第2話 登校初日!

文字数 2,317文字

 翌朝、7時に目が覚める。
眠い目をこすりながら一階へ降りると、食事の支度をしているママと、新聞を読んでいるパパがいた。パパは東証一部の企業に勤めている、エリートサラリーマン(らしい)が最近はテレワークで家にいることが多い。口には出さないが、年収にかなり影響が出てるらしく、明らかに元気がない。
おはよう、パパ。
おはよう。ナツ、なかなかその制服似合ってるじゃないか。
うん、ごめんねパパ。無理言って私立の学校に入っちゃって。
ははは。気にするな。お父さんはこんなこともあろうかと色々と考えはある。
そうよ。すみれちゃんと一緒の学校に入りたかったんでしょ。
うん……ありがと。
 私はパンパンと頬を叩いて気持ちを切り替えた。
入学初日から陰キャモードでは、幸せが逃げて行ってしまう。
猫を被ってでも、明るくJKらしく振舞わなければ、平凡な日常を送ることすらかなわない。
ピンポーン。

家のチャイムが鳴る。
すみれが迎えに来たのだ。
ナツ! おっはよー。
 私はすみれとハイタッチをする。
すみれは、陽の者というか陽キャなので、私もスミレと一緒にいる時は結構引っ張られるというか陽キャを演じられる。

 私たちが今日から通うたいあっぷ学園は、電車に乗って5駅先の所にある。

家から通えなくもないが、学校の方針でここは全寮制だ。


 たいあっぷ学園とはその名の通り、学園の生徒が企業に営業をかけてたいあっぷ案件をゲットするという方針の学校だ。
まあ簡単に言えばタレント養成学校みたいなものだ。
ちょっと変わってるのは、企業案件だけでなく、生徒同士でもたいあっぷすることが義務付けられている。例えるなら、お笑い学校での相方探しみたいなものか。

 最寄り駅から降りると、目の前には巨大な学園の敷地が広がっていた。
学園の西側には公園と池が、東側にはおそらく寮であろう4階建ての建物。
そして敷地の最奥には洋風のお城のような棟が。

すごい。
うーん、これがたいあっぷ学園かー。とりあえず校門で写真でも撮る?
いいね。
 校門前では他の生徒たちも写真をパシャパシャ撮っていたので、適当な人に頼んで
私とスミレのツーショットを撮ってもらった。

 その時だった。縦長の黒塗りの車(おそらくリムジン)が校門前に停車する。
運転席から黒服の男が出てきて、後ろのドアを開ける。
中から出てきたのは、圧倒的オーラを醸し出した銀髪の絶世の美少女であった。

あ。もしかしてあの娘が白銀エリイ?
そうじゃない?
 超有名人のオーラに吸い寄せられるように、白銀エリイはあっという間に野次馬に囲まれた。
これでは近づきたくても近づけない。
というか白銀エリイも校門の中に入れなくて困ってそうだ。
すみれ。ここはいっちょアタックしてくる。
おー、頑張れー。
 私は群衆目掛けてダッシュし加速すると同時に跳躍して、野次馬の頭上を軽々と飛び越えた。
「キャー! エリイ様ああああ!!」
 生徒やら私服のエリイの追っかけやらに四方を囲まれたエリイは、黒服に周囲をガードされつつも立ち往生していた。

 私は空中でエリイを目視すると、ちょうどエリイの真後ろに着地するように姿勢を制御する。

 地面に降り立つと同時に私は有無を言わさずエリイを抱きかかえる。
そしてジャンプしてリムジンの上に飛び乗ると、そこからさらに跳躍して校門の外壁に足をかけ、校舎の敷地内に降り立った。
あっけにとられる野次馬たちを尻目に、私はエリイを抱きかかえたまま校舎の手前まで全力で走り抜ける。

ハアッ、ハアッ。ここまでくれば大丈夫でしょ。
あの、降ろしてくれませんか?
あ、はいはい。
 私とエリイは向かい合う。うーむ、可愛い。芸能人には興味ないが、確かに圧倒的存在感というか、一般人とは明らかに何かが違う。
私、高尾ナツ。よろしくね。
 手を差し出すが、エリイは無表情で握手を拒否る。
私たち初対面だけど、なんか運命を感じない? よかったら私とたいあっぷ……。
お断りします。
ええ? じゃ、じゃあまずはお友達に。
嫌です。
じゃ、じゃあサインちょうだい。
ダメです。
そんなあ……。
あなた、常識とか想像力というものに欠けてますわね。下心丸出しで近づいてきて、なれなれしく友達になりたいと言ってきて、はいそうですかと応えるとでも思ってますの?
い、1パーセントの可能性くらいは……。
0パーセントですわ。とにかく、今回の無礼は私は忘れることにします。あなたはこの学校でうまくやっていきたいなら、もう少し立ち振る舞いを考えることですね。
 エリイはそう言うと、校舎内へと入って行った。
……もしかして私、やっちゃった?
ナツ。どうだった? 白銀さんと友達になれた?
……なんかすごく嫌われたみたい。
そっか。
敗因はなんだと思う?
うーん。陰キャ特有の押しの弱さ?
それ? やっぱそれ?
パリピだったら、しつこくぐいぐい押しまくって、強引に友達になれるよ。
ちきしょー、パリピめ! ウェイウェイ言ってるだけの脳筋野郎がああああ。
 私は脳内に飼っている架空のパリピに恨みをぶつけた。
うん、こういうのは良くないね。分かってるけど、陰キャはパリピが嫌いなので、
日々脳内パリピに暴言を吐いてるのだ。

 とりあえず私はとりあえずななみにリプを送った。

メンゴ! 白銀さんに嫌われた!
え? 何やらかしたの?
ま、まあ色々と……ゴメンね。頼りないお姉ちゃんで。
いいよ。そこまで期待してなかったし。むしろ嫌われるとか逆に凄いよ!
 妹によくわからない励まされ方をされる私。
よくできた妹を持って私は幸せだ。
ナツ、そろそろ入学式が始まるよ。講堂に行こう。
そだね。
 高校デビューには見事失敗したが、それでも私は生きなければならない。
私はすみれに慰められながら、講堂へと足を運んだ。
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登場人物紹介

高尾ナツ

槍ヶ岳すみれ

白銀エリイ

天下茶屋紅丸

五十嵐シロップ理事長

黒服

茶羅一茶

挟稀

高尾ななみ

ナニモシナイマン

サンドイッチ

バーガー

ホットドッグ

タコス

グレックス将軍

魔王

女神ちゃんぽん

ソフィア

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