怒り刑事 碇

文字数 1,289文字

 「そもそも怒りとはなんでしょう?なんで腹が立つのでしょう?自分の思い通りにいかないから、腹を立てて、怒る?何からの危害、損害を加えられたから怒る?この辺りまでは理解ができます。しかし現代の怒りはもっと異質なものが殆どです。一つは妬み。美男美女や、お金持ちが楽しそうにしているだけで、何も持ってない自分に対する嫌がらせと思ってしまう。これは何故かといえば「人は平等です。」といった、まやかしの教育が施されたからの結果です。現実には世の中に平等なんてなく、差別と偏見に溢れて理不尽なのです。なにせ世界は暴力によって支配されているから。強い力を持っているものが、上に立つのです。それを言葉に出さず、空気で理解しろと世間はビニール袋のように隙間なく包み込んできます。とても息苦しいですね。そういった世の中だから、正義による怒りというものがあります。直接危害は加えられてないが、理不尽に虐げられている人を見て、その原因となるものに対する怒りです。殺人事件を見て腹を立てる類ですね。この現代における二つの怒りは厄介です。なにせ情報量が多い世の中ですから、怒りのタネがあちこちある。しかも、その怒りのタネは、直接危害損害を加えてこない。絵に描いた餅なのです。現代の怒りは在りもしないものに対する奇妙な怒りが殆どです。知らなければ、怒る必要もない。知ったがために、関係ないのに腹が立つ。」
 「・・・何のことだ?・・・」
 「碇のやつの前置きです。このメールを読んでおかないと、碇の様子が全く理解できない。いや、理解は初めから出来ませんが、理解しようという気にはなる。いや、もっと混乱することになるのかもしれませんが、何かのきっかけになる。碇の調査室に行ってみましょう。」
 警察署の端、物置を改造された部屋。防弾マジックミラーで扉から中の様子を見ることができる。扉の前に立つと、いきなりノートパソコンが投げつけられる。激しい衝撃音に山上刑事は一瞬身を竦めた。ボスは物怖じすることなく、じっと中を覗く。遮音が効いており、碇の声がくぐもって聞こえる。
 「ふざけんな馬鹿野郎!くそくそくそくそ!殺す殺す殺す殺す!くたばれ!うわああああ!。」
 文章や目的のない罵詈雑言と叫び、椅子を床に叩きつけ、机を振り回し壁に叩きつける。全身で怒っているようだが、山上とボスには碇が狂っているようにしか見えなかった。
 「碇もこうやって暴れないと、綺麗なお嬢さんなんだけどな。」
 「・・・抱きたい・・」
 「ボス、それはセクハラになりますよ。でも、いい女ですね。おっ、スカートが捲れているぞ。もうすこしでパンティーが見える。ワクワクしますね。」
 「・・・中身が見たい・・」
 「・・ところで、ボス、碇は、なんであんなに怒っているんですかね?」
 「・・・さあな・・」
  髪を振り乱して怒り狂う碇が扉の方をじっと見て、何かを感づいたのか、鬼の形相で突っ走ってきた。ボスと山上は身を寄せて怯んだが、碇は扉にぶち当たり大きな音を立てて倒れた。大の字に気を失った碇の下着は丸見えだった。
 「やった、見えましたよ。」
 「・・・白か・・」
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