第10話 聖歌・ミッション

文字数 823文字

 聖ジェルジオ女学園では毎週水曜日に聖歌の時間がある。賛美歌ではなく聖歌と呼ぶらしい。
「聖歌のことは記憶ある?」
 ヨシアさんに言われるが、当然分からない。
 メロディーは聴いたことはあるが、タイトルは知らないし、歌詞は古い言い回しで何を言っているかちんぷんかんぷん。
「いや、よく覚えていなくて」
 とりあえず、歌詞を見ながら歌った。
 歌声は元の自分の声よりも高い音が出たので驚いた。さすが女の子の身体。
「次の歌はラテン語だから難しいかも」
 歌詞にはラテン語にカタカナで読み方が書いてある。
 曲が始まると何だか聞き覚えがある。
 ……あっ! この曲は!
「『エルフェンリート』のオープニングじゃない?
 なんでこの曲が?」
「この歌は海外でよく歌われているらしいわよ。
 海外の縁のある学校から教えてもらったって。
 他の聖歌だとカトリックやプロテスタントで使う歌が違うけど。何でもこの歌はカトリックでもプロテスタントでもないところから産まれたらしくて、どちらでも歌うことができる歌らしいわよ」
「そうなんだ……」
 日本のアニソンが海外の教会で歌われているとは。凄いもんだ。
 タイトルを見ると『LILIUM』と書いてある。この曲、そういう名前だったんだ。
「LILIUMって日本語でユリのことなの。
 ユリの花は、聖母マリア様のシンボルでもあるから教会に合っていると思わない?」
「えっと……そうだね」
 聖ジェルジオ女学園の関係者の人たちは知らないのだろうか。この曲が青年漫画誌原作の深夜アニメのオープニングだったことを。
 深夜アニメだけならいいけど、結構グロい描写もあるR指定がかかるようなものだったりするし。
 あえて教えない方がいいのかな? 黙っていよう。
 そういえば、魂を入れ替えられてから深夜アニメや動画を見ていないな。
 寮の生活は厳しすぎて大変だ。
 早く元の身体に戻りたい。
 約束の日までまだ四日もある。
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登場人物紹介

細石 巌央(さざれいし いわお)


男子校に通う高校二年生

キリスト教の知識はほとんどない

微妙に日本の昔話に詳しい


後藤 伊吹(ごとう いぶき)


ミッション系スクール【聖ジェルジオ女学園】に通う高校二年生

現在は、細石巌央と魂が入れ替わってる最中


園原 芳愛(そのはら よしあ)


後藤伊吹のルームメイト

困っている人をほっとけない性分

記憶喪失(という設定)の後藤伊吹(中の人は細石巌央)に聖書の内容を教えてくれる

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