第4話

文字数 373文字

それから教室で、休み時間になると早紀は友達から離れて窓際でミステリー小説を読み出すことが多くなった。
恐らく「ミステリアスな女」をアピールしているのだろうが、そんな見え透いた方法に引っかかる奴なんていないだろ、と聡は鼻で笑う日々だった。
しかし、祐輔は引っかかった。

「なぁ、山内さんっていつもあそこで本読んでて神秘的だよな?黒髪綺麗だし」
「えっ?!あぁ~……」
「昔からああいう感じなの?」
「え……まぁ~どうかな……そうかもな……」

もっとアシストしてやりたかったが、どうしても本来の裏の顔を知っているので、聡はモゴモゴと口篭る。ハッキリしない聡に、祐輔は「ふ~ん」と平坦な返事をし、「ちょっと話しかけてくるわ」と早紀の元へ一直線に向かった。

信じられないことが起きてるかもしれない――。

祐輔越しに目が合った早紀と聡は、その時ばかりは同じ気持ちを共有した。
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