第39話よし、閃いたぞ

文字数 1,611文字

そして息を切らせながら高松塚壁画館の駐輪場に到着した。
再度入館料金を払い、足早に四神の説明がしてある解説図の前へと向かってみた。
すると閉館時刻が近づいている事もあり、先ほどの賑わいが嘘だったかのような閑散とした状態になっていた。
そのお陰で俺はガラスに額を擦りつけるぐらいの近さで、ユックリとその解説図を見ることが出来たのである。
そこには北方の玄武、東方の青龍、それと西方の白虎の絵が復元模写されていた。
しかし残念ながら南方の朱雀だけは鎌倉時代に盗掘事件に遭った時、その犯人が南側の壁を破壊して侵入してきた為に、その壁画だけが残されていないという説明がされていた。
しかし俺は、その南方の守護神である朱雀の姿が気になり、近くにいたガイドさんに、それがどのような姿であったのかを尋ねてみた。
すると同一の人物が描いたのではないのかと言われている壁画が、ここの近くにあるキトラ古墳壁画体験館でも見ることが出来るのだという説明を受けた。
俺は閉館時刻が迫ってきている事もありスマホを取り出して、そのキトラ古墳のホームページに載っている壁画の写真を見てみることにした。
そして天文図から始まり、十二支、四神へと移動させていった。
するとガイドさんに教わった通りに、そのどれもが、ここに描かれている高松塚古墳の壁画によく似ていた。
そして四神のうちの南方の守護神である、朱雀の写真を見たときである。
俺の頭の中でビビビッと来るものを感じたのであった。
「この絵はどこかで見たことがあるぞ。
あ、そうだ。
一万円札の裏側に描いてある図柄にソックリだ。
という事は、やはり朱雀イコール鳳凰だったんだ」
そこで俺は朱雀についてスマホで調べてみる事にした。
すると驚いたことが判明した。
朱雀、鳳凰、不死鳥、フェニックス、これら全てが同意語だったのだ。
洋の東西を問わずして、それらすべてが架空の話から出てきて、伝説上の鳥へとなっていったのだという。
「それにしても皆んな良く似ているなあ。
大きなトサカ、長い首、大きな羽、それに何と言ってもそれら全てに共通しているのが、その妖艶さだ。
見た目が艶やかであり、どこかオスのことを惑わすような妖しい美しさを持ち合わせている。
あれ、ちょっと待てよ。
そう言えば現代にも存在している、孔雀にも似ているような気がして来たぞ」
そこで俺は朱雀という言葉について、もう一度調べてみた。
すると朱雀の読み方として一般的には、すざくと読むのだが、場合によっては、すじゃく、又はしゅじゃくとも読むと書かれていた。
そこで俺は思った。
「ハハーッ、これは面白くなって来たぞ。
すじゃくと孔雀とでは読み方も似ているし、もしかすると朱色の孔雀の事をしゅじゃくと呼んだりして?
朱色の孔雀、それを略すと朱雀になる」
その時、俺の右脳が閃いた。
「そうだ、太古の昔からこの地球上に存在していた孔雀が、それら全てのモデルになった可能性もある訳だ。
それに元々不思議に思っていた事なのだが、孔雀が羽を広げた時の色の艶やかさ、それと何と言ってもその飾り羽の中にある目玉マークの模様、あれは一体、何の為に有るのだろうか?
益々興味が湧いてきたぞ。
そして仮にその孔雀が、伝説上の鳥だと言われている朱雀や鳳凰たちと関係が有るのだとすると、孔雀の羽から不思議なマリモと共通するDNAが取り出せるのかも知れないな。
そしてその結果によっては現存している孔雀が、朱雀や鳳凰の子孫だという事にもなってくる。
するとそれこそ今までの常識がすべて覆されてしまい、朱雀、鳳凰、不死鳥、フェニックスは過去実際に存在していた事になる」
そう考えると、俺は居ても立ってもいられなくなってきた。
しかし今からでは、もうどうしようも無かった。
そこで今晩は予定通りに大阪の宿に泊まり、明日の早朝の新幹線で東京へと向かうことにした。
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