魔法陣を描くが、術者がアホなのですぐに雨で流される」……なんのこっちゃ!!なんのこっちゃ!!そら積み重なった神秘主義に基づいた理論やろけど、それを忠実に実生活でやってしまうのは正気の沙汰やない!!これ一般人に理解できる世界観やないでぇ……。

慣れてきたらニンジャスレイヤーよろしく「これはこういう世界なのだ」とわかってくる(感覚が狂ってくるとも言う)。そして「アッこいつら別に正義や社会的道徳とかで動いてるんじゃなくて普通にヤバい奴らや」と改めて理解するのだ。

ちなみにクロウリーは『黒魔術の娘』っちゅー短編集も書いてはるけど、ワイはこっちは未読や。

アレイスター・クロウリーだと、確か去年あたりに『麻薬常用者の日記』が復刊して驚いた覚えがあるぜ。

今の時代、クロウリーを復刊しても売れるのかと他人事ながら心配したぜ。

有名カメラマンと孤独な青年の哀切な迷路


紙葉の家
著:マーク・Z・ダニエレブスキー
訳:嶋田洋一
ソニー・マガジンズ

たぶん私が布教したい本ナンバー2くらいかな……(ナンバー1やないんかい!)

かつてスーダンで撮影されたあまりにも有名な写真、「ハゲタカと少女」。
物語の主役は、その撮影者ケヴィン・カーターをモデルにしたと(おぼ)しきカメラマンのネイヴィッドソン。

彼は妻と二人の子供を連れて、アッシュ・ツリー・レーンの〈その家〉に引っ越した。亀裂の入った夫婦の絆の修復に努めるネイヴィッドソンだが、彼の想いを歯牙にもかけず、家は異常性を剥きだしにしていく。

何かがいる気がする、と訴える子供。何度計測してみても、外側より大きな値を示す内部。唐突に姿を現す、あるはずのない廊下への入り口。家はネイヴィッドソン一家を呑みこんで、不気味に膨張を続ける。

一方、身寄りのない青年ジョニーは、孤独死した老人ザンパノの家を訪れて、彼が死の直前まで書き記した膨大な記録に直面する。古いナプキンや切手の裏などに散らばる記録を繋ぎ合わせていくジョニー。それはネイヴィッドソンが入居した〈その家〉の異常性に関するものであった。

〈その家〉の謎と無意味さに憑りつかれ、膨張し複雑化する果て無い闇の中へと身を投じるネイヴィッドソン。
〈その家〉の記録に憑りつかれ、膨大な量の記録の断片を繋ぎ合わせていくジョニー。

二人の過去と現在、幻想と現実を混淆しながら、意味なき地獄が綴られていきます。

これはただの幻想小説ではありません。過去を克服し現在を取り戻そうとするネイヴィッドソンとその家族を描く通俗小説でもあり、ジョニーが生きる道を探そうとする青春小説でもある。


フォントはわざと読みにくいように組まれており、読み解く側は必死になる。無数の紙葉の断片を繋ぎ合わせるジョニーのように。そして難民の少女への罪の意識から逃れようと足掻くネイヴィッドソンのように。

とにかく幻想的な世界観にどっぷり浸かりたい方にお勧めの一冊。

ちなみに私は完読までに1か月かかりました。
既に絶版になっているので、どこかで見かけられた場合はすぐにご購入されることをお勧めします。

一応の分類だと、ポストモダンの作家だな。

日本だと、ポストモダン文学の紹介が遅れているように感じる。

日本で受けてるポストモダン作家はトマス・ピンチョンぐらいか?

実を言えば、お上は古典ばかり読むタイプなのだが、現代の前線も触れなければ国の文学は衰退していくばかりだから、フィリップ・ロス、ジョン・バース、コーマック・マッカッシーあたりはもっと紹介していくべきだと思う。

最近だと、橋本治も亡くなったな

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登場人物紹介

瀧川紅月(たきがわべにづき)


ここの管理者代理。

拙作『頭狂ファナティックス』第一部のメインヒロイン。

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