第5話

文字数 533文字

 その日以降、毎日わたしはじょうろを持ってミイ姉ちゃんに会いに行くようになったし、本当に毎日、二人でキイチゴにお水をあげていた。
 公園にある水道の蛇口でじょうろに水をいれ、キイチゴに水をまき、時たまキイチゴをつまみ食いする。ミイ姉ちゃんと一緒に過ごす夏休みは、ひな鳥の出来事の後も相変わらず楽しかった。
 ただ、ひな鳥の事件のあと、今までと変わったことが起きた。ミイ姉ちゃんがぽつりぽつりと、小学校でのことを口にするようになったのだ。
 国語の時間に朗読を率先して大きな声で上手に読んだ話、とか。
 図工の時間に描いた絵が、しばらく校長室の前に飾られた話、とか。
 体育の時間のドッチボールで、最後まで残って男子とボールを投げあって、勝った話、とか。
 わたしはどの話を聞いても、純粋にすごいとミイ姉ちゃんを尊敬したし、やっぱりミイ姉ちゃんだと誇らしい気持ちにさえなった。
 ただ、少しだけ気にかかったのが、どれだけミイ姉ちゃんの小学校の話を聞いても、ミイ姉ちゃんの口から友だちの話を一切聞かないことだった。
 不思議に思うときもあったが、些細な疑問は楽しそうに赤く光るミイ姉ちゃんの前ではあっという間にかき消えてしまって、結局わたしからミイ姉ちゃんに疑問を投げることはなかった。
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