カマキリ大明神

文字数 457文字

自室で読書をしていた
パタンと本を閉じて

ふと、畳に目をやると
そこに小指の爪ほどの虫がいた

叫びそうになった
大人なのに 虫が本当に苦手だ

俺は新聞を探して それを丸めた
小さな虫を、丸めた新聞で ちょんとつつくと
虫は新聞の端にしがみついた

俺はそのままゆっくりと
窓から虫を逃してやった
ほっとして 眠った


夢を見た
和服を着た 身の丈は俺より大きな
カマキリがいた

もう、泡を吹いて倒れるかと
思った矢先に カマキリは喋りだした
大いに 俺を褒めたのだ

なんと清い心か
なんと素晴らしい男か
あんなに小さな命を
あんなに丁寧に扱うとは

あの虫を 殺さなかったことを
褒めてくれているらしい

カマキリは“望みを言え“と言った
なにか、叶えてくれるらしい

どうせ夢だし
あの虫だって、潰すと後始末が嫌だった事もあるし
カマキリも、あまり好きじゃないし
“何も要りません“というと

さらにさらに、カマキリは唸った
なんと、なんと、なんと、
素晴らしいのだ。
きっと、きっと、きっと
良い事があるぞ

起きた。
変な夢だった。
しばらくして 開けっぱなしの窓から
大量のバッタが飛び込んできた






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