異世界転生して魔法少女になりたいかい?

文字数 1,845文字

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映画ノベライズブログ(https://inaba20151011.hatenablog.jp/entry/2019/12/19/143202)


 証拠を集めるために、地下室を調べてみる。

 リアナが日記を見つけた。

 俺と美雪は机に置き、



「何が書いてあるんだろうな」

「この家のあるじが書いたものだと思うわ」



 おそるおそる、ノートを開いて、その内容を読んでみた。

 ノートを書いていたのは、萌美という家のあるじらしい。

 小説が書かれていた。

 萌美というかわいい名前だが、すでに60歳を超えていたようだ。

 ノートの内容は、トラックにひかれて異世界に転生した女主人公が、魔法少女となってイケメンに囲われ、ほのぼのとした堕落生活を送る内容だった。

 食っちゃ寝する毎日なので、何がおもしろいのかわからず、ノートの最後まですぐ到達してしまった。

 ノートの最後には、旦那に日記を読まれ、激しい離婚裁判を繰り広げたこと。

 裁判所で日記の内容を公にされ、彼女はこう叫んだ。



『この家に入った者は皆殺しにしてやる!』、と。



 美雪はパタンとノートを閉じ、



「これが呪いの原因なのね」

「マジかよ!!」



 なんか恥ずかしさで言っちゃっただけのような気がするが。

 逆ギレしたい気持ちはわかる。

 俺もネット小説で、少年が化け物に異世界転生して、動物たちと人間たちを食い殺す、メルヘンな小説を書いている。

 見られたら死にたくなる。

 リアナが口元に手をやり、



「そういえば……」

「呪いの原因に思い当たるふしが?」

「この家のあるじは、次々とトラックにひかれているのっ!」

「すげえな。どんだけ異世界に送り込まれてるんだよ。軍勢だな」



 冗談抜きで、呪いというやつが存在するのかもしれない。

 ともかく、それでは証拠にならないので、家に監視カメラと温度感知器付きデジカメを設置することにした。

 霊が出てくれば、撮影するというやつだ。

 機材は美雪が用意していた。

 こういうこともあろうかと、ちゃんと用意していたそうだ。

 あとでAV制作会社に売るつもりらしい。

 鈍いリアナでも意味に気づいたのか、美雪と鬼ごっこして遊んでいた。

 真夜中。

 ソファでうとうとしていると、喉が渇いてきた。

 リアナと美雪は遊び疲れて眠っている。

 コーヒーを飲もうと、台所に行くと、黒い影が廊下を歩いていた。

 老婆だ。

 すうっと、動きがなめらかなので、人間でないことは明らかだった。



『あの男がやったの』



 老婆はそういって、俺を誘うように手招きする。

 萌美、か?

 なぜか会ったこともないのに、そんな気がする。

 俺は誘われるように、老婆についていく。

 階段を上り、部屋に入る。

 大きなタンスがある。

 老婆が手招きしていた。

 タンスを開けると、壁に穴があいていた。

 体をもぐり込ませて、壁の中に入る。

 暗いのでスマホのライトをつけると、きらめく物が置いてあった。

 それを手に取ってみる。

 長いそれは、先端に宝石をちらばせていた。



 ――これは、魔法のステッキ? はっ!



 気配がした。

 人の息づかい。

 それを感じた瞬間、床が抜けて落ちていた。



「ぐはっ!?」



 二階で、床が柔らかかったから、背中から落ちても助かった。

 気配が近づいてくる。

 あわてて起き上がると、ふわりとしたスカートが見えた。



「門平。お主もここにきたのでござるな」



 明かりにあらわれたのは、10代ぐらいの少女だった。

 手には魔法のステッキを持っている。

 フリルのついた変わった服装から予想するに、魔法少女か?



「本当に転生して、魔法少女になったのか!? あの日記どおりに!」



 俺は少女を館のあるじだと勘違いした。



「何を言っているでござる? 拙者でござる。言左衛門でござる」

「……はっ!?」

「驚くのも無理はなかろう。拙者、悪霊に殺されて、転生して、魔法少女になったでござる」



 言左衛門だと名乗る少女は、悔しそうに眉間にシワを寄せる。

 そういえば、言左衛門を大学で見かけなかった。

 江戸時代にタイムスリップしてるものだと思っていた。



「――なんでリアナの屋敷に?」

「聞いてくれるな。これは男の戦いなのだ」



 言左衛門は背中を向ける。

 ようは、犯罪者的な何かをしようとしてたんだね。

 友が罪を犯す前に、死んでくれて良かったと、思ってしまった俺がいた。


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