第3話 彼との出会い

文字数 2,997文字

 私は今、オセロニア世界での駒を使ったバトルを勝利の女神ヴィクトリアに教えてもらっている。クラスマッチと呼ばれる戦いがこの世界にあるらしい。そこには「イロイロな対戦相手がいるから、情報を手に入れられるかもしれないですわ」と教えられたから・・・。私は今すぐにでも、元の世界へ帰りたい。でも、その方法を知らない。
 だから、戦いの道を選んだ。幸いにも、彼女は駒をたくさん持っていたので、デッキ作りは苦労しなかった。問題は駒の置き方。定石なるものがある。取りあえず、風車とC打ちだけを覚えた。他にもあるが、私が操るのは神デッキ。しかも、蘭陵王をリーダーに決めたから、それだけでいいような気がしていた。

 回復耐久や毒耐久も魅力的だったが、時間がかかるのはちょっと困る。私は極度のあがり症だった。
 (観客の前でバトルなんて、できるのかしら?)
 そちらの方が心配。
 「ねえ、ヴィクトリア。ヤッパリ、私には無理よ」
 「臆病風に吹かれましたの?」
 「私はあがり症なのよ」
 「対策は考えていましてよ。はい、これ」
 紙の袋を受け取った。開けてみるとピンクのマスクだった。
 (・・・? 私に?)
 それをかぶった。
 (えっ、何?)
 身体の奥から力がみなぎる。まるで、変身したかのようだ。私が主人公である、戦いの物語は今、始まった。フードの付いたコートを羽織った。
 (これなら戦えるわ)

 薄暗い通路と階段を歩き、コロシアムの舞台にあがった。観客は私と対戦相手を見ていた。今日の相手は筋肉ムキムキの男。
 (見ているだけで、暑苦しい。速く倒さなければ)
 私は見せかけだけの人は嫌い。
 (やはり、男は中身を伴わないとね)
 相手は私のヨワヨワしい姿を見て、威かくをしてきた。
 (早速、仕掛けてきたわね)
 猫の姿は意外と使えるかもね。おびえたフリをした。
 (さて、これくらいでいいかしら)
 相手は勝ちを確信した顔をしていた。
 (ごめんなさい。勝つのは私よ)
 ブロンズクラスはコスト140。基本、A駒とB駒を使って戦う。
 今日の作戦はシールドとデバフで耐えながら、エンデガでフィニッシュです。
 私は以前、エンデガを説教した。
 ヴィクトリアとのバトルが終わった時、あまりにもワガママな態度にガマンができなかった。
 「ちょっと、エンデガ。何で勝手に早番するのよ」
 「そんなこと知らないよ」
 「あなたは体力50%切ってからが、腕の見せ所でしょう。早番は、しないで。いいわね」
 「・・・」
 返事は無い。協力する気は、ないのかしら?
 (何で?)
 これはチーム戦なのよ。チームの和を乱さないで欲しい。それ以降、エンデガはナゼだか、早番をしなくなった。
 ブロンズクラスでは、エンデガ頼みなんだからね。頼んだわよ。私に協力してね、エンデガ。

 対戦相手は竜デッキだった。A駒で貫通攻撃できる駒を相手は持っていない様子。私のシールドやデバフを突破できないでいた。やがてお互いの体力が風前の灯となった。
 (さぁ、出番よ。エンデガ)
 「君のことは忘れるまで、忘れないよ」
 エンデガは対戦者の前でそう言った。私の勝ちだった。
 (よくやったわ、エンデガ。その調子で頼んだわよ)
 その後もエンデガの力で勝利を積み重ねた。ブロンズクラスを楽々と、突破した。係りの者から、シルバークラスの証しを手にいれた。
 私のチーム名は「シャット ブロンシュ」。フランス語で「雌の白猫」と言う意味です。
 「そのままじゃないか」と言わないでください。
 私なりに考えたのですから・・・。泣きますよ。

 私はある日、未来の旦那様と出会った。その時はなんとも思っていなかった。彼はただの黒猫だった。
 でも、気になっていた。コロシアムで、仲間達と一緒に戦っている彼のデッキは竜だった。私と違って、堂々と戦っていた。チームワークは抜群だった。お互いを信頼している感じが伝わってきた。
 (何なの? あの黒猫)
 コロシアムで、彼は人気があった。マイクパフォーマーはひいき目と思えるほど、彼の戦いぶりに酔っていた。私は彼の戦いをメモに取り続けた。あっという間にゴールドクラスの証しを手にいれていた。彼は一度も負けていなかったのよ。
 (強いわね)
 彼のチーム名は「シャ ノワール」だった。
 フランス語で「雄の黒猫」。
 (私と同じ立場なのかしら?)
 奇しくも、フランス語のチーム名。何か運命的なものを感じた。
 (いずれ、彼と戦うことがあるかもね)

 私は頑張った。クラスマッチを勝ち上がった。
 (彼と戦うんだ)
 その一心で戦った。ある日、願いが叶った。
 勝った方が、プラチナクラスの証しを手にいれることができる戦いで彼と対峙した。
 白猫対黒猫。猫同士の対決。
 舞台は盛り上がった。私は彼の試合をすべてメモに取っている。彼は私のことなんて、眼中にないだろう。すべて勝つつもりで戦っている。自信にあふれた顔をしていた。
 私の作戦はデバフを多く使い、攻撃力を抑えること。そして、ジークフリート、エンデガでフィニッシュです。
 (私にも意地はあるわよ。簡単には、負けないんだから)
 試合開始。今日の私は勝利の女神に愛されていた。
 黒番、先攻。
 (さぁ、行くわよ)
 私は作戦通り、デバフの駒を投げた。シールドの駒を投げた。そんなことで、彼はひるまなかった。真っ向勝負を挑んできた。
 (な、何なの?)
 彼の姿が大きく見えた。私は今、プレッシャーを受けていた。見えない圧力に、押しつぶされそう。
 でも、私のデッキが答えてくれた。状況を決定づける駒を引いてきた。ファヌエルを投げた。彼の顔色が変わった。「何でここで」と言いたげだった。それでも彼は勝利をあきらめない。最期まで攻撃をしてきた。
 (さすがね)
 彼に勝つための駒がきた。ジークフリート。
 「これで、終わりだ」
 ジークフリートが彼に引導を渡した。
 「ありがとうございました」
 お互いにあいさつをした。彼は震えながら、舞台を降りた。私も係りの者からプラチナクラスの証しを受け取り、舞台を降りた。

 (次の戦いをどうしようかな?)
 壁にすわって考えていた。その時、彼が話しかけてきた。突然のことだった。彼は面白い黒猫だった。私は久しぶりにお腹を抱えて笑った。この世界に来てからは、初めてだった。
 ピンクマスクのこと。ジェンイー、デネヴのこと。
 彼は忘れないようにじーっと聞いていた。
 (彼はメモを取らないタイプかしら?)
 どれ程、彼と話しただろうか? 時が経つのは早い。楽しい一時だった。私はヴィクトリアが「帰りますわよ」と言うので、小走りでその場所を離れた。

 私が帰った後、彼は連勝して、プラチナクラスの証しを手にいれた。後日、話した時に教えてくれた。

 彼の名前は「オテロ」。「この世界を仲間と一緒に冒険している」と言った。
 (この世界は怖くないのかしら?)
 彼は勇気があると思えた。私は無理よ。仲間に守られないと何もできない。この世界では、明日の命が保証されていないから・・・。あぁ、元の世界へ帰りたい。
 (オテロ、私を助けて・・・)
 私はこの時、彼に恋をしたのかもしれない。
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