第77話  染谷龍一視点。染谷家集合 1

エピソード文字数 3,601文字

 ※


 今はマグマグで兄貴と桜さん。そして虎と一緒のテーブルになり、雑談していた。

 つまり黒澤君が帰った後だ。

で? みんなの感想は?
妹ちゃん。可愛すぎるだろ

うんうん。可愛かった~~

翔一さん。私はあんな女の子が欲しいです

俺もあんな妹ちゃん欲しいぜっ! ずっと守ってやりて~~

 妹ちゃんの事ばっかりじゃねぇか。

 まぁ、そういう俺も黒澤君の妹ちゃんは激しく可愛いと思ったし、あんな妹マジ欲しい。


 

 黒澤君の後ろにずっと隠れてて、俺達をまるでモンスターを見るような目で、怯えまくっていた。

 極度の人見知りなのは彼女を見てても分かるし、兄貴のフォローが凄まじかったからな。



 空気を読んであまり喋らなかったが、そんな子に「ありがとう」と言ってもらったのはただただ感動した。時間は掛かりそうだが、なんとか上手く打ち解けたいと思った。



 さて。今日。黒澤君と映画を見に行った話を一度振り返らせてもらおう。

 そっちの方が分かりやすいと思うから。




 ※



 映画館前で黒澤君達と会ったのは偶然だった。マジで俺はジプリを見にきており、彼らに言ったように、一人で入るのに躊躇していた。


 虎と一緒に行こうものなら煩いし、高校生にもなってジプリかよ、そう思われるのが非常に腹立たしいと言うか、俺なりの色んなプライドが映画館へ入る事を頑なに拒否していた。





 そんな時だった。黒澤君と妹ちゃんを見かけたのは。


 そして俺は即座に驚愕したのである。

 と言うのも、その妹ちゃんは間違いなく……楓蓮さんが連れていたあの子だったのだ。



 

 一体どういう関係なのだろう。

 黒澤君とあの妹ちゃんは……


 疑問と同時に、映画館前で立ち止まっていた二人に声を掛け、一緒に映画を見ることになった。


 話をすると黒澤君と妹ちゃんとの関係が、従兄妹だと知ると会話はそこで途切れてしまう。





 そこで俺は初めて、気が付いたのだ。というのも……

  

 黒澤君にそれ以上の話を聞こうにも……


 きっかけがない。


 龍一ではそれ以上の話に持っていけないという事に気付いた。


 

 つまり【龍一では華凛ちゃんの存在は知らない】今日が初めてなのだ。

 それなのに楓蓮さんとの関係を聞くわけには行かない。


 何で知ってるの? ってなるのがオチだろ?


 知っているのは龍子だ。

 龍子ならそのまま黒澤君の関係を聞いた後に「楓蓮さんの妹だよね?」と質問は可能だが……男の姿では聞くに聞けないし、今度は龍子と黒澤君との接点が無くなるので、話しかける事すらできない。


 あの子は間違いなく楓蓮さんの妹なのに……聞けねぇ!


 ぐおぉ~~~! もどかしい。

 目の前に楓蓮さんと繋がる人がいるのに……何も出来ないなんて。




 そんな気持ちのまま映画鑑賞。

 内容なんて殆ど覚えていない。せっかく楽しみにしてたのに、隣で仲良くポップコーンを食べる二人の事ばかり考えていた。




 間違いない。あの子は楓蓮さんの妹なんだ。

 昨日喫茶店で喋ったよね? 



 それなのに。龍一では聞けない。接点が無い!

 あの子が楓蓮さんの妹だという事を龍一の姿で分かれば、そこから会話が繋がるのに。


 お姉さんである楓蓮さんを喫茶店で見かけた事がある。

 そう黒澤君に言う事ができる。そうすれば、それ以上の話をする事が出来るのに。


 くっそ~~~。どうすりゃいいんだ?


 今ここで龍子になりてー気分だが、出来るわけ無いし、妹ちゃんを知る人間がいれば……




 あっ。そうだ!

 と、そこで虎の顔が浮かんだんだ。


ごめん。ちょっとトイレ行って来る
 俺は上映中真っ只中、スマホを握り締めて部屋を出た。

だからお前がやるのは、偶然を装って出てきてから

この妹ちゃんを知ってる。楓蓮さんの妹だよね? それだけ言えばいいんだ

ほんとにそれだけでいいの?
あぁそれだけでいい。後は俺がやるから。今すぐ来い!

 頭の悪い虎に仕込むのは相当時間を費やしてしまった。

 


 今からだと映画の上映が終わってしまう。

 このまま帰られては……何とか繋がないと。

わかった。マグマグに来い。そこに二人を引っ張るから。

ついでにマグマグ奢ってやるから早く来い!

マジ? ひゃふぉ~~~!

まっとけ龍兄ぃ! 助けにいくぜ!

 こういう所は単純な弟で良かった。そう思った。



 そしてマグマグに二人を誘い、虎が来て俺の指示通り動いたのはいいが、何故か翔兄貴や桜さんまで来るハメに。


 恐らく虎が言いふらしたのだろうと思った。

 龍兄ぃがピンチだ。とか言ってたんだろ? どうせ。



 突然の兄夫婦襲来でビビったが、そのままアドリブでやり過ごし、結果的に黒澤君と楓蓮さんが従姉弟だという事も判明。



 取りあえず。楓蓮さんに一歩近づいた気がした。



 ※



で? お前。これからどうするんだ?

 と、翔兄貴。コーラ五杯目だぜ。

 セットも三人前だし、どれだけ食べるんだよって話だが、それどころじゃなくって、

何とか黒澤君繋がりで、聞けるだけは聞きたい。

そこから改めて紹介してもらえれば……

 その為に、こうやって虎も呼んだ訳だし、まさかこんな近くに楓蓮さんと繋がる人間がいるなんて思わなかった。


 こんな事なら、オムライサーなんてやるんじゃなかった。

 などと思っていると、翔兄貴は少し難しそうな顔になると、俺の方針に難色を示す。

そりゃ難しそうだな。多分ダメだろう
え? どうして?
私もそう思います。龍ちゃん。彼の目とか表情見てた?

そりゃ……見てましたし、俺には普通に見えましたが

 桜さんの説明だけでは疑問だらけの俺に、翔兄貴が補足してくれる。

 多分、お前には普通に見えたんだろう。

 だけどこっちのテーブルで見てた限り、かなり慎重に話していたし、目に迷いがあったり、お世辞にも普通には見えなかったな

えっ?

そうね。もしかして龍ちゃんの好きな彼女とは……

親戚でありながらあまり知らない。もしくはあまり仲良くないと言うか、そんな感じにも見えました

そんな……信じられない
 思わずそんな言葉が出てしまった。

いや。まだ分からんぞ。外面と家族で見せる顔なんて色々あるからな。

ただ、家族の事を喋るのはあまり好きじゃない印象を受けた

そうね。家族でも色々ありますから。

複雑な家庭環境なのかもしれません。染谷一家みたいにね

そうだな。桜姉さんの言う通りだ

 虎は同調せんでいい。どうせお前は分かってないだろ。


 複雑な家庭環境か……

 それなら喋りたがらない理由も分かるし、それは俺達染谷一家も良く分かっている。

慎重に行くなら。あの友達から聞き出そうとするのはちょっと待ったほうがいいな。

彼女の話題は小手出しにして、様子を伺った方が良いかもしれん。ちゃんと顔色を見とけ

あまりにしつこく言われると、彼自体が龍ちゃんから離れるかもしれないし……

 それは困る。

 黒澤君は学校でも一番仲の良い友達なんだ。


 やたら波長が合うし、ケンカも強そうだし、喋ってても普通に楽しい。

 今まで気の合う奴もいたが、ここまでシンクロするのは、黒澤くんが初めてなんだ。


分かりました。こちらからはあまり話題を出さないようにします

 せっかく楓蓮さんに近づいたと思ったのに……


あと……翔兄ぃ。


龍一や龍子が親戚とまで話してしまいました。すみません

ふはっ! そんなこと気にすんなよ。

俺達家族が辻褄合わせりゃいいだけだろ? 


そうよ龍ちゃん。

みんな。あなたの味方じゃないの。

ありがとうございます……

まぁ今回の件は、あまり突っ込まない方がいい。それが賢明だな。


あの子だって、もし姉さんの事を喋りたいなら向こうから振ってくるだろうし、教えたくない事なんて一々喋らないだろ?

ふふっ。そうね。翔一さんもず~~~っとそうでしたし

 しょうがない。こちらから攻めるのは待っておこう。



 それともオムライサーで楓蓮さんを直接攻撃するしかなさそうだ。



 でもなぁ。オムライサーには弱点がある。

 と言うのは、楓蓮さんの出勤日。水曜日は平日であり、俺は学校を早退しなけりゃ夜に龍一になれない。そんなデメリットがあるのだ。なのであまり多用はできない。


 土曜日は楓蓮さんと龍子がバイトで被るだけに、あまり休みたくない。


 それに。楓蓮さんが出勤する日ばかり狙うと言うのも、かなり目立つし。


 現に魔樹や白竹さんには、ほぼバレてるし。

だけど、こんな話してると……懐かしいな

そう思わないか龍一。

俺も……お前に頼んで、色々裏で動いてくれてたよな?

……はいっ

 俺も翔兄貴のヘルプに飛んでいったもんだ。

 時には龍子で偶然を装い、桜さんに会いにいったりしてた。


 そりゃもう染谷家総動員で……兄貴を助ける為に、併走したもんだ。

 まぁあの頃の虎は、何の役にも立たなかったが。





 だけど。今日の働きは良かったわ。マジで。

 

 兄貴夫婦を呼んでくれなければ……

 俺はそのまま黒澤君にアタックしてた。そう思うと、虎が勝手に呼んだのは正解だったのかもしれない。

 

――――――――――――


次回 染谷龍一視点。染谷家集合 2



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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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