レイニードライブ:透哉と睦月 

文字数 450文字

「ドライブ、誘ってくれてありがとう」
 マンションのエントランスで雨を避けながら、睦月(むつき)は濡れたビニール傘を折りたたむ。
「雨の夜にドライブなんて危なっかしいけど、夜景がいつもより綺麗だったでしょ?」
 その隣では、透哉(とうや)がジャケットを脱いで雨粒を振り払っていた。
「うん。ドライブ中に聞いてた曲も雰囲気に合ってた」
 カードキーを取り出しながら睦月は返事をする。
「良かった。また都合があったら、ドライブしようね」
 透哉は向き直ると、睦月の額に唇を押し当てる。
「おやすみ、睦月」
 睦月も同じように透哉の額に口付ける。
「おやすみなさい、運転、気をつけてね」
 睦月はカードキーを認証させると、エレベーターホールへ向かう。
 透哉はその背中を見送ると、エントランス外に駐車した愛車を解錠させる。
 ジャケットを後部座席に放り投げて、運転席に乗り込んだ。
 エンジンをかけると雨上がりに合う曲が流れはじめる。
「さあ、帰ろう」
 そう(つぶや)いて、ドライブを再開した。
(終)
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