11. 笑顔のひとりごと。逢いたい時に逢おうよ

文字数 1,123文字

お久しぶりだね、元気にしてたかな?逢えない間、寂しかったけど、君には君の大事なことがあるんだろうなって、それらがうまくいくようにと願いながら過ごしていたよ。結果がどうであったかは聞かないよ。充分にやってきたこと、ぼくは知ってるもの。

本当を言うとね、ずっと一緒にいられるのが最高だけど、そんな気分じゃないときもあること、ぼくは知ってるよ。いいんだよ、無理に合わせなくて大丈夫なの。君の心のご機嫌、風向き、都合にあわせて、逢いたい時に逢うのがいいと思うな。

呼んでもらえれば、喜んでそばにいるよ。朝でも、夜でも、ひとりの時も、みんなの時も。ぼくは時に安らぎで、時に喜び、応援にもなり褒め言葉にもなる。そうだ、愛してる、にもなるかな。

それと同じくらいの頻度で、ひとによっては高確率で、ぼくはいがみ合いを回避する緩衝材であり、“大丈夫”の言葉を言う勇気、君を追い立てるプレッシャー。そして、涙を隠すヴェール。

ぼくは何にでもなれる。一緒にいるひと、それを見たひとによって、意味を変えることができるよ。でも、だけど、本当を言うとね、君の涙を隠す役目は、とっても悲しいの。



ぼくはそばで見てきたよ。君の心に宿った不安、疑心暗鬼、自己欺瞞。みんなは君を不幸にさせたかったわけではなく、君を守る防護服、いわば厚手のコートみたいなもので。この世界には、君みたいなひとだけでなく、とげとげしいひとも、いるみたいだから。全てを背負わないように、重めのコートで守ってくれているのかもしれない。

過去に紡いだ時間を結って頑丈になっていくコート。心を痛める度に上質になり、ひととの触れ合いによりデザインは変化し、君ぴったりになってゆく。そうだよ。過去の全てが、君を守ってくれてるの。その中には、君が目を背けたくなるような記憶もあるでしょう。根こそぎ焼却したい後悔もあるでしょう。ひとには言えないようなことだって。それら全てを共有する必要はないと思うし、なかったことにしてもいいと思う。そしてそれらはもしかしたら、小さな星の刺繍になって、コートのどこかを飾っているかもしれないね。ぼくには、それが見えるよ。


無理に笑わなくていい。相手に合わせすぎなくていい。我慢しすぎなくていい。素直になっていいの。ぼくは知ってるよ、みんなが調和の中で幸せに包まれますようにという、純粋な、君の願い。



もしもいつか、重いコートがいらないと感じたら、一緒に春を迎えようよ。君が望むタイミングで、春に逢いにいこうよ。脱いだコートは風の中に飛ばしてみたらいいと思う。きっとお空が優しく受け取って、追い風にして返してくれるから。

ぼくは今から楽しみ。君と、春を過ごす日が。君は、どうかな?もしよかったら、教えてね。

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