第27話 女官の真似事
文字数 1,525文字
結局、あの毒草の影響が抜けるのに、七日間もかかってしまった。
私は相変わらず、フレデリックの執務室にいる。
ただ、フレデリックのお膝の上では無く、書類の運搬係をしているのだけど。
他の文官の方々から預かった書類を、陛下に渡すだけの簡単なお仕事だ。
まぁ、いてもいなくてもいい……と、言うか邪魔?
陛下が怖い文官の方々からは、感謝されているけど。
あの毒草からフレデリックを遠ざけたかったのと、毒草を持ち込んだ人間の特定。
結局、未だに持ち込んだ人間の特定は出来ていない。
あの時、体調を崩さなければ……と、思わないでもないけど、終わった事だ。
他の方の執務室にも行くので、護衛にバシュレ・アルベールが就いた。
大臣たちとの謁見の時に、クライヴと共にいた男の人、褐色の髪を短く切り、文官と言うよりは武官と言った感じの風体だと思う。
「フルマンティ宰相の執務室でございますか?」
フレデリックから書類を取りに行くように依頼を受けた。
フルマンティ宰相は、重要な書類を扱う事が多いことから、今まで人任せにせず、自分で書類を持ってきている。私に任せてくれるかしら。
「ああ。書類を取りに行くという名目で、少し部屋の中に入ってもらえないだろうか。今作成している書類は、そんなに重要ではないから。行ってもらえるか?」
フレデリックは、頼むように言ってくる。命令してくれても良いのに。
「かしこまりました、陛下。行ってまいりますわ」
私は他の女官と同じように礼を執った。女官服ではないけれど。
フレデリックは、宰相を疑っているのかしら。
確かに宰相は、事あるごとにフレデリックの案に反対意見を出し、進言をしている。
仲はあまり良くなさそうだけど……。
宰相の執務室の前に着いた。アルベールが扉をノックしてくれる。
「セシリアです。陛下の命令で書類を受け取りに参りました」
扉を開けようとしたら、中から扉が開いた。
宰相は中年の男の人だけど落ち着きがあって格好良い。ダークブラウンの髪も落ち着いて見える要因かも。私を見て、にこやかに笑ってくれる。
「これはセシリア様。ご足労痛み入ります。書類が出来次第こちらからお持ちしようと思っておりましたものを」
そう言いながらも中に入る様に促してくれる。
私の後に続いてアルベールも部屋の中へ入って来た。
宰相の執務室は、綺麗に整えられ、全く毒草のにおいはしない。
各執務室に備え付けられているソファーに座って待つように言ってくれる。
「私は女官として来ておりますので、お気遣いはいりません」
私の寝室に来ていた女官たちも誰一人座って待ったりはしていなかった。
それに、毒草を使われたら立てなくなってしまう。
「そうですか。それでは、しばらくお待ちください」
宰相は、そう言って書類作成に戻って行った。
自分で立って待つと言ったものの、ヒールの付いた靴で立ちっぱなしは結構辛いかも。
私が自分の足の痛さと闘っているうちに書類が出来たようだ。
「さて、陛下に頼まれた書類はこれで全てですが、持てますか?」
「大丈夫です。ありがとう」
アルベールの任務は、私の護衛だ。だから、持たせられない。
何よりも、数日間、陛下のお膝に座ってすり寄っているような仕草をしていた私の評判は地に落ちている。
甘えている場合では無いのよ。
そうやって意地を張り、書類を受け取って廊下に出た途端、足がふらついてこけてしまった。
書類が廊下にばらまかれてしまっている。
陛下と仲の悪いかもしれない宰相の前で、私は思いっきり失態を演じてしまっていた。
私は相変わらず、フレデリックの執務室にいる。
ただ、フレデリックのお膝の上では無く、書類の運搬係をしているのだけど。
他の文官の方々から預かった書類を、陛下に渡すだけの簡単なお仕事だ。
まぁ、いてもいなくてもいい……と、言うか邪魔?
陛下が怖い文官の方々からは、感謝されているけど。
あの毒草からフレデリックを遠ざけたかったのと、毒草を持ち込んだ人間の特定。
結局、未だに持ち込んだ人間の特定は出来ていない。
あの時、体調を崩さなければ……と、思わないでもないけど、終わった事だ。
他の方の執務室にも行くので、護衛にバシュレ・アルベールが就いた。
大臣たちとの謁見の時に、クライヴと共にいた男の人、褐色の髪を短く切り、文官と言うよりは武官と言った感じの風体だと思う。
「フルマンティ宰相の執務室でございますか?」
フレデリックから書類を取りに行くように依頼を受けた。
フルマンティ宰相は、重要な書類を扱う事が多いことから、今まで人任せにせず、自分で書類を持ってきている。私に任せてくれるかしら。
「ああ。書類を取りに行くという名目で、少し部屋の中に入ってもらえないだろうか。今作成している書類は、そんなに重要ではないから。行ってもらえるか?」
フレデリックは、頼むように言ってくる。命令してくれても良いのに。
「かしこまりました、陛下。行ってまいりますわ」
私は他の女官と同じように礼を執った。女官服ではないけれど。
フレデリックは、宰相を疑っているのかしら。
確かに宰相は、事あるごとにフレデリックの案に反対意見を出し、進言をしている。
仲はあまり良くなさそうだけど……。
宰相の執務室の前に着いた。アルベールが扉をノックしてくれる。
「セシリアです。陛下の命令で書類を受け取りに参りました」
扉を開けようとしたら、中から扉が開いた。
宰相は中年の男の人だけど落ち着きがあって格好良い。ダークブラウンの髪も落ち着いて見える要因かも。私を見て、にこやかに笑ってくれる。
「これはセシリア様。ご足労痛み入ります。書類が出来次第こちらからお持ちしようと思っておりましたものを」
そう言いながらも中に入る様に促してくれる。
私の後に続いてアルベールも部屋の中へ入って来た。
宰相の執務室は、綺麗に整えられ、全く毒草のにおいはしない。
各執務室に備え付けられているソファーに座って待つように言ってくれる。
「私は女官として来ておりますので、お気遣いはいりません」
私の寝室に来ていた女官たちも誰一人座って待ったりはしていなかった。
それに、毒草を使われたら立てなくなってしまう。
「そうですか。それでは、しばらくお待ちください」
宰相は、そう言って書類作成に戻って行った。
自分で立って待つと言ったものの、ヒールの付いた靴で立ちっぱなしは結構辛いかも。
私が自分の足の痛さと闘っているうちに書類が出来たようだ。
「さて、陛下に頼まれた書類はこれで全てですが、持てますか?」
「大丈夫です。ありがとう」
アルベールの任務は、私の護衛だ。だから、持たせられない。
何よりも、数日間、陛下のお膝に座ってすり寄っているような仕草をしていた私の評判は地に落ちている。
甘えている場合では無いのよ。
そうやって意地を張り、書類を受け取って廊下に出た途端、足がふらついてこけてしまった。
書類が廊下にばらまかれてしまっている。
陛下と仲の悪いかもしれない宰相の前で、私は思いっきり失態を演じてしまっていた。